【いい電の秘密④】直流電車と交流電車が隣り合わせ福島駅を発着
前置きがやや長くなったが、路線の模様を見ていくことにしよう。
発車は福島駅。福島交通の乗り場は駅の北側にある。JR東北本線、東北新幹線とは連絡通路で結ばれているものの、ややわかりにくい。
独自の入口から入る場合は、福島駅の東口を外に出て、駅前を北に向かう。バスが発着するロータリーの前に、いい電の乗り場入口がある(下写真)。簡素な造りで、「電車のりば」という表示がとてもレトロな趣だ。
いい電の乗り場は、写真を見ておわかりのように第三セクター鉄道の阿武隈急行線と共存している。
ユニークなのは1本のホームに一方は飯坂線が、JR東北本線に面した側に阿武隈急行線のホームとなっていること。実は、この2路線。電化方式が異なっている。飯坂線は直流1500ボルト。阿武隈急行線は交流20000ボルトだ。
阿武隈急行線の線路は、駅の先でJR東北本線の線路と合流する。JR東北本線の一部区間を共用しているだけに、JR線と同じく交流電化されている。
こうした直流と交流の電車が隣合わせながら、同一のホームを利用するというのは、非常に稀なこと。全国的に見て、ここのみでないかと思われる。
直流と交流という違う種類の電車が同居する。鉄道ファンとしては、なかなか興味深い駅ホームの形態である。とはいえ、外から見ただけでは、阿武隈急行線の電車のパンタグラフ付近に碍子(がいし)がごてごてと付いているぐらいと、そう違いがあるわけではないのだが。
【いい電の秘密⑤】福島市のシンボル信夫山をかすめて走る
福島交通飯坂線の路線は全線が単線で、桜水駅などの途中の駅で上り下り電車の交換がある。時刻は朝夕が15分間隔、日中は20〜30分間隔で運行されている。福島駅へ着くと、すぐに折り返し運転されている電車が多い。
駅間は短く、最短の岩代清水駅〜泉駅間で300m、遠くても美術館図書館前駅〜岩代清水駅間、医王寺前駅〜花水坂駅間の1.3kmといったところ。つまり隣駅まで、歩けてしまう距離に駅が連なる。
福島駅を出ると次の駅の曽根田駅(そねだえき)。ここまで600mの距離だ。この曽根田駅は、太平洋戦争前後に「電鉄福島駅」と名乗り、いい電の玄関口だった。そのためかターミナル風の駅舎が残る。ちなみに、JR東北本線の路線はすぐ横を平行して走っているが、曽根田駅、次の美術館図書館前駅とも、いい電のみ駅が設けられ、JR東北本線には駅がない。このあたり、いい電は市内線、そして近郊線の役割を果たしているといって良いだろう。
曽根田駅の次は美術館図書館前駅と非常に長い名前の駅だ。降りてみると、住宅地の中にある駅といった印象。小さな入口と連絡通路、小さめのホームと、コンパクトにまとめられている。駅名どおり福島県立美術館と福島県立図書館にも近い。
美術館図書館前駅を過ぎると、進行方向右側に小高い山がそびえる。この緑の一帯は、信夫山(しのぶやま)と呼ばれる。信夫山は福島市のシンボル的な存在で、標高275m、福島駅からも見えているのがこの山だ。
桜の名所でもあり、春には多くの花見客で賑わう。この信夫山をかすめるようにいい電は走り、間もなく、JR東北本線の線路を陸橋で越える。