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2018/7/30 18:00

実に「絵」になる鉄道路線!! フォトジェニックな信州ローカル線の旅【長野電鉄長野線】

おもしろローカル線の旅~~長野電鉄長野線(長野県)~~

 

信州の山々を背景に走る赤い電車は長野電鉄長野線の特急「ゆけむり」。最前部と最後部に展望席があり、列車に乗りながらにして迫力ある展望風景が楽しめる。

長野電鉄長野線は長野駅と湯田中駅間を結ぶ33.2kmの路線。起点となる長野駅はJR駅に隣接した地下にホームがあり、また長野市街は路線が地下を走っていることもあって、ローカル線というより都市路線だろう、という声も聞こえそうだ。

 

しかし、千曲川を越えた須坂市、小布施(おぶせ)町、中野市を走る姿は魅力あるローカル線そのもの。山々をバックに見ながら走る姿が実に絵になる。ここまで“写真映え”する鉄道路線も少ないのではないだろうか。今回は、絵になる長野電鉄の旅を、写真を中心にお届けしよう。

 

【写真映えポイント1】

赤い特急と山や草花、木の駅舎の組み合わせが絶妙!

なぜ、長野電鉄長野線は写真映えするのだろう。まず車体色が、赤が基本となっていることが大きいように思う。色鮮やかで写りがいい。

 

特急は、1000系「ゆけむり」(元小田急ロマンスカー10000形HiSE)と、2100系「スノーモンキー」(元JR東日本253系「成田エクスプレス」)の2タイプが走る。それぞれ赤ベースの車体が鮮やかで、青空、周囲の山々、花が咲く里の景色、そして木の駅舎と絶妙な対比を見せる。

 

普通電車の8500系(元東急8500系)や3500系(元営団地下鉄3000系)も、車体に赤い帯が入り華やかで、こちらも信州の風景と良く似合う。

↑特急「ゆけむり」が信濃竹原駅を通過する。1000系は、元小田急電鉄のロマンスカー10000形。赤い特急電車と古い駅舎とのコントラストが何とも長野電鉄らしい

 

↑桜沢駅付近を走る特急「ゆけむり」。4月末、ようやく信州に遅い春がやってくる。沿線は桜などの草花が一斉に花ひらき見事だ。車窓から望む北信五岳にはまだ雪が残る

 

【写真映えポイント2】

プラス100円で乗車可能な「ゆけむり」展望席がGOOD!

車内から撮った風景も写真映えしてしまう。

 

特に特急「ゆけむり」の前後の展望席から見た風景が素晴らしい。展望席は、広々した窓から迫力の展望が楽しめる特等席で、志賀高原や高社山など沿線の変わりゆく美景が存分に楽しめる。

↑夜間瀬駅〜上条駅付近からは志賀高原を列車の前面に望むことができる。ぜひ特急「ゆけむり」の展望席から山景色を楽しみたい

 

↑長野線の夜間瀬川橋梁から望む高社山(こうしゃさん)標高1351.5m。整った姿から高井富士とも呼ばれ、信州百名山にも上げられている

 

特急「ゆけむり」は、元は小田急ロマンスカー10000形として生まれた車両で、小田急当時のニックネームはHiSE。車内に段差があり、バリアフリー化が困難なため、登場からちょうど25年という2012年に小田急電鉄から姿を消した。この2編成が長野電鉄へやってきて大人気となっているのだ。

 

筆者が乗車した週末には、小布施人気のせいか、長野駅〜小布施駅間は混んでいた。その先の小布施駅→湯田中駅はそこそこの空き具合となった。湯田中駅発の上り「ゆけむり」にも乗車したが、湯田中→小布施間で、運良く後部展望席を独り占めという幸運に出会えた。

 

この美景が乗車券+特急券100円(乗車区間に関わらず)で楽しめるのが何よりもうれしい。指定席ではなく自由席なので、席が開いてればどこに座っても良い。

 

週末には「ゆけむり〜のんびり号〜」という、ビューポイントでスピードを落として走るなど、まさに写真撮影にぴったりの特急も走るので、ぜひチャレンジしていただきたい(列車情報は記事末尾を参照)。

 

【写真映えポイント3】

長野電鉄のレトロな駅舎が、また絵になる!

駅で撮った写真も絵になる。

 

長野電鉄の路線の開業は大正の終わりから昭和の初期にかけて。開業したころに建てられた木造駅舎が信濃竹原駅、村山駅、桐原駅、朝陽駅と、複数の駅に残っている。トタン屋根、ストーブの煙突、木の腰板。木の格子入りガラス窓といった、古い駅の姿を留めている。

↑須坂駅の跨線橋で写した1枚。長野電鉄の多くの駅ではいまも昭和の駅の懐かしい情景がそこかしこに残されている

 

↑先にも紹介した信濃竹原駅の駅舎。開業は1927(昭和2)年のこと。90年も前の昭和初期の駅舎がほぼ手付かずの状態というのがうれしい

 

↑こちらは村山駅。駅の開業は1926(大正15)年のこと。沿線ではほかに、桐原駅、朝陽駅に古い木造の駅舎が残っている

 

長い時間、そこに立ち続けてきた駅舎。日々、人々を見送り迎えてきたそんな多くのストーリーが透けて見えてきそうだ。この4駅ほど古くはないものの、ほかの駅で目に触れる風景もレトロ感たっぷりで、何気なく撮った風景が実に絵になるのだ。

 

【写真映えポイント4】

さりげなく置かれる古い車両や機器にも注目

停車中の保存車両や、古い機器も絵になる。

 

例えば、須坂駅には赤い帯を取った3500系06編成2両が停められている。同車両は元営団地下鉄日比谷線の3000系で、当時、珍しかったセミステンレス車体を採用、車体横はコルゲートと呼ばれる波形の板が使われている。

↑須坂駅構内の3500系。この車両はすでに引退した車両で、長野電鉄の赤い帯やNAGADENという表示も取られ、営団地下鉄当時のオリジナルの姿に戻されている

 

1961(昭和36)年に登場し、高度成長期に都心を走る日比谷線の輸送を支え、1994(平成6)年に、日比谷線の最終運転を終えている。同車両は、長野電鉄のみに計39両が譲渡され、現在も現役車両として活躍している。ちなみに2両は2007年に東京メトロに里帰りした。

 

日比谷線を走っていた往時の姿を知る人にとっては、この須坂駅にたたずむ古い車両に、胸がキュンとなってしまう人も多いのではないだろうか。

 

また、須坂駅のホームには、いまでは使われていない古い転轍器(てんてつき)が多く置かれ、保存されている。

↑ポイント変更用の転轍器(てんてつき)なども須坂駅のホームで保存されている。右側に発条転轍器が並ぶ。このような古い装置が特に説明もなく保存されていておもしろい

 

これらの保存車両や転轍器は、特に案内があるわけでなく、また乗客に見せるために保存展示されているわけではない。さりげなく置かれているといった様子である。そこに案内表示はなくとも、長野電鉄を守ってきたという誇りが伝わってくるようでほほ笑ましい。

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