【養老鉄道の謎③】なぜ4扉車と3扉車が混在しているのか?
養老鉄道では4扉車両と3扉車両が走る。なぜ4扉車と3扉車両が混在しているのだろう。
走っているのは元近鉄と元東急の車両だ。元近鉄の車両は4扉車、そして元東急の車両が3扉車と扉の数が異なっている。さらに2両編成と3両編成が混在する。車両の長さも元近鉄と元東急の車両で異なる。だが、混みあうのは朝夕の一部の電車のみということもあるのか、問題も生じていない様子だった。
元近鉄と元東急の車両が混在することが、鉄道好きにとって逆に養老線に魅力に感じる大きな要素となっている。元近鉄の車両は近鉄らしいオーソドックスな顔つき、そして元東急の車両は、長年、東京都内を走り続けた初期のステンレス車両らしい造りだ。ここでそれぞれの車両の特徴を見ておこう。
まずは元近鉄車両から。
◇養老鉄道600系・620系
この2形式は、近鉄が養老線用に改造して投入した車両だ。車体の長さ20m。まず600系は近鉄名古屋線用の1600系と、近鉄南大阪線用の6000系などの改造車両で、現在、3両×2編成と、2両×2編成の計10両が走る。
620系は近鉄南大阪線6000系を養老線用に改造した車両で、3両×2編成が走る。ちなみに610系も4編成、計9両が、使われていたが、2019年にすべて廃車となっている。元になった車両はみな昭和40年代生まれで、かなりの古参電車ということもあり、残り車両の動向も気になるところだ。
◇養老鉄道7700系
7700系は2018年11月まで東急の池上線と東急多摩川線を走り続けた車両だ。養老鉄道では7700系を計15両導入、2019年4月から養老線を走り始めた。
7700系の種車となった車両は東急7000系で、日本初のオールステンレス製の車両として誕生した。車体の長さは18mで近鉄車両より2mほど短い。製造してほぼ20余年後に、完全リニューアルされ7700系となった。
7000系が誕生したのは1962年〜1965年とかなり前だったが、オールステンレス製の車体は傷みが少なく、また後に台車や電装品など積み替えられていたため中身は比較的、新しい。そうしたこともあり養老鉄道では7700系を、今後30年は使い続ける予定だとされる。日本初のオールステンレス電車は、耐用年数も想定外に長い電車となり、まだまだ養老鉄道で生き続ける見通しである。
ちなみに東急7700系には、歌舞伎のメイク「隈取(くまどり)」のような色で正面を飾った車両があり、ファンから「赤歌舞伎」という愛称が付けられていた。養老鉄道では「赤歌舞伎」に加えて「緑歌舞伎」という愛称が付く車両も走る。そして早くも養老線の人気者となっている。
【養老鉄道の謎④】起点の桑名駅では近鉄の路線と平行して走るが
前置きが長くなったが、ここから路線の旅を始めることにしよう。養老線では全線乗り降り自由な「1日フリーきっぷ」(1500円)も販売していて便利だ。
養老線の起点は桑名駅となる。養老線の改札口は東口にも、西口にもない。改札口は、近鉄名古屋線の下り6番線ホームの中間部にある。ここで切符を購入して乗車する。養老線の電車が発着するホームは4番線。この4番線は近鉄の6番線と同ホームで、その北側に設けられている。こうした駅の造りから見ても、近鉄とのつながりが強いことが分かる。
なお、桑名駅は東口と西口を結ぶ自由通路を整備中で、2020年秋ごろまでには自由通路から養老線へ直接アクセスできるように改良される予定だ。
桑名駅付近の養老線の線路は近鉄名古屋線と平行して敷かれている。養老線の電車は桑名駅を発車すると近鉄電車と並走して走る。しかし、近鉄名古屋線との連絡線はない。元近鉄の路線であり、今も養老鉄道は近鉄グループホールディングスの一員なのになぜなのだろう?
理由はシンプルだ。線路の幅が異なるためだ。養老線の線路幅は1067mmとJRの在来線などと同じサイズ。平行する近鉄名古屋線の線路幅は1435mmと新幹線などと同じ標準軌のサイズだ。近鉄では南大阪線が1067mm幅だが、路線は遠く離れている。線路の幅が違うということが、近鉄にとって養老線が管理・運営面で“お荷物”になっていたことが容易に想像できる。
桑名駅を発車する電車は30分〜1時間おき。深夜のごく一部を除き、ほとんどの電車が大垣行となっている。桑名駅と発車した養老線の電車は、近鉄名古屋線と並走、すぐに左にカーブして養老方面へすすむ。そして近鉄名古屋線は立体交差でくぐり、養老方面へ向かう。