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2020/2/9 18:30

半世紀にしてようやく!京王線の連続立体交差事業に見る「踏切問題」を解決する難しさ

〜〜「京王線(笹塚駅〜仙川駅間)連続立体交差事業」の計画そして今後〜〜

踏切事故は全国で約1日に1件が起り、約4日に1人が死亡している(国土交通省2015年調査)。さらに「開かずの踏切」も約500か所あるとされる。

 

踏切事故をなくし、円滑な道路交通を実現する方法の1つに、線路と道路を分ける立体交差化がある。現在、「連続立体交差事業」を進める京王電鉄京王線の例を見ながら、どのように計画が立てられ、工事が進められていくのか、「連続立体交差事業」の実態に迫ってみた。

 

※「笹塚駅」の「塚」は正しくは点付き
↑京王線の笹塚駅〜仙川駅間で連続立体交差事業が進む。完成後には25か所の踏切が消え、円滑な道路交通が実現される

 

【事業の概要】連続立体交差化で「開かずの踏切」25か所が消える

京王線の「連続立体交差事業」は、笹塚駅〜仙川駅間、約7.2kmが全線2線(複線)で高架化される。途中7つの駅を高架化、明大前駅、桜上水駅、千歳烏山駅が、ホーム2面で線路が4本という構造の駅になる。この連続立体交差化により25か所の踏切がすべて消える。工事は2022年度末までの予定だ(用地取得により延びる可能性あり)。

 

同区間は朝夕の列車本数が多く、25か所すべての踏切がピーク時1時間のうち40分以上閉まる「開かずの踏切」となっている。国土交通省では2016年4月12日に、改正踏切道改良促進法に基づき、全国58か所を「改良すべき踏切道」に指定した。京王線の笹塚駅〜仙川駅にある25か所すべてが、この改良すべき踏切道に指定されている。厳しい現実がこの路線にはあるわけだ。

↑京王線の踏切は朝夕の混雑が著しい。調べてみると50分以上の遮断時間が計測されたところも。近々の問題解決が求められていた

 

そうした指摘に対して以前から東京都、そして渋谷区、杉並区、世田谷区の沿線自治体、京王電鉄では対応を進めていた。「京王線(笹塚駅〜仙川駅間)連続立体交差事業」は2012年10月2日に都市計画が正式に決定され、2014年2月28日に都市計画事業認可を受け、事業に着手した。

 

【事業化の歴史①】半世紀前に決定した京王線同区間の都市計画

この区間の都市計画は、2012年の決定が最初ではない。笹塚駅〜仙川駅を含む区間の都市計画は1969(昭和44)年5月20日に、すでに決定していた。

 

当時の都市計画は、現在の都営地下鉄新宿線の江東区内から、西は調布市までの長大な計画で、路線距離は約29.3kmに及ぶ。京王線内では、新宿駅〜幡ヶ谷駅間と、八幡山駅付近、そして調布駅付近の連続立体交差事業は、すでに終了したものの、笹塚駅〜仙川駅間の連続立体交差化が残されていた(つつじヶ丘駅前後を除く)。

 

こうした経緯を振り返ってみても、都市計画がいかに時間のかかるものかが良く分かる。

↑工事区間では主に路線の南側の土地の取得が進む。沿線各所では左下のような東京都からのお知らせが立つ。写真は芦花公園駅付近

 

工事の開始にあたり、事業用地として、主に路線の南側の土地の取得が進められてきた。

 

ちなみに都市計画が立てられた後に、その都市計画範囲の土地では、建築できる家屋が制限されている(都市計画法第53条)。制約条件としては2階以上、そして地下階を設けないこととされる。京王線の工事区間には南側にそった区画には、高層化されていないマンションを随所に見かけるが、これはすでに1969年に都市計画が立てられていたためだ。

 

【事業化の歴史②】京王線の他工事区間の変りようを振り返る

京王線の連続立体交差事業としては、最近では調布駅の例がある。

 

調布駅付近連続立体交差事業では、京王電鉄京王線の柴崎駅〜西調布駅間、約2.8kmの区間と、相模原線の調布駅〜京王多摩川駅間、約0.9kmの区間を地下化することにより、18か所の踏切道を解消するとともに、8か所の都市計画道路を立体化する工事が進められた。これにより、国領駅(こくりょうえき)、布田駅(ふだえき)、調布駅が地下駅となった。調布駅は改札口を地下1階に、下りホームが地下2階に、上りホームが地下3階という構造の駅になった。

 

2002(平成14)年2月6日に都市計画が決定、2012年(平成24)年8月19日に地下駅へ切替えが終了し、2014年度に工事が完了している。最終的な事業費は約1100億円だった。

↑左2枚は地上駅だった2012年7月1日の調布駅。上は西側。下は東側からの撮影。東側は駅ビル「トリエ京王調布」が建ち同じ位置での撮影が難しくなっていた

 

この事業により、調布駅付近で起りがちだった道路渋滞の多くが解消している。

 

筆者は地下駅に切り替わる前の調布駅を東西の踏切から撮影していた。現在の調布駅の様子と比較してみると、その変りように改めて驚かされた。踏切があった場所を特定するために周囲のビルを目印に場所を探さなければいけないほどだった。

 

駅周辺に新たに生まれた広大な敷地を利用して、駅ビルなどの商業ビルが新築された。新たな街づくりが進められ、華やかな街に変貌していた。

 

【工事の進め方は?】下り線の高架化を優先して工事を進める

調布駅の例を見ると、踏切を廃止するだけでなく、街を大きく変える連続立体交差化事業。どのように工事が進められていくのか、およその工程を確認しよう。

 

下の基本的な工事手順の図を見ていただきたい。基本となる工事の順序を紹介すると……。まずは用地を取得した路線の南側を利用、②の地面を掘削、高架橋を支持する「基礎杭」と「土留杭」を設置する。すでにこの工事を開始した工区もある。

↑工事は現在の線路の南側の基礎工事から始まる。下り線用の高架部を造り線路を移し、次に上り線の工事が進められる(図版提供:京王電鉄)

 

さらに基礎杭、土留杭で基礎がためした上に③下り線の躯体(高架橋の構造物)を立てる。そして④地上を走っていた下り線を高架上に移動させる。⑤〜⑥は下り線と同様、上り線も同じ工程の工事となる。完成後には路線跡は街路として利用される。

 

今回の連続立体交差事業では、約7.2kmの事業区間が8つの工区にわけられた。そのうち代田橋駅前後の第1工区、明大前駅前後の第2工区、芦花公園駅(ろかこうえんえき)前後の第6工区、千歳烏山駅〜仙川駅間の第8工区の計4工区で2018年度からの鉄道工事に着手し、工事が進められている(下記地図を参照)。なお未着工の工区については、用地取得や道路整備の状況などを見ながら、着手時期を検討していくとされる。

↑笹塚駅〜仙川駅間の事業区間約7.2kmのうち、第1・第2そして第6・第8工区の工事が先に進められている

 

各工区ではどのような工事が進められているのか、見ていこう。基本的な工事の進め方は同じとはいうものの、隣接している道路、付帯する土地の状況などから工程の違いが見えてくる。

 

【路線の工事模様①】井ノ頭通りを南へ移設する工事が始まる

笹塚駅から西へ向かい、環七通りを越える付近からが、今回の連続立体交差事業の一番東側にあたる「第1工区」となる。

 

環七通りを過ぎるとすぐに代田橋駅となる。この代田橋駅からは地上駅が連なる。この代田橋駅の南口駅前には井ノ頭通りが通る。同区間は都道413号線の区間で交通量も多い。通りは東京都水道局の和田堀給水所と京王線の間を走る。

 

現在、井ノ頭通りは京王線の真横を通っている。工事のため、井ノ頭通りは和田堀給水所内に移設される。すでに給水所の敷地内では、通りを移設する工事が進められていた。さらに代田橋駅の北側では工事のための機材などを留め置く工事ヤードの整備も続けられていた。

↑工事区間の最も東側にある代田橋駅。駅構内での工事を進めやすくするように、線路を覆うように足場(木製覆工)が設置されている

 

↑京王線に平行して通る井ノ頭通り。通りを写真左側の和田堀給水所内に移設して、高架橋工事が進められる予定だ

 

【路線の工事模様②】明大前駅はホーム2面+4線でより便利に

井ノ頭通りは、この先、明大前駅の手前にある代田橋6号踏切で京王線を渡る。ここから明大前駅の先までが第2工区となる。

 

この工区は京王井の頭線と交差、さらに明大前駅の京王線の線路を現在の2本から4本に増やす計画がある。先に進められる4つの工区の中でも、井ノ頭通り沿いにあり、電車からも工事の進み具合が見通せる場所となっている。

↑井ノ頭通りが交差する代田橋6号踏切の最寄りでは、すでに高架橋をたてるための基礎杭を構築する工事が進められていた

 

↑明大前駅は上り下り1本しか線路がない。駅は南側に拡大され側線が設けられる。井の頭線との通路も広がりより使いやすくなる

 

高架化される明大前駅はホームが2面、線路が4本になり規模が大きくなる。より柔軟なダイヤ設定になることを希望したい。筆者は京王線沿線の住民だけに、便利になることは大歓迎だ。

 

【路線の工事模様③】事前に橋上駅化した芦花公園駅だったが

先に工事が進められる工区は、明大前駅からやや飛び、芦花公園駅前後の第6工区となる。この芦花公園駅。駅がカーブ上にあるため、見通しが悪い。そのため、ホーム上の安全確保を目的に駅係員が常時監視している。駅に隣接する踏切(八幡山2号踏切)もカーブ区間にあるため段差がある。そのため車高が低いクルマが底をする光景が良く見られる。

 

この第6工区では用地取得が早めに進んだこともあり、先に工事が進められることとなった。完成後はカーブにある駅ならではの問題も解消することになる。

↑工事区間では唯一の立体交差化された八幡山駅方面を見る。左上は環八通りと交差する京王線。留置線が芦花公園駅側に伸びている

 

芦花公園駅の東隣の八幡山駅は、駅近くで環八通りと交差する。すでに同駅区間のみ1970(昭和45)年に連続立体交差化されている。八幡山駅からは芦花公園方面へは折り返し電車用の引き上げ線(留置線)が設けられている。この引き上げ線はどうなるのだろう。八幡山の駅と高架橋部分はそのまま活かされるが、現在の引き上げ線は異なる姿での造り変えが行われる。

 

八幡山駅から芦花公園駅までの趣も、現在とは異なる姿に、変貌しそうである。

↑2010年に橋上駅となった芦花公園駅。連続立体交差事業では、橋上にある駅を撤去することが必要で手間がかかることが予想される

 

今回の都市計画の決定が、もう少し早ければ、無駄が省けたのにと思える第6工区の芦花公園駅だ。現在、芦花公園駅は橋上駅となっている。これは1日あたり利用者数が5000人以上の駅のバリアフリー化を図るという国の施策に基づき、2010年に橋上駅とされたもの。それまで地下通路があったものの、エレベーターなどの設置ができないことから橋上駅となった。

 

橋上駅は高架化するにあたり、変更に手間がかかる。芦花公園駅では、まずは上り・下り線に仮駅舎を設ける。そして地下通路を通す。そして橋上にある駅舎を撤去する。更に下り高架ホームと高架線を造り、次に上り高架ホーム(仮段階)と高架線を造り、最後に上り高架ホームの横幅を広げて工事が終了となる。

 

こうした駅の造り直しは、連続立体交差事業の大きなポイントのように感じた。

 

【路線の工事模様④】仙川橋梁までが今回の工事区間となる

2018年度に工事が始められた工区の最も西側にあるのが第8工区だ。千歳烏山駅の西にある千歳烏山2号踏切から仙川橋梁までの区間となる。この区間はほぼ直線区間で、用地の取得も進んでいる。高架化用の基礎杭を打つ工事などもすでに行われている。

↑千歳烏山駅〜仙川駅間の工事の様子。工事用車を停めるスペースと線路上を通すための足場(木製覆工)、基礎杭の構築などが進む

 

京王線(笹塚駅〜仙川駅間)連続立体交差事業は2022年度末を目処に工事を終了させる予定としている。

 

とはいえ、用地の取得状況では変更となることもあるとされる。都市計画というのは、計画されてから非常に長い期間が必要であることが理解できた。踏切をなくすという理想も、なかなかひと筋縄ではいかないわけである。

 

【路線の工事模様⑤】完成後のイメージ図がすでに発表される

最後に完成後の駅のイメージを見ていこう。すでに今回の事業で大きく変る7駅の外観デザインが、2019年5月30日に発表された。駅舎デザインのアイデア、そして意見を広く集め決定されたものだ。

 

地域に縁の深いテーマをデザインに盛り込むなど、新しい駅らしいデザインとなっている。たとえば、代田橋駅は近くを流れていた玉川上水の流れを感じられるデザインとされる。桜上水駅は静かな住宅街との共存するデザインということで木質調の自然と調和する柔らかな配色となった。

 

工事中は何かと不便なことが生じるかも知れない。とはいえ、完成後には調布駅の例のように、街が大きく変って変貌していく。

 

さらに高架橋の脇には道路が整備されて便利になる。この道は災害が起きた時にも避難路として有効に活かされることになるだろう。どのように街が変化していくのか完成する日を楽しみにしたい。

 

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