【開かずの踏切⑤】列車本数が増えた代々木の踏切の実態は
◆JR山手貨物線「青山街道踏切」(東京都渋谷区千駄ケ谷)
◆最寄り駅:代々木駅
JR代々木駅の最寄りに2カ所のみ残されるうちの1つがJR山手貨物線の青山街道踏切。昨年の11月30日に相鉄・JR直通線の開業により、相鉄の電車が新宿駅への乗入れを果たした。このことで遮断時間が長くなっている踏切だ。路線は山手貨物線。貨物線という名前だが、現在は、埼京線、湘南新宿ライン、そして成田エクスプレスといった特急列車などが多く走る路線となっている。
◇調査結果(調査日2020年1月20日)
通過列車数 | 南行(渋谷方面)19本 北行(新宿方面)19本 |
遮断機が閉じた回数 | 20回 |
遮断時間の合計 | 43分51秒 |
遮断時の平均時間 | 2分12秒 |
最長遮断時間 | 4分25秒(計測時間内)※9時以降まで遮断が続き計12分53秒となった。 (AM8時55分〜9時8分、通過列車数:南行2本、北行2本) |
開いた時間の合計 | 16分9秒 |
開いた時の平均時間 | 51秒 |
開いた時の最長時間 | 1分50秒(AM8時18分〜20分) |
朝9時までの調査時間内には、最長4分25秒だったものの、遮断機が閉まる状況が続き、遮断時間の合計は12分53秒となった。実はこの踏切が、今回、調査した踏切の中で最長時間を記録したことになる。ただ、この時は、通常時とは異なる事情があった。この日、新宿駅でホーム上の非常ボタンが押されるというトラブルが起った。そのため、山手貨物線、山手線などを走る全列車が路線上に、一時的に停車してしまった。
山手貨物線には、埼京線、りんかい線、東海道線、東北本線、相鉄線など多くの路線から列車が乗入れているだけに、どこか1路線でもトラブルや遅延が生じると、踏切が開かなくなってしまう可能性を秘めている。
近年になって、急に列車本数の増加した踏切だけに自治体、JR東日本の対応も遅れている。地下通路などができれば、一挙に問題解決できそうだが、線路沿いはビルが多く過密化している。その対応は難しそうに思われた。
【課題をまとめると】調査の結果を見て分かったことは?
ここからは5か所の踏切の調査を元にポイントを整理してみたい。本文中で解説したものも含める。調べからは、次のようなことが分かった。
①速度が速い列車が多く通過する踏切は遮断時間が短くなる
②列車の通過速度が遅い踏切は遮断時間が長くなりがち
③わずか1〜2秒の合間でも遮断機が開く踏切もある
④何らかの原因で遅延が生じると①②などの規則性が崩れる
⑤遮断中、無謀な横断は列車が通過する速度が遅い踏切で目立つ
遮断機が開く時間がわずか1〜2秒のみであっても、遮断機の遮断カンが完全に締切られるまでは、前述のように警報器が鳴り始めてから最大20秒の時間がある(あくまで締まり始めたら、早めに踏切内から出ることが肝心)。
ただし、この時間は片側一車線のやや広めの道の場合だ。遮断カン1本のみの小さい踏切や歩行者専用の踏切で計測したところ、12〜13秒間で閉まった。わずかな差だが、この時間は高齢者に、やや厳しいかも知れない。しかも細い道では、遮断カンが道幅きっちり造られている踏切が多く、通り抜けるすき間がない場合も見られる。体力に衰えが見える年代には、遮断カンを持ちあげる、またくぐるなどの動きを求めるのは酷かも知れない。
1〜2秒という開き時間が果たして、高齢化する社会に適合しているかどうかは、結論を出しづらい難い問題を含むようにも感じた。
【開かずの踏切解決策】解決するためには立体交差化がベスト
こうした開かずの踏切、そして踏切事故をなくす策はないのだろうか。踏切問題を解決するのには路線を高架化、もしくは地下化して立体交差にするのがベストである。だが、こうした高架化、地下化は工事費も多大で鉄道会社のみの努力だけでは進めることが出来ない。そのため「連続立体交差事業」という都市計画事業が、国、自治体、鉄道会社が協力して進められる。
この連続立体交差事業は、京王線をはじめ、東京都内では複数の箇所で進められている。GetNavi webでは機会をあらためてこの立体交差事業に関して取り上げる予定である。
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