使い勝手の良さでは、また一歩ライバルをリード
とはいえ、この新型タント/タント カスタムの真骨頂はやはり室内回りでしょう。タントは、2007年に登場した2代目から助手席側の前後席間にあるピラー(Bピラー)の機能をドアにインテグレートしたミラクルオープンドアを採用。
巨大なボディ側面の開口部を実現していますが、新型では「ミラクルウォークスルーパッケージ」を組み合わせることで日常の使い勝手を格段に向上させました。その代表格となる機能が、実に540mmというスライド量を誇る運転席ロングスライドシート(世界初)。これにより運転席と後席のウォークスルーが容易としたほか、運転席に座ったまま後席にアクセスできるので、たとえば後席(のチャイルドシート)に座る子どもの世話を……といった場面で重宝すること請け合いです。
もちろん、一番後ろまでスライドさせるとステアリングなどが操作できませんから安全性に対する配慮も十二分です。ロングスライド機構はシフトセレクターがPレンジ(パーキング)に入っていて、なおかつ解除スイッチを押さないと常識的なスライド量に制限。スイッチでロックが解除される時間も1回の操作につき約5秒となるので、誤操作による不測の事態を心配する必要はないでしょう。
“初モノ”は、それだけにとどまりません。半ドアの助手席を自動で全閉にする助手席イージークローザーやパワースライドドアが閉まりきる前にドアロックを事前予約できるタッチ&ゴーロック機能。そして降車時に予約しておき、電子カードキーを持ってクルマに近づくと自動でパワースライドドアが開くウェルカムオープン機能は、いずれも軽自動車では初採用とか。決して「なければ困る」という装備ではありませんが、おそらく小さな子どもを連れてショッピングといった場面では、そのありがたみがヒシヒシと実感できるであろうことは想像に難くありません。
骨格から新設計した成果で、基本機能にも磨きがかかりました。フロントピラー(Aピラー)が従来より細くなったことで前席からの視界が拡大。一層運転しやすくなったほか、室内のフロア高が16mm低床化され子どもから高齢者に至る乗降性と荷物を積載する際の利便性が向上しました。また、ダイハツは産学協同研究で、おもに高齢者がクルマを使う際の利便性を追求。この新型タントから形状やレイアウトを最適化したアシストグリップや電動のサイドステップを用意するなど、特に地方ではライフラインの役割を担う軽自動車に相応しい地道なアップデートを行っていることも見逃せないポイントといえるでしょう。