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2019/1/26 18:00

和歌山の日本最短のローカル私鉄「紀州鉄道」―― つい応援したくなる弱小路線の旅

 

【紀州鉄道の歩み2】御坊市の人口は30年あまりで23%減に

ここで紀州鉄道が走る御坊市という町の概要を見ておこう。

 

人口は2018年12月現在で2万3596人。第一次産業が主要産業で、野菜づくりや、花づくりが盛んだ。スイートピーやカスミソウは日本一の出荷量を誇る。また市内に7つの漁港があって、アジやサバ、サワラ、そして伊勢エビなどが水揚げされている。

 

第二次産業の分野では、かつては木材の集散地として発展した。現在は旭化成ケミカルズの和歌山工場。また大洋化学という会社では麻雀牌を作っていて、麻雀牌は日本一、また全自動卓の国内シェアは100%とされる。

 

ちなみに紀州鉄道の西御坊駅は、西側がすぐ美浜町(みはまちょう)の町内となる。こちらには大和紡績グループの一員でもあるダイワボウマテリアルズの和歌山工場がある。かつては西御坊駅から、同工場まで引込線も敷かれ、貨物輸送が行われていた。

 

↑JR御坊駅へ到着する特急「くろしお」。御坊駅は紀勢本線を走る特急列車のすべてが停車する。和歌山駅からは最短41分。大阪の天王寺駅からは1時間30分強かかる。写真の283系「くろしお」は大阪側の先頭車に貫通車両が付く場合が多い

 

御坊駅へは和歌山駅からは特急列車で40分ほど。それほど遠くはない。

 

とはいえ地方が直面する人口減少にあえいでいる。1985(昭和60)年には3万450人を記録した市の人口が、2018年の12月には2万3596人まで減少した。30年あまりで23%まで減ったわけだ。

 

↑JR御坊駅は、1929(昭和4)年開業当初は旧湯川村に駅が出来た。その後に合併、現在は、御坊市内にあるが、だいぶ北に位置する。市の中心部にあたる本町商店街や国道42号沿いには紀州鉄道の紀伊御坊駅や市役所前駅が近い

 

和歌山県全体を見ても、その傾向は同様で、和歌山市を除き、各市町村ともに人口減少が著しい。こうした影響は顕著で、複数の鉄道路線が廃線を余儀なくされている。

 

野上電気鉄道(1994年4月1日廃止)、有田鉄道(2002年12月31日廃止)といった路線が廃止されている。2006(平成18)年4月には南海貴志川線の存続が困難となり、経営が和歌山電鐵に引き継がれた。いずれも地方の鉄道路線が直面する利用者の減少に悩まされた末の結果だった。

 

紀州鉄道も近年の鉄道統計年表を確認すると、連続して赤字経営を続けている。前述したように長期にわたる運転休止があった。訪れた時には、車内に工事の案内があった。

 

線路補修工事のため10月21日から31日かけて9時〜17時の間、紀伊御坊駅〜西御坊駅間の運行をとりやめます、とのこと。運休中の代換え運転が行いません、と告知されていた。

 

都市部の鉄道会社だったら、クレームで大変なことになりそうだ。このようなのんびりした運転形態でも、紀州鉄道には、不思議に廃線の話は持ち上がってこない。それはなぜなのだろう。

 

【紀州鉄道の歩み3】全国にホテルや不動産業を展開する紀州鉄道

紀州鉄道という鉄道会社名を聞いて、すでにお気付きの方も多いかと思うが、この会社が鉄道路線を維持させてきたことが大きい。

 

御坊臨港鉄道が紀州鉄道と名を変えたのは1973(昭和48)年のこと。御坊臨港鉄道から現在の紀州鉄道へ事業が譲渡されたことに始まる。以降、同社は「紀州鉄道」のブランド名で、全国にホテル事業、スポーツ・保養施設の運営、会員制リゾートクラブの運営・管理、さらに不動産事業を展開させてきた。

 

鉄道事業というのは、世の中から信用を得るためにも、またデベロッパー会社としても有利なのだろう。「○○鉄道」というブランド名を覚えてもらいやすい、などの利点が多々ある。本来ならば鉄道事業で黒字をあげて、さらに別事業でも利益を得るというのが理想的なのだろうが……。

 

↑気動車の乗降口に掲げられた「サボ」。紀州鉄道の社章が入る。紀州鉄道は全国で多彩な施設を運営する企業。鉄道はその一部門だ。乗客数は少なめながらも鉄道グッズの販売や、さまざまなイベントなどを精力的に行っている

 

こうして“日本最短のローカル私鉄”が長年にわたり生き延びることに結びついた。鉄道の名を欲した企業の思惑があったにせよ、結果として鉄道路線の存続に結びついたことは同鉄道にとって幸いだったと言えるだろう。

 

次に車両の変遷を見ていこう。近年まで使われた車両は、それこそ国内で異色の存在だった。

 

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