日本が2017年に輸出した自動車数はトラックやバスを含めて470万6000台。国内生産は969万台だったので、その約半分が海外へ輸出されていることになる。その輸出で活躍するのが以前の記事でも紹介した「自動車専用貨物船」だ。本記事では、スバルが報道関係者向けに開催した「船積み見学会」で公開された積み込みの様子を動画におさえてみた。ぴったりと指定位置に合わせる職人技をご覧いただきたい。
わずか30cm――チームワーク抜群の「ギャング」が見せた“神業”
「バイオレット・エース」は総トン数4万9708t、長さ189m、幅32m、高さ45m(水面から上は37m)で、11層に分けたデッキに約5000台を積載できるという。そこへ埠頭に並んだ新型フォレスターが次々と吸い込まれていく。
この積載に携わっている人たちはどんな方たちなのだろう。
作業はおよそ20名ほどでワンチームを組み、そこには監督者を中心にドライバーや固縛員、シグナルマンなどで構成される。このチームは通称「ギャング」と呼ばれ、積み込む車両とともに専用バンで船内へ運ばれてくる。
車両の誘導は、ホイッスルと手に持ったランプを使って行い、ミラーを畳んだ状態で、しかも全くの切り替えなしで並べて行く。駐車後は船が波で揺れた際にクルマ同士が接触しないよう、船体のフロアに設けられた穴にタイラップのようなものを通して車体をしっかりと固定することで一連の作業は終わる。
驚くのはその車両と車両の間隔だ。見ているそばからフォレスターが現れては指定位置へドライバーの手によってピタリと収められていく。その間隔は前後のバンパーとバンパーで30cm、折り畳んだミラーとミラーで10cmしかない。誘導員がいるとはいうものの、これを“神業”と言わずして何と呼べばいいのだろう。
この作業の様子を動画でもご覧いただこう。一見派手さはないが、これを何台も何台も素早く、かつ狂いなく作業していく様はまさに職人技だ。
ここで1つ、「日本人らしいなぁ」と感じたエピソードを聞いた。
それはクルマがすべて出口に向けて並べられていたことだ。積み込むことの効率を優先すればクルマを頭から突っ込んで配置してもいいわけだが、そこは到着地の人たちが下ろしやすいよう、わざわざバックで積み込んでいるというのだ。
現地で少しでも和らいだ気持ちのなかで荷物を下ろしてもらいたい。そんな配慮が日本からの輸出車には行き届いているというわけだ。