【和田岬線の魅力2】つい興味が湧いてしまう車両工場の様子
筆者は神戸を訪れるたびに和田岬線に立ち寄っている。路線を巡る場合に、片道は103系に乗車して懐かしの通勤電車の雰囲気を楽しむ。帰りは路線沿いを歩くという巡り方が多い。ここでは兵庫駅を起点に沿線の様子を見ていくことにしよう。
まずは兵庫駅の南口を出て和田岬線が伸びる南西方面へ歩いていく。駅前は「キャナルタウン」として再開発されている。ここにはかつて国鉄兵庫貨物駅があり、操車場として使われていた。5.5haにもわたる広大な敷地内には兵庫をイメージした運河(キャナル)が流れ、おしゃれな雰囲気に生まれ変わっている。
JR山陽本線とほぼ平行に走るのが国道2号。上空を阪神高速3号神戸線が通る。この幹線道路を渡った南側からは、ほぼ和田岬線の線路沿いに歩くことができる。
さて国道2号の高架橋を越えてすぐ南側。現在、和田岬線からの唯一の引込線となった線路が工場内に延びている。塀に囲まれた中に川崎重工業兵庫工場がある。
川崎重工業兵庫工場は、川崎造船所の鉄道車両工場として創設された。以来1世紀以上にわたり、鉄道車両を造り続けてきた。古くは満州鉄道向けのパシナ形蒸気機関車、小田急電鉄の初代ロマンスカー、国鉄の特急こだま、0系新幹線と名車両を数多く製造。現在でもJR東日本などの新幹線車両、クルーズトレインTRAIN SUITE四季島などを生み出してきた。
訪れた時は、ちょうどJR西日本の大阪環状線用323系が出庫直前らしく入口近くに停められていた。この塀の中に、どのような車両が停められているか、いつ通っても気になるところだ。
現在、この川崎重工業の鉄道部門が経営危機に陥っているとされる。2018年の10月に発表された2018年度の中間決算では、売上高の1割を占める鉄道車両事業が本業の足を引っ張っているとされ、88億円の営業損失を出したと報道された。米国向け地下鉄車両の不備および、東海道新幹線の台車の亀裂事故など、川崎重工業の鉄道事業の先行きを危ぶむ事象も多い。
鉄道事業からの撤退も視野に入れているという同社。この和田岬線からの引込線が今後どうなっていくのかも気になるところだ。
【和田岬線の魅力3】兵庫運河を渡る風変わりな形の橋は?
川崎重工業兵庫工場の前から、さらに和田岬線を先に進む。
和田岬駅までの途中で注目したいのは兵庫運河に架かる橋だ。中央部の橋脚が丸くなっている。鉄橋の形自体もY字形をしておもしろい。和田旋回橋と呼ばれるこの橋。その名のとおり、以前は中央の橋脚を支点にして、回すことができた。回して船を通したわけだ。
竣工したのは1899(明治32)年のことで、わが国で造られた最初の旋回橋であり、かつ最初の鉄道可動橋だった。今は動かないものの、非常に貴重な産業遺産でもあるのだ。