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クルマ
2018/10/2 17:00

クルマはどうやって海を渡るのか? 「自動車専用貨物船」のひみつ

日本が2017年に輸出した自動車数はトラックやバスを含めて470万6000台。国内生産は969万台だったので、その約半分が海外へ輸出されていることになる。その輸出で活躍するのが自動車専用貨物船だ。

↑船積みを待つ新型フォレスター。写真は自動車専用貨物船「バイオレット・エース」がタグボートに曳航されて川崎港に入ったときのもの

 

スバルは9月14日、車両を専用貨物船に積み込む「船積み見学会」を報道関係者向けに開催。スバル車はどうやって海を渡るのか? 今回は北米市場に向けて出航する専用貨物船の秘密に迫った。

 

スバル車の約8割が海外での売上――それを支える自動車専用貨物船

スバルが2018年3月期(2017年4月-2018年3月)に販売した台数はグローバルで106万7000台。その8割にあたる90万3000台が海外での売上になるという。まさに海外での売上こそがスバルを支えていると言っても過言ではない。

 

そのなかには現地生産するぶんも含まれているが、日本で生産したぶんはこの専用貨物船のお世話にならなければならない。それだけに船積みは極めて重要な役割を果たしていることになる。

 

今回、船積み作業を見学できたのは神奈川県川崎市にある東扇島物流センター。埠頭には北米での販売が開始されたばかりの新型フォレスターがズラリと並んでいた。スバル車の積み出し港は関東地域に5か所存在しており、この港から出航する船は北米へと向かうことになっている。

 

貨物船を運航する商船三井によれば、この物流センターを設立したのは1983年のことで、以来、景気や政治情勢の浮き沈みの影響を受けながらも、ここから輸出されたスバル車がアメリカ人のハートを虜にしてきたわけだ。

 

この日、埠頭に接岸していた貨物船は、バハマ船籍の「バイオレット・エース」。2011年3月に竣工した自動車専用船で、その船を商船三井がチャーターして運行している。船は総トン数4万9708tで、長さ189m、幅32m、高さ45m(水面から上は37m)となり、11層に分けたデッキに約5000台を積載できるという。

↑約2週間の航海を経て北米までスバル車を送り届けることになっていたバハマ船籍の自動車専用貨物船「バイオレット・エース」

 

航路は13日間を掛けて北米へ移動し、まず米国ワシントン州のバンクーバーに入港。その後はリッチモンド港に入る予定で、気象状況などを考慮して船長が最適なルートを選んで航行するという。

↑決められたルートを自動で航行するが、細かな動きに対しては人が対応する

 

ホイッスルとライトを巧みに操りながらクルマを指定位置へ

↑「バイオレット・エース」に吸い込まれるように入っていく新型フォレスター

 

さて、スバル車はどのように船内に積まれていくのだろう。そんなことを思っているうちに、目の前を新型フォレスターが次々とスロープを渡って船へと吸い込まれていく。果たして船内はどうなっているのだろうか。

 

クルマが入ってこないことを確認して内部へと入っていくと、そこではライトを振りながら「ピー・・・ピッ」とホイッスルが鳴り響くなか、出口へと向いた大量のフォレスターが整然と並べられていた。

↑20人1組のチーム「ギャング」が、ホイッスルとライトを巧みに操りながらクルマを指定位置へと誘導する

 

クルマは切り返しすることもなく1回で指定位置へ並べられていくのだが、驚くのはその車両と車両の間隔だ。前後のバンパーとバンパーで30cm、折り畳んだミラーとミラーで10cmしかない。誘導員がいるとはいうものの、驚くべき技術だ。

↑ミラーを折り畳んだ状態でその間隔は10cmほど

 

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