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2020/1/1 19:00

2020年「鉄道業界」では何が起こるのか? 10のトピックで読み解く

【注目!2020年③】新列車が目指すのは壮大な世界一の「わ」

2020年秋、九州にユニークな新列車が登場する。

 

列車の名は「36ぷらす3(さんじゅうろく ぷらす さん)」。JR九州が約3年半ぶりに登場させるD&S(デザイン&ストーリー)列車だ。九州は世界で36番目に大きな島。さらに列車が巡る5つのルートに、35のエピソードが詰まる。このエピソードを楽しみつつ、利用する人たちに36番目のエピソードを語っていただきたい……。そんな思いが列車名に込められている。

 

さらに36に3を加えれば「39(サンキュー!)」。JR九州ではこの列車の運行により、驚き、感動、幸せを届け「お客さま、地域の皆さま、私たち」でひとつになって39(サンキュー!)=「感謝」の輪を広げたいとしている。

↑新列車「36ぷらす3」のイメージ。右上が同列車のロゴデザインとなる。元の車両は787系特急形電車。全車グリーン車で定員100名程度を予定する。ちょっと贅沢なD&S列車となりそうだ。Design & Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates

 

列車が運行される区間は、曜日で異なる。

 

・木曜日=博多駅→熊本駅→鹿児島中央駅(肥薩おれんじ鉄道線経由)

・金曜日=鹿児島中央駅→宮崎駅

・土曜日=宮崎空港駅・宮崎駅→大分駅・別府駅

・日曜日=大分駅・別府駅→(門司港駅)→小倉駅→博多駅。

・月曜日=博多駅→佐賀駅→長崎駅→佐賀駅→博多駅(門司港駅をのぞく各駅で下車可能)。

 

上記の運行コースをたどる。月曜日をのぞくと、九州をぐるりと一周まわるコースで、全ルートの走行距離は計1198kmとなる。目指すは世界一の壮大な「わ」だそうだ。そして「世界一大きい『感謝』の輪を描きます」!

 

確かに「わ」を描くように環状運転をする列車としては、これまでにない長さを走る列車となりそうだ。

↑3号車には「ビュッフェ」が設けられる。ちなみにビュッフェが復活するのは17年ぶり。九州の飲み物、食べ物が提供される予定だ。ほか4号車は共用スペースの「マルチカー」となる Design & Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates

 

運行に使われる車両は787系特急形電車。6両全車をグリーン車に改造、かつて人気だった“ビュッフェ”も復活するなど、デザイナー・水戸岡鋭治氏流の魅力付けがなされている。果たしてどのような新列車となるのか、デビューが楽しみだ。

 

このJR九州の新観光列車以外にもJR西日本に新観光列車が登場する。

 

かつて関西の看板列車・新快速用として一世を風靡した117系。この117系を改造した観光列車で、「WEST EXPRESS銀河」の名で登場する。走行開始は5月8日の予定。まずは京都駅・大阪駅と出雲市駅を結ぶルートを夜行特急列車として走り始める。普通車指定席の利用料金は、現行の特急料金と同額の予定(運賃は別途必要)。ほかグリーン車指定席と、グリーン個室(料金は新規設定)が設けられる。気軽に楽しめる夜行観光列車となりそうだ。

 

 

【注目!2020年④】富山市の路面電車網が大きく変貌する!

路面電車は一部の都市を除いて、存在感が薄れつつある。一方で、新線を設けるなど、路面電車(ライトレール)を新たに活かしている都市が出てきた。富山市は路面電車を市内の公共交通機関として活かす好例と言って良いだろう。

 

この春に富山市の路面電車網が大きく変貌する。富山駅の北側を走る富山ライトレールの線路と、南側を走る富山地方鉄道の富山市内軌道線の線路が3月21日に結びつき、南北直通運転が開始されるのだ。

↑北陸新幹線が開業した2015年春以降、富山駅の改良工事が進められ、同年には富山市内軌道線の線路が富山駅構内まで達した。さらに在来線の高架化工事が行われ、高架の下を利用した南北直通運転用の新路線の建設が進められている

 

↑富山駅北と岩瀬浜を結ぶ富山ライトレール。路線の大半は2006年までは営業していたJR西日本の富山港線で、駅前から1.1kmの併用軌道区間を新設、富山ライトレールとして14年にわたり営業が続けられてきた

 

運転開始前の2月22日には、富山ライトレールが富山地方鉄道に吸収合併される。何とも思い切った施策が富山市の主導で進められていた。連絡線が誕生後に、どのような運行が行われ、またどのように富山市が変っていくのか、興味深い。

 

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