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2019/2/9 19:00

富士山の美景&迫力ある姿を満喫! ―― さらに調べると御殿場線の奥深い魅力が浮かび上がってきた!!

【再発見の旅⑥】御殿場ではやはり富士山の眺望を楽しみたい

トンネルと橋梁が続いた路線も駿河小山駅で一段落。鮎沢川にそって緩やかなカーブが続く。足柄駅を過ぎれば御殿場線で最も標高が高い御殿場駅も近い。鮎沢川に沿って登ったルートも御殿場が近づくにつれ、視界が開けてくる。そして土地もなだらかになると、目の前に富士山が圧倒的な迫力でせまってくる。

↑御殿場線一の撮影スポットとされる狩屋踏切を御殿場線の主力車両313系電車が通る。富士山がすそ野まできれいに写せるポイントだ。近年、踏切の反対側に運動施設が整備され、大きな夜間照明設備が立てられたのがちょっと残念だ

 

↑御殿場駅富士山口(北側)の目の前にある商店街には写真のようなSL列車のオブジェが付けられていた。ちなみに人気の御殿場プレミアムアウトレットへは、駅の南側の箱根乙女口から頻繁にバスが運行されている

 

小田急から乗り入れる特急「ふじさん」は御殿場駅どまり。また普通列車も御殿場駅どまりが多い。路線を通して走る列車は少なめながら、御殿場から先へ行く列車も多く運転されているので心配は無用だ。御殿場線を走るJR東海の車両は313系電車のみだが、乗降口の横に開け閉めボタンが付いていて、寒い日や暑い日、駅に停車する時に扉を閉めることが可能なので便利だ。

 

さて御殿場駅からは、急な坂を下るのみの路線となる。この先も鉄道好きにとっては興味をそそる施設が多く残っている。

 

 

【再発見の旅⑦】スイッチバックして登った当時の遺構が残る

古い時刻表を見ると、御殿場駅の次の駅は裾野駅となっている。当時は御殿場駅〜裾野駅間には駅がなかった。現在は、御殿場駅→南御殿場駅→富士岡駅→岩波駅→裾野駅となっている。途中に3つの駅が新設されたわけだ。

 

この3つの駅の中で富士岡駅と岩波駅が特に興味深い。東海道線として開業した当時は、両駅とも駅はなく信号所だった。この両信号所ともに、スイッチバックするための施設があった。

 

当時の蒸気機関車が牽く列車は、急坂を一気に登っていけない。そのために、ジグザグに造られた線路を走り、一度、信号所の側線にバックしてひと休み。少しずつ坂をあがり、さらに次の坂道に挑むという運転方法だった。

↑富士岡駅そばの旧スイッチバック施設は現在、「富士見台」として整備されている。御殿場市内の中で富士見十景の一つとされるほどで富士山がすそ野まできれいに望める

 

↑旧スイッチバック施設(上記の「富士見台」)の上から御殿場線を見下ろす。下の路線から登ってきた列車は一度、奥にあった線路に入り、バックして左手のスイッチバック路線に入った。ここでさらに進行方向を変えて御殿場方面へ登っていった

 

現在の富士岡駅と岩波駅の2つの駅にスイッチバック施設があった。前述した時刻表の項目で、上り列車が下り列車よりも10分ほど所要時間がかかった理由は、2箇所あったスイッチバックでジグザグ運転を繰り返すためだった。

 

坂に強い電車での運行となり、スイッチバック施設は不要となった。そのために、線路は取り外されているが、スイッチバック施設は堤となって、残っている。とくに富士岡駅はスイッチバック施設が展望台としても整備されているので、ぜひ訪れていただきたい。非力な蒸気機関車が主力だった時代の列車運行の苦闘ぶりが思い浮かぶような遺構だ。

 

ちなみに富士岡駅はホームから望む富士山も美しい。たぶん、日本で最も富士山が良く見えるホームでないかと思われる。

↑富士岡駅〜岩波駅間も御殿場線の撮影スポットとして知られる。近年、やや路線の周囲を取り囲む樹木が茂り、また住宅や工場などの施設も増え、富士山と列車が一緒に写せるポイントが少なくなりつつあるのが残念だ

 

岩波駅の近くにもスイッチバック施設の遺構が残るが、こちらは堤の上は立入できないのが残念だ。

 

御殿場線は東名高速道路とほぼ平行に走っている。そのためもあり近年、工場や倉庫が増えつつあり、合わせて駅の近くは住宅地として開発も進んでいる。古い鉄道写真を見返すと原野の中を走る写真が散見できたが、そうしたイメージは御殿場線に限っては消えつつある。

↑裾野駅から岩波駅にかけて、緩やかにカーブした堤が設けられている。視界も開け絵になるポイントだ。かつて多くの客車を連結した蒸気機関車が、この坂を登ったのだろうか、そんな想像がかき立てられる場所でもある

 

 

【再発見の旅⑧】旧三島駅は?さらに沼津も変ろうとしている

岩波駅から先は沼津、三島の郊外住宅地の印象が強くなっている。そのため終着駅の沼津が近づくにつれ乗客が増えてくる。郊外電車の趣が強い。

 

この先の区間、触れておかなければいけないのは、旧三島駅と機関区があった沼津駅の今だろう。前述した大正期の時刻表では裾野駅の次の駅は「三島駅」となっている。現在、三島駅は東海道本線にあるがさて。

 

熱海経由の東海道本線が開通するまでは、三島に近い現在の下土狩駅(しもとがりえき)が三島駅とされていた。熱海経由の路線が開通した後は、現在の場所に新たにできた駅が三島駅となった。開業当初、三島と名乗っていた下土狩駅だが、実は今も三島市のお隣り長泉町(ながいずみちょう)に駅がある。

↑下土狩駅に入ってくるのは小田急小田原線から沼津駅まで乗り入れていた当時の特急「あさぎり」。2012年3月までは写真の20000形RSEで運行された。円内は駅近くにある鮎壺の滝。1万年前に富士山の噴火によりできた滝とされ静岡県の天然記念物に指定される

 

さて御殿場線の旅も最終盤。終点の沼津駅が近づいてきた。駅に入る前に左手にJR東海の車両が多く停められた沼津運転区が見えてくる。かつて沼津機関区だったところだ。

 

御殿場線は5・6番線に到着。この沼津駅で東海道本線と再び合流する。この沼津駅、現在、静岡県と地元、沼津市により高架化が計画されている(沼津駅周辺総合整備事業)。沼津運転区も別の場所へ移動を計画されている。まだ計画段階だが、10年先には駅や運転区が大きく変貌しているかも知れない。御殿場線が開業してから130年のうちに大きく変っていったように。

 

↑御殿場線沿いにあるJR東海の沼津運転区。右に写る373系電車ほか、東海道本線や御殿場線を走る車両が多く配置される。古くは沼津機関区がおかれ、東海道本線の重要な機関区として列車の運行に貢献した

 

↑沼津駅の駅前にはC58形蒸気機関車の煙室扉と動輪、さらに沼津機関区があったことを伝える記念碑が立てられる

 

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