昨年末に発売されるや、販売面では見事なスタートダッシュを決めている「ダイハツ・ロッキー」と「トヨタ・ライズ」。いまが旬のSUVカテゴリー、それもコンパクト級の新作ともなれば注目を集めても当然といえますが、果たしてその実力は? ここでは一躍、人気モデルとなった理由を明らかにしましょう。
【今回紹介するクルマ】
ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ
※試乗車:ロッキーX(2WD)184万8000円/ライズZ(2WD)206万円
価格:ロッキー 170万5000円~242万2200円
ライズ 167万9000円~228万2200円
既存モデルにはなかった“すき間”的ボリュームに
「ロッキー」&「ライズ」は、ダイハツが開発、生産を担当するブランニューのコンパクトSUVです。ダイハツが掲げる新世代のクルマ作り、「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」を新型「タント」に続き採用。ダイハツいわく、その結果として優れたスペースユーティリティを実現すると同時にクルマとしての基本性能も格段に高められたといいます。
ボディサイズは、全長3995×全幅1695×全高1620mmでホイールベースは2525mm。クロスオーバーSUVという括りなら「スズキ・クロスビー」よりひと回り大きく、「ホンダ・ヴェゼル」よりひとまわり以上小さいというボリュームで、日本では狭い路上でも扱いやすい5ナンバー枠に収まることも要注目ポイントのひとつといえそうです。
ちなみに後述するパワーユニットや全グレードで2WDと4WDが設定される駆動方式も含め、基本的なスペックはロッキーとライズでまったく同じ。大きく異なるのは、外観のフロントマスク程度です。価格については、一見するとライズの安さが目立っています。ただし、ライズの一番ベーシックなグレードである「X」はスマートアシストに代表される運転支援システムが装備されない“素”のモデルで、ロッキーにはそもそも同じ仕様が存在しません。装備内容が同等なグレード同士なら、むしろロッキーの方がリーズナブルなほどです。
とはいえ、その価格差は販売現場次第で吸収できる類のもの。比較するべきポイントは、前述のフロントマスクとオプション装備の違い程度と考えて差し支えないでしょう。いずれにせよ、価格競争力についてはロッキー、ライズともに極めて高い水準にあることは間違いありません。
古い世代のクルマ好きは、ダイハツ・ロッキーと聞くと1990年代に存在したコンパクトなクロカン4WDをイメージする人もいるでしょう。しかし生まれ変わったロッキー、そしてライズのスタイリングは当然ながら現代的なSUVらしいテイストに仕上げられています。くだんのフロントマスクはロッキーがSUVらしい力強さを、ライズは軽快でスポーティな風情を演出したものといえそうですが、いずれも全体の存在感はコンパクトなサイズ以上。後者については“プチRAV4”という趣すらあって、この種のモデルに興味を持つ潜在ユーザーを惹きつける魅力度は十二分です。
室内の広さはボディサイズからイメージされる以上!
そんな、SUVとして手堅い仕立ては室内においても変わりません。インパネ回りは、適度なタイト感もあるスポーティなデザインである一方、収納スペースにも事欠かない実用的な出来映え。このあたりは、いかにも軽自動車を作り馴れたダイハツらしい美点のひとつといえるでしょう。
ダイハツらしい手腕は、室内空間の捻出にもいかんなく発揮されています。特に驚くべきは、全長が4mを切るコンパクトサイズながら後席空間にゆとりすら感じさせる広さが確保されているところ。乗る人の体格次第ですが、フットスペースは足が組めるほどといえば、どれほど広いかおわかりいただけるでしょう。この広さなら、たとえば「ムーヴ」など、軽のモノスペースモデルから乗り替えるユーザーからも不満が出ることはないはずです。
また、ロッキー&ライズは荷室空間もクラスの水準を超える広さが確保されています。容量は後席使用時でも最大で369L(VDA計測値)。床面は2段階で高さを変えられる作りで、さらに床下には2WD仕様で最大80L、4WDでも38Lのサブトランクが設けられています。
“スマアシ”を筆頭に運転支援システムも最新モデルらしく充実
コンパクト級とはいえ、装備も充実しています。衝突回避支援ブレーキや車線逸脱警報などがセットになった「スマートアシスト」はロッキーの全グレード、ライズでは「X“S”」グレード以上で標準化。それぞれの上位グレードでは、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールも標準で装備されています。また、オプションにはなりますが上位グレードの2WD仕様では縦列駐車時のステアリング操作をアシストする駐車支援システム(スマートパノラマパーキングアシスト)もラインナップされています。
また、最新モデルらしいのはベーシックグレードを除いてメーターが“画像化”されているところ。スピードメーターこそLEDのデジタルで表示は1種類ですが、タコメーターや各種情報はグラフィックが4タイプから選択可能。このあたりは、よりサイズが大きなプレミアムSUVに匹敵する装備のひとつです。また、SUVといえば4WDを中心とする主要グレードで前席のシートヒーターが標準装備される点もユーザーには嬉しいポイントでしょう。
なお、オーディオ類についてはグレードを問わず全車オプション。とはいえ、スマートフォンと連動するメーカーオプションの9インチディスプレイオーディオを筆頭に選択肢は豊富に用意されています。このあたりは、好みと予算に応じて必要な仕様を選択すれば良いでしょう。ちなみに、コネクテッド機能はロッキーが「ダイハツコネクト」、ライズでは「Tコネクト」が用意。ロッキーでは車内で使用できるWi-Fiサービスも提供されています。
軽量ボディと相まって、2WDは軽快といえる動力性能を実現
さて、DNGAに基づいた高剛性にして軽量なボディに搭載されるロッキー&ライズのエンジンは、1Lの直列3気筒ガソリンターボ一択。トランスミッションも、スプリットギアを組み合わせたダイハツ独自のD-CVTのみとシンプルです。今回の試乗車はFF仕様のみでしたが、その動力性能は1トンを切る車重とあって活発と表現できるものでした。高回転まで回すと相応にノイズを筆頭とする“雑味”が気になりはじめますが、そもそも日常域では高回転まで回す必要性がないので大人しく走る人なら不満を抱くことはないでしょう。
アクセル操作に対するリニアリティ、レスポンスに問題を抱えやすいCVTの悪癖も、もはや実用域では気にならないレベルに抑えられていますから、コンパクトSUVを選ぶ大半のユーザーはシームレスな変速マナーや穏やかなアクセルレスポンスに好感を抱くはずです。
フロントがストラット、リアはトーションビームとなるサスペンションもコンパクトSUVとしては穏当な味付けです。乗り心地は路面からの余計な入力が抑えられ、日常域から高速域までおおむね快適。ハンドリングも背の高さを意識させない自然な仕上がりで、常識的な速度域までなら軽快な身のこなしを実感できます。もちろん、マニア視点でうるさいことを言い始めると路面への絶対的な追従性やロール時の姿勢などに注文をつけたくなってきます。とはいえ、この種のモデルを日常生活のパートナーとして選ぶ人なら、そうした部分を気にする場面は皆無に近いでしょう。
と、ここまでお読みいただければロッキーとライズが人気の理由はおわかりいただけるはず。コンパクトでもSUVらしい姿カタチに、サイズ以上のユーティリティを実現。運転支援システムを筆頭とする装備は最新モデルに相応しく、走りも実用的なコンパクトカーとして不満のない出来栄え。そこに、既存のSUVと比較してオトク感が際立つ価格とくれば、支持を集めるのは当然ということができるでしょう。
SPEC【ロッキーX(2WD)】●全長×全幅×全高:3995×1695×1620㎜●車両重量:970㎏●パワーユニット:996㏄直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:98PS/6000rpm●最大トルク:140Nm/2400~4000rpm●WLTCモード燃費:18.6㎞/L
撮影/宮門秀行
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