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2019/12/2 21:00

トラックの自動運転技術は今、レベル2相当。だけど、このダイナミックさが凄い

三菱ふそうトラック・バスは11月12日、今年10月より発売したSAE(米自動車技術会)が定める「レベル2」相当の自動運転機能を搭載した大型トラック『スーパーグレート』の試乗会を開催しました。この日は三菱ふそうトラック・バスと同じダイムラートラック傘下のメルセデス・ベンツ「アクトロス」と、フレートライナー「カスケディア」が用意され、こちらにも合わせて試乗することができました。この3車による迫力たっぷりの試乗会をレポートします。

↑三菱ふそうトラック・バスの喜連川研究所で行われた、「レベル2」相当の自動運転機能を搭載する新型「スーパーグレート」の試乗会。ダイムラー トラック傘下の3車が勢揃い。左からフレートライナー「カスケディア」と、三菱ふそう「スーパーグレート」、メルセデス・ベンツ「アクトロス」

 

ダイムラートラック傘下の3車種が揃った姿は圧巻!

ダイムラートラックは11月1日、ダイムラーの商用車部門として組織再編によって世界最大の商用車メーカーとして発足したばかり。そのダイムラーは、ダイムラートラック以外に乗用車部門のメルセデス・ベンツ、金融からモビリティ開発を担うダイムラーモビリティを傘下に置く巨大グループです。三菱ふそうトラック・バスは、その中のダイムラートラックの一翼を担っている大型商用車メーカーで、今回、3車を合わせた試乗会が実現できたのもそうした背景があるからこそ可能となったのです。

 

今回の試乗会で最大のトピックは、3車ともSAE(米自動車技術会)が定めるレベル2相当の高度運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト(ADA)」を実現していることです。全車速域で対応するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を実現した上で、電動モーター付油圧パワーステアリングを導入し、アクセルやブレーキ、ハンドルまでを制御できる「レベル2」での走行を可能としたのです。これらは細かなローカライズこそ各社が行っているものの、システムの開発をグローバルな協力体制で行うことでより高度な制御を可能にしたということです。

 

試乗はまず「スーパーグレート」から行いました。「プロキシミティ・コントロール・アシスト」を使い、あらかじめセットされていた速度(80km/h)にレジュームボタンを押すとスムーズに加速していきます。その時点から車線認識も行い、さっそく車線に沿って走るレーンキープ状態に入りました。ここでステアリング制御状態をわかりやすくするため、テストコース内であることで一時的に手放し運転で走行します。すると直線路では細かくステアリングを動かしつつ、緩やかなカーブでは道路に沿ってステアリングが追従していくのがわかりました。これがSAE(米自動車技術会)が定めるレベル2相当の走りです。その動きはまるでロボットが運転しているかのようでした。

↑日本で初めて、SAE(米自動車技術会)が定める「レベル2」相当を実現した三菱ふそう「スーパーグレート」。この10月より発売を開始した

 

↑「スーパーグレート」のフロントバンパーに搭載されたミリ波レーダー。従来モデルにも搭載されていた

 

↑フロントウインドウ下には単眼カメラを新たに装備し、車線を把握するのに活用している

 

プロキシミティ・コントロール・アシストの模様はこちら。

 

もちろん、手放し運転を公道で行うことはNGです。そのため、その状態を検知するとシステムは10秒ほどでメーター内には黄色の警告を表示し、さらに30秒前後で警告は赤色に変化させました。さらに手放し運転を続けていると警報音が断続的に鳴り始め、徐々にその間隔が詰まって60秒が経つと警報と同時にシステムを解除するに至ります。また、スーパーグレートには赤外線カメラも搭載されており、これでドライバーの視線を昼夜を問わず監視。仮にドライバーが前方から視線を長く外していることを検知すると「ポーンポーン」と別の警報を発する仕組みも備えられていました。

↑黄色の警告をそのままにしていると警告は赤色に切り替わり、断続的な警報音が鳴り、徐々にその間隔が狭まって60秒でシステム解除となる。写真は「カスケディア」のもの

 

↑ステアリングに一定時間テンションがかからないと、まず保持を促す警告がメータ内に表示される。写真は「カスケディア」のもの

 

次に体験したのが「車線逸脱抑制機能」です。コース上を走行中、ドライバーがウインカーを出さずにわざと車線を外れさせようとすると、突然スピーカーから「ブー!」という、かなり大きめの連続音。同時にステアリングが動いて元の車線に戻そうという力が加わります。これによって、ドライバーがうっかりして車線をはみ出すことを未然に防止するというわけです。しかも、その動きに応じて左右いずれかのスピーカーで鳴らすため、車線のどちら側が外れそうになっているのかが即座にわかります。なお、この機能は時速60km/hを超えた時にのみ動作するとのことでした。

 

2台目の試乗となったのがメルセデ・スベンツ「アクトロス」です。このクルマで最大のポイントは、世界で初めて大型トラックに電子ミラーを搭載したことにあります。形状は大型トラック用らしい縦長の大型サイズで、7:3の比率で上下に分けて表示することができます。上側には黄色い破線を表示させ、これはトラックの後端を表しているんだそうです。これを目安に車体の長さを掴んで、バックや追い越しをするんですね。また、上側はアングル変更もワンタッチで行えるので、つないでいるトレーラーの状態を細かく見ることができるということでした。まさに電子ミラーならではの活用方法が採用されたというわけですね。

↑メルセデス・ベンツ「アクトロス」。スーパーグレートと同様、「レベル2」相当の自動運転機能を装備した上で、電子ミラー機能も装備したことで話題を呼んだ

 

↑メルセデス・ベンツ「アクトロス」に装備された電子ミラー用アウターカメラ

 

↑装備された電子ミラーは上下二分割で表示。アングルも自在に変えられる

 

↑ダッシュボードにタッチパネル式のディスプレイも装備されていた

 

3台目はボンネットスタイルを持つフレートライナー「カスケディア」です。このクルマは車中泊も想定された造りになっていました。運転席の後ろは「キャンピングカー?」と思わせるような装備が可能で、試乗車には少し小さめではありますが、椅子とテーブルが一対で設備され、背面のクッションを引き出すとそのままベッドになる仕掛けにもなっていました。さらに小型冷蔵庫も装備されていて、その上には電子レンジを装備するスペースも用意されるといった具合。この装備があるからこそ、広いアメリカを何日もかけて走れるんですね。

↑フレートライナー「カスケディア」。アメリカでは全長規制がないため、走行安定性に優れるボンネット型が好まれるという

 

↑運転席の背後に装備される椅子とテーブル。小型ながら十分くつろげるサイズだ

 

↑背後に収納していたクッションを引き出すとこの通りベッドに早変わり

 

この日は、「スーパーグレート」を使って、衝突被害軽減ブレーキとして機能する「アクティブ・ブレーキ・アシスト5(ABA5)」のデモも行われました。「スーパーグレート」は従来モデルからミリ波レーダーによる制御を行っていましたが、新たにカメラを追加することで特に歩行者にまで対象範囲を広げたのがポイントです。すべての事例で完全停止できるわけではないとのことですが、障害物検知能力を大幅に向上させて危険回避能力を高めているということです。

↑衝突被害軽減ブレーキのデモ。約30km/hで走行する新型「スーパーグレート」の前を横切るダミー人形の約1mほど手前で自動停止した

 

こちらのデモでは、道路を横断する歩行者を想定したダミー人形を使って行われました。スーパーグレートが約30km/hで走行する中、ダミー人形がその前方を横切ろうと進んで行きます。ダミー人形がスーパーグレートのほぼ正面まで来たところでブレーキが作動。停止直前でスキッド音を軽く響かせたものの、ダミー人形にぶつかることなく無事に停止することができました。この時ドライバーはブレーキを含め、回避操作を一切行っていないとのことでした。予想以上にスムーズに停止できた印象でした。

 

アクティブ・ブレーキ・アシスト5の模様はこちら。

 

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