リトレッドタイヤはいかにしてできる? 生産工程をチェック【動画アリ】
工場を訪れてまず目にするのが山となった使用済みタイヤです。そのタイヤはまずしっかりと洗浄され、そのうえで超音波ウルトラソニックを使うシアログラフィ検査機にかけて部材の剥離がないかをチェック。さらにこの検査機によって通ったものをベテランの検査員が目と触診でもう一度チェックします。以前はこの目視だけだったとのことですが、シアログラフィの導入により「検索漏れは大幅に減った」(日本ミシュラン)と言います。
意外だったのは工程のなかで想像以上に人の手が介在していたことでした。工場のなかには工程ごとに必ずと言っていいほど担当者が割り振られ、相当な暑さ(この日は外気温が32度にもなっていた)のなか、黙々と作業が進められていたのです。ここまで人の手を経ていた理由について日本ミシュランは、「コストはかかるものの、日本ミシュランタイヤでは多品種少量生産を基本としており、その目的を達成するには人手を介在するほうが効率が良い」とのことでした。
検査工程を終えるとタイヤは次に「バフがけ」の工程に入ります。ここでタイヤはトレッド面をサイズ/パターンに応じて設定値まで削り、続いて損傷部分を整えるスカイプ工程へと移されます。貫通した傷があった場合は、それを埋めたり、パッチを貼って修理も実施。そして、削ったゴム面が酸化しないように加硫用セメントを塗られると、トレッドを貼り付けるケーシングの下準備が整うわけです。
ここからはいよいよトレッド面の貼り付けとなります。このトレッド面はあらかじめパターンが付いており、溶剤を塗布したうえでこれをケーシングに巻き付けていきます。ここで求められるのは継ぎ目をブロック形状に合わせる高度な技術。作業ではトレッド面とケーシングと一体化するためのテーピングも同時に行われていましたが、作業を終えたタイヤを見ると合わせ目が寸分の狂いもなく貼り付けられ、ホチキスでしっかりと固定されていたのです。これには驚きました。
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そして、タイヤに熱を加えてケーシングと一体化させる最終工程へと移ります。ここで成形作業を終えたタイヤはエンベロープと呼ばれるゴム袋で包まれ、包んだあとは不要な空気を抜いていよいよ加硫機のなかに入れられて熱が加えられます。数時間後、加硫を終えたタイヤはエンベロープが外され、もう一度機械を用いて実際の走行状態と同レベルの圧力をかけて耐久性をチェック。目視でも検索を終えたタイヤは温かいうちに専用塗料を塗られてリトレッドタイヤは完成となるわけです。
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ところでこの方法は「コールド(プレキュア)方式」と呼ばれるもので、“多品種少量生産”に向いているとされます。たとえば多くのパターンに対応するのに有利とされます。一方、ケーシングにパターンがついていないトレッド面を貼り付けて金型に入れてパターンを付けるのが「ホット(リ・モールド)方式」です。生産効率が高いのはこちらの方式ですが、あくまで同一のパターンであることが前提となります。日本ミシュランタイヤによれば、海外では一部で「ホット(リ・モールド)方式」で生産している工場もあるが、大半は日本と同じ方式で対応しているとのことでした。
なお、日本ミシュランタイヤは、今年10月よりトラック・バス向けワイドシングルタイヤ「MICHELIN X One(ミシュラン エックスワン)」のリトレッドタイヤ2種を発売すると発表しました。1つはあらゆる天候の路面で優れたグリップを発揮する「MICHELIN X One XDN 2 リトレッド」で、もう1つはトレーラー用「MICHELIN X One MULTI ENERGY T リトレッド」。
もともと「MICHELIN X One」は、トラックの後輪に装着されている2本(ダブルタイヤ)を1本にするというコンセプトで開発されたタイヤで、1車軸当たり約100kgの軽量化を達成することができ、車両の輸送効率向上と環境負荷低減の貢献に寄与するとのことでした。日本ミシュランでは「X One」のリトレッド化を実現することで、ユーザーの選択肢を広げていく考えです。