〜〜令和元年秋からこの春にお目見えの「新車情報」〜〜
ここ数年、訪日外国人の増加に対応した新型車両が多く登場してきた。JRグループも発足から30年以上を迎え、新型車両へ切り替える動きが強まっている。
今回は令和2年春に登場した新型車両をメインに、少し遡り、令和元年秋に導入された車両も含めて紹介。その1回目として東日本を中心に新型車両を紹介しよう。外に出歩き難いムードが続くものの、騒ぎがひと段落したら、ぜひとも乗ってみたい車両ばかりだ。
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JR北海道H100形気動車
—2020年3月14日運転開始—
キハ150形に代わり函館本線(山線区間)に投入
JR北海道が導入した新型気動車。愛称は「DECMO(デクモ)」だ(Diesel Electric Car with MOtorsの略)。JR東日本のGV-E400系気動車と基本性能が同一で、寒冷地の北海道を走るために、酷寒地対策が施されている。
H100形はJR北海道初のディーゼル・エレクトリック車でもある。ディーゼル・エレクトリック車とは、ディーゼルエンジンで発電機を駆動させ、生まれた電気で走る車両のことを指す。ディーゼルエンジンを回して走る車両に比べて、変速機いらずで速度の加減がしやすく、経済的にも優れている。
JR北海道では、前例がない車両ということもあり、北海道新幹線用のH5系に続き、形式名の頭に「H」が付く車両となった。
導入は、函館本線の山線区間と呼ばれる小樽駅〜長万部駅(おしゃまんべえき)間がメインとなった。同区間は、これまでキハ150形が走ってきたが、今後はH100形が同線のメイン車両となる。将来はH100形が道内各線用に60両の投入が予定されている。増備により、キハ150形は別線区に移り、その影響を受けて国鉄時代に生まれたキハ40形の一部が引退することになりそうだ。
JR東日本HB-E300系気動車「海里(KAIRI)」
—2019年10月5日運行開始—
485系観光列車「きらきらうえつ」に代わって登場!
日本海沿いを走る羽越本線。2001年から観光列車「きらきらうえつ」が走り人気となっていた。とはいえ、485系という国鉄当時に生まれた特急型交直流電車をリメイクして走らせていただけに、老朽化が目立ってきていた。「きらきらうえつ」は2019年9月29日で運行終了。代わって登場したのが観光列車「海里(KAIRI)」だ。ベースはHB-E300系というハイブリッド気動車で、すでに五能線を走る「リゾートしらかみ」などで使われている。
海里は週末を中心に、主に新潟駅〜酒田駅間を快速列車として往復。車窓から「笹川流れ」といった日本海沿いの景勝地を眺めながら走る。通常の2人掛けのリクライニングシート30席に加えて、4人グループ用のコンパートメントシート32席や、売店・イベントスペース、新潟や庄内の食が楽しめるダイニング24席を備えている。
首都圏新都市鉄道TX-3000系電車
—2020年3月14日運行開始—
つくばエクスプレス開業以来の新系列電車が登場!
秋葉原駅(東京都)とつくば駅(茨城県)間を結ぶ首都圏新都市鉄道。つくばエクスプレスの名前で親しまれる。2005年8月24日に開業し、これまで車両はTX-1000系直流電車と、TX-2000系交直流電車が使われてきた。
路線が開業してからちょうど15年、TX-2000系の増備はあったもののこれまで2形式のみが使われてきた。そんなつくばエクスプレスの新造車両として登場したのがTX-3000系交直流電車だ。
車両はアルミダブルスキン構体の車体に赤と青の鮮やかなカラーがアクセントとして入る。さらに正面は傾斜を強めたスタイルとなった。従来の車両にくらべて、よりスタイリッシュになった印象だ。大窓にはUVカットのグリーンガラスを採用、紫外線を抑制する効果を持つ。さらに主制御装置にSiC素子を使うことで、消費電力の13%程度の削減を実現した。
ちなみにつくばエクスプレスは、秋葉原駅〜守屋駅間が直流電化、守谷駅〜つくば駅間が交流電化されている。これは茨城県内に気象庁の地磁気観測所があるため。直流電化した鉄道では漏洩(ろうえい)した電流が遠くまで伝わり、観測に支障が出るとされている。
電化方式が異なる両区間を走ることができる交直流電車のTX-3000系。3月のダイヤ改正に合わせて5編成30両が導入され、朝夕を中心に運用されている。
京成電鉄3100形電車
—2019年10月26日運行開始—
成田スカイアクセスの新時代到来を告げる新型電車
これまで京成電鉄といえば、車体にブルーのラインが入る電車が主流だった。成田スカイアクセス線用に登場した新型3100形は、成田スカイアクセスの案内カラー、オレンジラインを基調としている。正面はオレンジの配色とともにガラス窓の周囲がつや消しブラック、独特の形状の前照灯が特徴となっている。運転席の窓下や、車体側面には飛行機のイラスト。ほか車体側面には成田山新勝寺、雷門とスカイツリーなど沿線の観光地のイラストがラッピングされた。
座席は通常よりも背もたれが高いハイバック仕様となり座り心地が向上した。空港アクセス車両らしく、座席の一部はスーツケースの置き場に使えるように折り畳み式が取り入れられた。また最新技術の導入により、主力の3000形に比べて消費電力の約15%削減を可能とした。
2019年度はひとまず8両2編成、計16両を導入。2020年度以降も徐々に増備される予定となっている。
新京成電鉄80000形電車
—2019年12月27日運行開始—
京成新車と同形電車がピンク塗装でよりお洒落に
京成グループの一員、新京成電鉄にも新型80000形電車が導入された。新京成では14年ぶりの新車の導入となる。この80000形、写真を見てお分かりのように、京成電鉄3100形と同形で、両社で共同設計された車両だ。「京成グループ標準車両」として生み出され、今後は両社ともに同形の新型が増備される。
とはいえ、京成電鉄のオレンジラインと、新京成電鉄のピンク色が基調の車体カラーでは、イメージが大きく変わりおもしろい。好みは人それぞれだろうが、どちらも華やかで新鮮なイメージが上手く引き出しているように感じる。
2019年の暮れに導入された80000形は6両1編成のみで、主に平日、津田沼駅〜松戸駅の同社線内のみで運行されている(運用情報によると土曜・日曜日は運行されない傾向が見られる)。
小田急電鉄5000形
—2020年3月26日運行開始—
流線型スタイルで通勤電車もよりスタイリッシュに
小田急電鉄の12年ぶりの新型通勤電車として登場したのが「5000形」。これまでの小田急の通勤電車の正面といえば、平坦な切妻タイプが主流だったのに対して、新車は先端に出っ張りを持つ独特な“流線型スタイル”となった。
「より広く、より快適に」がキーワードで、車幅は2900mm。従来の主力車両の3000形が2786mm、4000形が2790mmだったのに対して車幅が100mm以上も広くなっている。外から見ても車体はスソを絞り、上部が広がる形状をしていることが良く分かる。また車内の仕切りなどに強化ガラスを使い、より広く感じられるように工夫された。
3月26日に走り始めたのは1編成10両のみとまだまだ貴重な存在だ。運転区間は限られておらず、同社線内をくまなく走っている。2020年度には5編成50両が増備されることもあり、巡りあえるチャンスは格段にアップしそうだ。
小田急の通勤電車といえば、以前はクリーム色の車体で、青ラインが入るというスタイルが定番だった。現在この塗装車は8000形が残るのみとなっている。伝統色を残す8000形も今後は少しずつ新車に置き換えられていくことになりそうだ。
東急3020系電車
—2019年11月22日運行開始—
目黒線+東京メトロ南北線・都営三田線乗入れ車両
東急では各路線用に新型通勤電車の導入を活発化させている。に2018年3月28日には田園都市線用の2020系と、大井町線用6020系が導入された。そして昨秋の2019年11月22日、目黒線用の新車、3020系がデビューした。
3タイプは同形車両で、軽量ステンレスのシルバーの車体をベースに、正面がブラック&ホワイト、また車体上部がホワイトに塗り分け。加えて走る路線のラインカラーが入る。他社の新車が鋭いイメージをした正面デザインや、細目、また鋭い形の前照灯を取り入れているのに対して、東急の新車は正面がやわらかい形状、そして丸い前照灯を採用した。このあたり、会社によって、はっきりとした違いが出ていることもおもしろい。
昨秋、目黒線用に導入されたのは6両3編成。すでに目黒線内だけでなく、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道。さらに都営三田線にも乗入れている。
3020系は2022年度に開業する相鉄・東急直通線も走る予定だ。現在は6両編成だが、同線の開業時には2両増結されて、8両編成となる。同新車が日吉駅から新横浜駅(仮称)を経由して、相模鉄道へ乗り入れることになりそうだ。
JR東日本E261系電車 特急「サフィール踊り子」
—2020年3月14日運行開始—
スーパービュー踊り子に代わって登場した豪華特急
首都圏と伊豆半島を結ぶ特急列車といえば「踊り子」。中でも251系「スーパービュー踊り子」はハイデッカー車両で展望が優れ人気を集めた。とはいえ車両が生まれてすでに30年たち、さらに海沿いを走るために、海水を浴び続けてきたこともあり老朽化が進んでいた。
この車両の代わり登場したのがE261系である。そして「スーパービュー踊り子」という特急名が消え、新たにE261系が「サフィール踊り子」として走り始めた。サフィールとは「サファイヤ」を意味するフランス語で、「宝石のサファイヤのように青く輝く美しい伊豆の海と空をイメージ」、「上質・高級で優雅な旅を楽しんでもらいたい」としている。
E261系は8両編成で全座席がグリーン車。そのうち4両の座席が2列+1列シート。2両がグリーン個室(1〜6名用)車両で、1両が1+1列のゆったりした座席のプレミアムグリーン車となっている。さらにカフェテリア1両を連結、車内でヌードルメニューが楽しめる。
3月14日に登場したのは8両2編成の計16両で、東京駅〜伊豆急下田駅を1往復。加えて土・休日+特定日には東京駅(もしくは新宿駅)発着の列車が1往復運転されている。
JR東日本E257系2000・2500番台 特急「踊り子」
—2020年3月14日運行開始—
中央本線から東海道本線へ職場替えしたリニューアル車両
「スーパービュー踊り子」は、最多で5往復走った。「サフィール踊り子」の2往復を補う形で走り始めたのが、E257系リニューアル車を使った特急「踊り子」だ。
E257系といえば中央本線の特急「あずさ」や「かいじ」、さらに房総半島を走り続けてきた特急車両。同路線には新型車の導入および、減便もあり、そこで使われなくなったE257系をリニューアルして特急「踊り子」用に投入した。2形式造られ、9両編成はE257系2000番台に、5両編成は2500番台とした。
リニューアル車と言って侮るなかれ。シートは青を基調にしたモケット生地にすべて交換され、座席窓側に電源コンセントが新設された。車内にはフリースペースや、バリアフリー対応のトイレも設けられた。
E257系リニューアル車は9両×13編成、5両×4編成、計137両が用意される予定だ。特急「踊り子」は伊豆急行線に加えて、伊豆箱根鉄道駿豆線へ乗入れ、修善寺駅まで走っている。E257系「踊り子」は、制御方式や車両の長さの問題からこの春、伊豆箱根鉄道駿豆への乗入れを果たしていない。しかし、車両と地上設備の調整が完了し、近い将来には伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅まで走ることも予想される。
乗入れを果たした時に、いよいよJR東日本で唯一オリジナルな姿で走る国鉄形特急電車185系の終焉が、一歩近づいたということになるのだろう。
名古屋鉄道9500系電車
—2019年12月1日運行開始—
キリリ顔!スタイリッシュな名鉄通勤電車
名古屋鉄道(名鉄)の通勤形電車といえば、名鉄カラー「スカーレットレッド」の一色塗装でおなじみだった。そんな名鉄の車両も近年、徐々に銀色のステンレス車両が増えつつあった。
2019年の暮れに登場した新型9500系電車。レッド=名鉄のイメージを強く印象づける車両である。車体ベースこそ、ステンレス製で銀色だが、正面は下部の排障器に至るまでレッド、中央、窓周りのブラック塗装でイメージを引き締める。さらにシャープな形の前照灯で、“キリリ顔”をより印象づけた。
扉の上には4か国語に対応した車内案内表示を装備して訪日外国人に対応。さらに名鉄の通勤形車両で初となる「MEITETSU FREE Wi-Fi」に対応した。安全に配慮した装備として扉開閉動作表示灯を設置し、扉の開閉時には赤色LEDが点灯し、利用者に注意をうながす工夫も取り入れられた。
2019年度には4両×4編成を導入。すでに名古屋本線や犬山線、空港線などを走り始めている。
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