【武豊線の謎③】大府駅から分岐する線路の1本が非電化という謎
大府駅から武豊線の列車に乗ってみよう。日中は2番線ホームを利用しての折り返し運転が行われている。列車は2両編成で、運転士のみのワンマン運転だ。
起点の大府駅からは313系のセミクロスシートの座席をほぼ埋めるぐらいの人が乗り込んだ。ドアは半自動で、駅の停車時には中から開閉できる仕組みだ。
駅を発車すると坂をのぼり、東海道本線の路線を高架で越える。しばらく走ると、右手から非電化の線路が合流してくる。さて、この線路は何だろう?
大府駅の先で合流した非電化の線路は、貨物列車専用に用意されたもの。衣浦臨海鉄道のディーゼル機関車が大府駅でJR貨物から貨車を引き継ぎ、この貨物列車専用の線路を利用して武豊線へ入る。機関車は武豊線の東浦駅と東成岩駅(ひがしならわえき)から衣浦臨海鉄道の路線へ乗り入れている。
各地に臨海鉄道が走っているが、自社路線以外にJRの路線まで機関車が乗り入れるケースは非常に少ない。武豊線ではそうした珍しい光景を見ることができる(ほかには岡山県の水島臨海鉄道がJR山陽本線へ乗り入れている)。
【武豊線の謎④】亀崎駅には明治生まれの日本最古の駅舎が残る
大府駅を発車、次の尾張森岡駅を過ぎるころから東側(進行方向の左側)に水田、西側(進行方向の右側)に住宅が続く。
地図を見ると、武豊線の東側には境川、逢妻川といった河川が合流して衣浦港へ注ぐ。河川の水利を利用しての米栽培と、港が近いことを活かし、工業団地化が進んだ。対して西側には知多半島を南北に結ぶ国道366号が貫く。この国道沿いに住宅地、商業地が連なり発展した。
鉄道路線を境にしてこうした区分けが自然と生まれているところが興味深い。
大府駅から約20分で、亀崎駅に到着した。この駅ではぜひ下車しておきたい。
何しろ、日本最古の現役駅舎が残っているのだから。駅舎は路線開業よりも早い明治19年1月に建てられたとされる。駅の軒下に付けられた「建物資産標」には「M19年1月」と刻印がある。
木造のシンプルな建物。入口を入ると小さな待合室、無人駅のため、窓口は閉じているが、駅の事務所だったスペースが駅の入口に連なって奥に延びる。
実は最古の駅にはさまざまな説がある。火事が起こり全焼した、いや火事は官舎のみの消失で、全焼したわけではないという諸説ある。そうした説がありつつも、明治期に生まれた古い駅舎が残ることは確かなようだ。
筆者としては駅舎の前に残る、貨物を積み下ろしに使われたと推測される上屋と古いホーム跡が気になった。こちらが建った年代は不明ながら、古いレールを柱として使った、そんな建物が今は自転車置き場として使われていた。