【新特急が走り出す3】「新しさとは格好良さじゃない!」
001系「Laview」の基本デザインを監修したのは建築家の妹島和世(せじまかずよ)氏。多くの建築デザインを担当し、内外の賞を数々授賞してきた。
ほかテキスタイルデザイナー・コーディネーターとして安東陽子氏、照明家・豊久将三氏、建築家・梁瀬純孝氏ら錚々たるメンバーが加わり、4年の歳月をかけて新型特急は形づくられていった。デザインコンセプトは次のようなものとなった。
「都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む特急
みんながくつろげるリビングのような特急
新しい価値を創造し、ただの移動手段ではなく、目的地となる特急」
さらに「NEXT SEIBU」と題された広告用ポスターが制作された。そこには新型特急が走り出すことを告知すると共に、目を見張る表現も記されている。
「今までになかった、まったく新しい特急列車をつくろう。
その新しさとは、格好良さじゃない。
自然豊かな沿線にふさわしい、美しさをつくろう。…(中略)…
次の100年も、みんなに愛される鉄道会社であるために。」
001系「Laview」は、「その新しさとは、格好良さじゃない」と広告ポスターの言葉で言い切っている。これまでの鉄道車両のデザインに一石を投じるような、ある意味“過激”な表現である。
新型特急のデザインを監修した妹島氏も、
「格好良さ、見た目の良さというよりも、都市や自然のなかで“やわらかく”風景に溶け込むようなデザインを意識しました」と語る。
時代とともに鉄道デザインは「格好良さ」から「やわらかさ」へ静かに動いているのかも知れない。
【新特急が走り出す4】体を包み込むようなリクライニングシート
新型車両発表会見では001系「Laview」に使われるリクライニングシートも公開された。「あたたかみのある黄色」と表現されたシート。基本は黄色だが、グレーなどの色も織り込まれている。
会見では女優の土屋太鳳さんが、実際に座ってみて、「元気が出そうなビタミンカラーですね」と表現していた。
車両の座席カラーといえば、これまでの車両はほとんどが青や紺色、濃緑、えんじといった濃い無難なカラーが選ばれることが多かった。001系のシートは黄色ベースの華やかなカラーとなっている。華やかであるものの、目が疲れる派手な色合いではなく、落ち着きとともに明るく感じられる。膝までホールドされて座り心地も良さそうだ。枕は手動式ながら上下できる。
さらに客室窓はこれまでにない大きな窓が使われている。きっと001系のシートからは、西武沿線の美しい武蔵野や秩父路の景色がたっぷりと楽しめることだろう。それこそ「Laview」という愛称そのものが具現化されるかのように。
「その新しさとは、格好良さじゃない」と表現された新型特急001系「Laview」。
私たちは、これまで鉄道車両を見る時に「格好良さ」を大きな価値としてきたように思う。筆者もその1人であった。しかし本来は、見た目よりも、中まで含め、また乗車して、全体を見て感じるべきなのであろう。
2019年3月以降に沿線で、また乗車して、新しい特急車両001系に接することになるだろう。最初は、その姿を奇異に感じるかも知れない。まるで2008年に初めて見た30000系「スマイルトレイン」がデビューした時のように。
しかし、見慣れるにしたがって、新緑や紅葉をうっすらと写し込むシルバーの車体を見て、「美しいな」、そしてそれこそ「恰好良いな」となるのだと思う。
新型車両のデザインの移り変わり。鉄道車両のデザインの奥深さを見る思いがした。