平成最後の春のダイヤ改正 〜〜JRと大手私鉄各社など〜〜
この春、JRや多くの鉄道各社がダイヤ改正を予定している。
看板列車の時間短縮や、新特急の運転開始、新車両の導入、新路線の開業と話題はつきない。東日本大震災で不通となっていた区間の復旧に合わせ、三陸鉄道のダイヤ改正も予定されている。
後編では西日本各社および、三陸鉄道が予定している改正点で、特に注目したいポイントをピックアップした。さらに鉄道会社の狙いはどこにあるのかを含めて検証してみた。
【注目はここ!⑨】東京駅〜新大阪駅間はますますに近く便利に
JR東海といえば、注目が集まるのがやはり東海道新幹線。年々、確実に便利となりつつある。現在、東京駅〜新大阪駅間は最短2時間22分となっている。とはいうものの、この最短時間で走る列車は少ない。
到達時間は多くの「のぞみ」で2時間30分かかるのが現状だった。ダイヤ改正後は、70本の「のぞみ」が3分間短縮され、東京駅〜新大阪駅間を2時間27分で走るようになる。東京駅〜博多駅間は4時間57分で走る列車が多くなる。
主力車両のN700系が増備されていく一方で、確実に減っているのが700系だ。2017年1月、700系として最後となる全般検査を受けた編成が浜松工場を出庫しており、こちらの車両が2020年の1月以降は検査切れとなる。
カモノハシの名で親しまれた平べったい顔つきの700系は現在、「こだま」としての運用が多くなっている。2019年度が最後の年となり、来春のダイヤ改正時には東海道新幹線を走る車両はすべてがN700系やN700Aとなる。
なお、700系を元に造られた923形ドクターイエローだが、大変な人気車両ということで、しばらく使われることになりそう。今後、ダイヤが過密となった東海道新幹線で、どのような運用により検測作業が行われるか、注目される。
【注目はここ!⑩】おおさか東線全通で奈良へのアクセスが便利に
西日本を大きくカバーするJR西日本の路線。この春のダイヤ改正では近畿圏の動きに注目が集まっている。
なかでも新線として誕生する「おおさか東線」の動きが大きい。おおさか東線は2008年に放出駅(はなてんえき)〜久宝寺駅(きゅうほうじえき)9.2km区間が先行して開業した。その後、放出駅と新大阪駅を結ぶ“新線”の11.1km間が整備され、3月16日から運転が開始される。
おおさか東線の全通により直通快速も運転される。新大阪駅〜奈良駅間を所要約55分で走る予定で、大阪市の東地区が便利になるとともに、新大阪から奈良方面へのアクセスも改善されることになりそうだ。
【注目はここ!⑪】JR西日本で初の有料座席サービスが始まる
東海道本線、山陽本線を通して走る看板列車「新快速」。平行して走る私鉄各社に負けないスピードと快適性を売りにしてきた。
そんな新快速に新たに導入されるのが有料座席サービスの「Aシート」。ダイヤ改正とともに、網干駅・姫路駅〜野洲駅(やすえき)間に毎日上下4本、「Aシート」が連結された新快速列車が運転される。
「Aシート」用の車両は、座席がリクライニング機能・テーブル付きで、全席にコンセントが設置される。着席定員は46名で、乗務員から乗車整理券500円を購入して着席するシステムだ。JR西日本としては在来線の普通列車初の試みとなる。
近畿圏の利用者は関東に比べて一般的にシビアだとされる。とはいえ平行して走る京阪電気鉄道の特急にも2017年8月から有料の「プレミアムカー」の連結が始まっている。京阪電気鉄道では、この車両の増備、増結を進めている。
「Aシート」が今後、どのような反応が示されるか注目されるところ。JR東日本を走るグリーン車といえば2階建て。つい眺望を楽しみたいために利用してしまう筆者としては、「500円ならば乗っていいかな」と思ってしまうのだが、いかがだろうか。
◇姫路駅〜大阪駅間を朝晩走る特急も新設される
「Aシート」付きの新快速が走る大阪駅〜姫路駅間では、通勤時間帯に新特急「らくラクはりま」も走り始める。朝は姫路駅6時21分発、大阪駅7時21分着、晩は大阪駅発19時4分、姫路20時8分着という運転になる。
すでに米原駅〜大阪駅間では特急「びわこエクスプレス」が走っているが、そうした通勤客を念頭に置いた新特急の誕生である。近畿圏は、JR西日本と私鉄各線の競争が活発だ。今後、各社ともにこうした快適さを売りにする列車が増えていくかも知れない。
【注目はここ!⑫】ライバルだったバス会社と連携を図るJR四国
JR四国では徳島県内を走る牟岐線(むぎせん)でライバルだったバス会社と連携を図り、利用者の利便性を高める動きが見られ注目される。
牟岐線ではまず徳島駅〜阿南駅(あなんえき)間の列車を8便増やして利用しやすくなる。さらに日中に走る列車は、例えば徳島駅発が0分と30分というようにように時刻をパターン化、覚えやすくなる。
とはいえ、利用者の減少が著しい阿南駅から先の状況は厳しい。徳島駅〜牟岐駅(むぎえき)間を走る特急「むろと」は3往復から1往復に減便される。阿南駅〜海部駅(かいふえき)間を走る普通列車は7本の減便、また運転区間が短縮される。
そこで牟岐線の阿南駅〜海部駅間では列車と、平行して走る徳島バスとの乗継ぎを密にしようというのだ。不便になる区間の運行を補完してもらうべく今回、徳島バスの協力をあおいだ。牟岐線の阿南駅、牟岐駅などで、列車から高速バスへ乗継ぎしやすい時刻に設定されている。
今回の鉄道とバス路線の連携。四国経済連合会の呼びかけで開かれた「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇親会Ⅱ」の提言に合わせて導入された一つの方策でもある。鉄道やバスといった地方の公共交通機関が人口の減少で窮地に陥りつつある。そうした状況のなかで、高速バスを途中で乗換えてまで鉄道を利用するかどうか、ちょっと疑問にも感じる。
さらに海部駅から先、第三セクター経営の阿佐海岸鉄道が高知県の甲浦駅(かんのうらえき)まで走っている。同鉄道では2020年からJR北海道が開発したDMV(デュアル・モード・ビークル)を3台導入して、走らせる予定だ。列車として線路を走りつつ、線路の無い先の区間はバスとしても運行させようという試みだ。こうした阿佐海岸鉄道を含めて牟岐線を取り巻く状況が、今後どのように推移していくのか気になるところだ。
【注目はここ!⑬】香椎線に新型蓄電池電車が導入される
JR九州で最も注目されているのが香椎線(かしいせん)の車両の変更だろう。九州一の大都市でもある福岡市の近郊路線ながら、長年、非電化路線だった香椎線。非常に鉄道ファンとしては興味深い路線でもあった。
そのあたりの状況を本サイトでも紹介した。
かつては同じ会社の路線だった – 数奇な運命をたどった2路線を巡る旅【香椎線編】
これまで国鉄時代生まれのディーゼルカー、キハ40系の天下だった香椎線に3月16日から近代的なハイテク電車が走り始める。
導入されるのは819系蓄電池電車で、「DENCHA(デンチャ)」の愛称が付く。香椎線と鹿児島本線の接続駅である香椎駅構内に集電装置を設置。ここで集電した電気を蓄電池にため、非電化区間である香椎線の西戸崎駅〜香椎駅〜宇美駅(うみえき)間を走らせる。
やはりディーゼルカーよりも電車の身軽だ。よって西戸崎駅〜香椎駅間は平均2分の短縮、また香椎駅〜宇美駅間は平均で3分の短縮となる。電車の威力を見せつけられる時間短縮となりそうだ。
JR九州では他に工事が進められていた折尾駅の改良工事のうち、若松線(筑豊本線)の新ホームが高架化が完成する。新駅舎の完成は2023年ごろになる予定だが、駅の開業が1891(明治24)年とJR九州の中でも老舗の駅。どのように変っていくか気になるところだ。
【注目はここ!⑭】三陸鉄道久慈駅〜盛駅間を直通する列車も登場
最後は岩手県を走る第三セクター鉄道・三陸鉄道のダイヤ改正の話題を見ていこう。
東日本大震災により大きく傷ついた三陸海岸の鉄道網だが、元JR山田線の釜石駅〜宮古駅間が8年の歳月を経て3月23日に復旧される。同時に、この区間は三陸鉄道に運営が移管されることなる。
これまで三陸鉄道は南リアス線(釜石駅〜盛駅・さかりえき)と、北リアス線(久慈駅〜宮古駅間)に分かれて営業してきたが、釜石駅〜宮古駅間が結ばれることから、総距離163kmの「リアス線」と路線名を改める。それと同時にダイヤ改正が行われる。
注目は163kmを通して走る直通列車だ。時刻表を見ると久慈駅発、盛駅行きの上り列車は日に3本、盛駅発、久慈駅行きの下り列車は2本の直通列車が走る。所要時間は4時間21分〜38分となり、“乗り甲斐”のある列車となりそうだ。
合わせて盛駅〜釜石駅間、釜石駅〜宮古駅間、宮古駅〜久慈駅間を走る列車も運行され、平均して1〜2時間に1本の割合で列車が運行されることになる。
東日本大震災により大きな痛手を受けた三陸沿岸。ようやくその痛手から立ち直りつつあることを象徴するような三陸鉄道リアス線の全線開業。半日かけてでも、じっくり乗り巡りたい路線が誕生したことを歓迎したい。
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