〜〜4月・5月の鉄道各社の感染症への対応状況とその影響〜〜
新型コロナウイルス感染症が大変な広がりを見せている。緊急事態宣言が全国に拡大され、外出を自粛する動きがさらに広まってきた。
たとえ“非常時”であっても鉄道会社は電車、列車を動かさなければいけない。公共交通機関の宿命だが、JRを含めて、ほとんどが民間企業となった現在、長引けば鉄道会社の経営を圧迫する。ゴールデンウィークの期間を含め減便する動きも強まってきた。ここで全国の主な鉄道事業者の感染症への対応状況と、関連事業まで広がる影響にチェックしておきたい。
*データは4月16日現在。運休、減便が増える可能性がありますのでご注意ください。
【苦悩する鉄道①】渋谷駅利用9割減は歓迎すべきその一方で
国から緊急事態宣言が発令された最初の土曜日(4月11日)、電車の利用者が大幅に減少した。JR東日本の渋谷駅の利用者(定期券以外)は前の週に比べて9割減と伝えられている。
減少ぶりは東西でほぼ変わりない。JR西日本から発表された数字では、大阪駅の11日〜12日の利用状況は前年の12%となっている。12%減ではない。12%なのである。この数字は、感染症対策の上では歓迎すべき数字であろう。ところが、鉄道会社の側からみれば、非常に頭の痛いことになる。
現状、大都市圏を走る電車は、通常時とほぼ変わらずに運行されている。
減便しない理由として、“感染リスクを減らすために、満員電車をなくしてほしい”という「社会的要請」が大きい。そのために朝夕の一部の電車を除いて、通常時と比べてほぼ1割しか乗っていない状況も起きてきている。日中は“がら空き”電車が多くなりつつある。
鉄道会社の売上のうち、およそ四分の一(JR東日本の場合、約27%とされる)は定期券収入が占めている。この一定の収入が確保されているので、短期間であれば、持ちこたえることが可能となる。このあたり航空会社のように利用者減=収入減と直結しない。
ところが長期にわたるとなると、話は変わる。定期券の途中解約もしくは、購買の見合わせということが起こり始め、収入の減少に直結するようになる。電車を動かすにしても、電気代そのほか、経費がかかっているわけで、この状態が長引けば、それだけ経営も厳しさを増していく。
すでに鉄道各社もこうした状況に対応し始めている。今のところ通勤・通学の足は変わらず走っているが、出張および、観光利用が多い列車は大幅に減便が進んでいる。どのような列車が減便となっているのか、確認しておきたい。
【苦悩する鉄道②】東海道新幹線は臨時「のぞみ」全列車が減便
まずは新幹線の減便状況を見ていこう。
◇東海道新幹線
最初に東海道新幹線。4月24日(金曜日)以降5月6日までの期間、臨時「のぞみ」を運休させる。そのため1日平均約100本が運休となる。全体の2割強の列車を運休させるというのだから、かなり思い切った策である。ダイヤなど詳細は4月20日(月曜日)に発表される予定なのでご注意いただきたい。
ちなみに東海道新幹線内を走る「ひかり」「こだま」の減便に関しては触れられていない。遠方へ向かう利用者が多い臨時「のぞみ」から減らそうという試みだ。
◇山陽新幹線
山陽新幹線では、東海道新幹線の減便と合わせて、GW期間中を中心に運行が予定されていた臨時「のぞみ」のほか、新大阪駅〜鹿児島中央駅間を結ぶ臨時「さくら」。新大阪駅〜博多駅(一部は広島駅)間を結ぶ臨時「ひかり」も減便される。減便される期間は5月31日までの予定となっている。
◇九州新幹線
気になるのは九州新幹線の現状だ。山陽新幹線と相互乗入れが行われる臨時「さくら」は、JR西日本に合わせて運休となる。そのほか自社線区間にあたる博多駅〜熊本駅間を走る定期列車「つばめ」の土・日曜日、GW期間を中心にかなりの減便が予定されている。一部の列車は5月31日までの運休予定だ。「つばめ」は30分〜1時間おきに運行されていた。「つばめ」の減便で、「さくら」が停車しない新大牟田駅、新玉名駅など通過する駅の利用者は不便になりそうだ。新幹線の定期列車の運休は同社のみなので注目したいところだ。
◇東北・上越新幹線ほか
JR東日本が運行する各新幹線の列車の状況はどうだろうか。
GW期間中を中心に運行される予定だった東北・北海道新幹線の臨時「はやぶさ」「はやて」「やまびこ」「なすの」の計328本。同じくGW期間中を中心に秋田新幹線の臨時「こまち」を計99本、山形新幹線の臨時「つばさ」が計163本、上越新幹線「とき」「たにがわ」が計165本、北陸新幹線「かがやき」「はくたか」「あさま」の計303本の臨時便の運休が決まった。すでに上越新幹線を走る「現美新幹線」の運休も発表されているので、これまでに例を見ない規模といって良いだろう。
これらの減便情報は4月17日まで発表された情報をまとめたもの。間近になり、さらに減便される可能性も出てきているのでご注意いただきたい。
【苦悩する鉄道③】JR三島会社は定期運行の一部特急を運休
在来線の対応はどのような状況なのだろう。通勤・通学の足は、通常通りの運行が続けられている。一部の鉄道路線の減便が始まっているが、これは後述したい。まずは特急列車の運行状況から。
JR東日本、JR東海、JR西日本ではすでにGWを中心に臨時特急列車の運行を取りやめることを発表している。一方で、気になるのはJR三島会社の動きだ。JR三島とは、JR北海道、JR四国、JR九州のことを指す。本州三社に比べて事業規模が小さく、さらに閑散路線が多いことで、国鉄民営化当初から非常に難しいかじ取りが危惧された。
本州に路線網を持つJR三社からは現状、定期運行されている特急の減便は発表されていない。一方、JR三島各社からは、定期運行している特急の一部運休が発表されている。内容を見ておこう。
◇JR北海道
すでに5月6日まで期間、次の列車が減便・減車が発表されている。
札幌駅〜旭川駅間を走る「ライラック」「カムイ」が計10本、札幌駅〜室蘭駅間を走る「すずらん」が4月23日まで計6本、以降5月6日まで計4本。札幌駅〜函館駅間を走る「北斗」の計4本が減便される予定だ。
さらに車両数を減らす列車も出てきている。札幌駅〜釧路駅間を走る「おおぞら」は6両編成から5両編成に減車される。札幌駅〜函館駅を走る「北斗」も通常の7両編成から、5〜6両編成に減車される。「カムイ」も一部列車が6両編成から5両編成に減車される。
まさに苦肉の策といった様子が窺える。5月7日以降も減便、減車の予定で、指定席の発売が中止されている。
◇JR四国
現在のところ、利用者が多い土讃線や、予讃線の高松駅〜松山駅間を走る特急の減便は発表されていない。一方で、予讃線・松山駅〜宇和島駅間を走る「宇和海」の1往復、高徳線の高松駅〜徳島駅間を走る「うずしお」の1往復、徳島線を走る「剣山(つるぎさん)」の1往復が5月17日までの運休が発表されている。
◇JR九州
三島会社の中でも特急列車の大幅な減便を予定しているのがJR九州だ。土・日曜日、GW期間に走る臨時列車に加えて、多くの定期列車も運休される。
4月24日〜5月31日に走る博多駅〜長崎駅間を走る「かもめ」が計330本、博多駅〜佐世保駅間を走る「みどり」「九十九島みどり」が計228本、主に博多駅〜大分駅間を結ぶ「ソニック」が計610本、大分駅〜南宮崎駅を結ぶ「にちりん」が計250本、ほか「ハウステンボス」が計596本、「きらめき」が計243本、「きりしま」が計178本、「ひゅうが」計92本、「かいおう」計46本といった具合。こうした特急列車の計2573本が運休となる予定だ。このほか区間運休となる特急列車も数多い。
それ以外に人気となっている観光特急の「ゆふいんの森」や「指宿のたまて箱」「海幸山幸」といった列車も大幅に減便の予定だ。いずれも土・日曜日、休日に運休となる列車が大半だが、まさに予想外の状況となりつつある。
大手私鉄の特急は京阪電気鉄道、西日本鉄道など一部の会社が特急列車の減便や運休を発表しているが、そのほかの大手私鉄では現状まではJRほど大きな動きは報告されていない。とはいえ観光利用が多い座席指定制の特急列車は利用者が大幅に減少しているだけに、いずれ減便といった流れが起る可能性が予想される。
【苦悩する鉄道④】通勤電車では窓開け対策をあの手この手でPR
大都市圏の平日の通勤・通学の足は通常通りの運行が続けられている。すでにお気付きのように、3月の初旬から各社では窓開けをうながすアナウンスが駅や、車内で行われている。ある駅構内でのアナウンスは次のようなものだ。
「新型コロナウィルス感染予防のお願いです。車内換気のため、全車両で複数個所の窓開けを実施しています。恐れ入りますが、お近くの窓をお開けいただき……(後略)」というアナウンスが繰り返し行われている。
さらに各車両の吊り広告や、車内に設置された液晶ディスプレーで、「車内窓開けのお願い」を目にするようになった。この窓開けにより、少しでも感染を防ごうと協力する姿が、ごく普通に見られるようになってきた。
こうした「車内窓開けのお願い」の一方で、窓が開かない車両も走っている。もちろん新幹線など高速で走る列車は窓が開かない。こうした列車の換気はどのようになっているのだろう。
窓が開かない車両には、常に換気する装置が付いている。ベンチレーターと総称される装置で、車内の汚れた空気を風圧により吸い出し、外気を吸い込んで室内へ流す仕組みだ。新幹線や特急では7分前後で車内空気の入れ換えが行われている。最近は、心配する乗客を配慮して、「これから換気装置により、外気を取り入れ」というアナウンスを聞くことも多くなっている。
こうした換気により、多少の冷気が入り、車内は温度が下がりがちになる。寒がりの筆者にとっては、ややつらい時もあるが、感染症対策に少し役立てば歓迎したいところだ。
換気の促進はどのような効果があるのか。感染症の専門家は、車内の換気がどの程度の予防効果があるかは、「分からない」という声が多い。とはいえ、換気しないよどんだ空気よりも、換気した方がはるかに良いことは確かなようである。また感染の可能性がある通勤電車内では、ストレスを軽減する意味でも窓開けの効果は大きいように思われる。
【苦悩する鉄道⑤】通勤・通学の足も週末は減便の流れが強まる?
これまで大都市内の路線では曜日にかかわらず通常のダイヤが守られてきた。ところが、これも今後は変わる可能性が出てきた。
まずは大阪でそうした動きが見られた。大阪市内を走る大阪メトロでは、4月11日〜12日の週末に、御堂筋線など多くの路線で2割程度の減便が行われ、注目された。週明けには「外出抑制には一定の効果があった」という報道が行われた。4割以上の乗客が減少したとされる。18日・19日の週末も運行本数を2割程度減らすことが16日に発表された。心配されるような乗客の集中による混雑は見られなかったということなのだろう。
こうした減便はJR北海道とJR九州の路線でも発表されている。JR北海道では5月16日〜31日間、札幌駅〜新千歳空港駅感を結ぶ「快速エアポート」の8往復減便を発表した。
JR九州では、鹿児島本線の門司港駅〜久留米駅間を走る快速列車を中心に計96本が運休、また区間運休される列車が出ている。ほか福北ゆたか線の博多駅〜直方駅(のおがたえき)間を走る快速・普通列車を中心に計188本、筑肥線の筑前前原駅〜西唐津駅間で計80本が運休される。いずれも4月18日から5月10日の土・日曜日、休日の運休本数で、今後、他路線にも波及する怖れが出てきた。
JR北海道やJR九州の実施例は、大阪メトロのように、全国ニュースでは報道はされてはいないものの、自然災害以外で、こうした普通列車が運休されるケースは、JRグループの中では異例のことと言って良いだろう。
【苦悩する鉄道⑥】各地を走る観光列車がほぼ運行休止に
他に注目したいのは、観光列車の減便状況だ。JR各社のみならず、大手私鉄、地方私鉄、第3セクター鉄道にいたるまで、少なくとも5月の連休明けまで、ほぼすべての観光列車が走らない。鉄道ファンに人気のSL牽引の列車まですべてだ。豪華さを売りにしたクルーズトレインも運休となる。乗車を楽しみにしていた人にとって大変に残念なことだろう。
観光列車は、地方の観光振興に一役かっている。一部は、普通列車の運行の少なさを補完する役割をする列車もある。
例えばJR五能線を走る「リゾートしらかみ」。五能線は日中の普通列車が3時間〜6時間、走らない区間がある。運賃以外に指定席料金(530円)が必要となるものの、閑散区間では大切な移動手段として使われてきた。この減便により不便さがますます増していく。非常時とはいえ、一部のローカル線にとってはつらい状況が訪れている。
人気で、予約が集中した観光列車も多かった。新型感染症のためとはいえ、せっかく盛り上がった観光列車人気に水を差すことにならないことを祈りたい。
この観光列車の運休はひとまず5月末までというところが多い。JR北海道の観光列車「くしろ湿原ノロッコ」号などでは、6月に運行の予定となっているが、指定席の発売を当面見合わせるとしている。終息が見えないだけに、各社ともこうした対応を取らざるを得ない状況となっている。
【苦悩する鉄道⑦】駅なか施設や車内売りも大きな打撃に
鉄道会社の本業はもちろん旅客輸送だが、それ以外の事業も各社幅広く行っている。そうした事業の中で、今回の新型感染症の大きな影響を受けたのが、駅なか事業であろう。駅そば店などの飲食業は、貸店舗も含め、状況は厳しい。
例えば小田急沿線の駅などに出店しているそば店「名代 箱根そば」は、小田急電鉄の関連会社、小田急レストランシステムが運営している。同店舗の営業状況を見ると、4月13日以降、平日は新宿西口、登戸、町田、小田原といった一部の店は営業しているものの、15時もしくは18時までの営業で終了(通常時は22時前後まで営業)、ほか休業している店舗が多い。週末の土曜・日曜日はほとんどの店舗が休業となる(変更される場合もあり注意)。
JR東日本の関連会社のJR東日本フーズでは、駅構内でその名もずばり「驛そば」、「いろり庵きらく」、「大江戸そば」という名称でそば・うどんを提供している。現状、大半の店が19時までの時短営業、土日・祝日は休業という店舗が多くなっている。
忙しいビジネスマンにとって気軽に立ち寄れる食事処だけに、残念なところである。
駅なか事業とともに、新幹線や特急列車の車内で行われる車内販売も鉄道会社にとっては欠かせない事業となっている。対応状況を見ると、東海道新幹線は車内販売を続けるものの、山陽・九州新幹線は車内販売を自粛。JR東日本の新幹線路線も、車内販売を当面見合わせる、としている。鉄道会社は、ほかにもホテル事業や、さまざまな事業展開を行っている。旅行関連事業など、今回の騒ぎで、その影響は深刻なものになりつつある。
【苦悩する鉄道⑧】車内の中づり広告もスカスカの状態に
通勤電車では、窓開けのほか一つの変化が見られ始めた。それは車内広告だ。車内広告は天井から吊られているのが「中づり」、窓の上部分が「まど上」。乗降ドアの周囲は「ドア横」、「ドア上」とよばれる。
こうした車内広告が明らかに減っている。「まど上」は一角、広告がない車両を多く見かけるようになってきた。
また天井からつりさげられる「中づり」にも変化が。企業広告は減り、多くが「自社広告」。つまり鉄道会社の関連企業の広告やリクルート広告が目立つようになってきた。団体や協会といった公共性が高い広告も目に付く。都営地下鉄の場合は、関連企業がほぼないこともあり、都バス関連の広告やマナー喚起といった広告が目立つ。
中づり広告は短いものは2〜3日、長くても1〜2週間単位での契約が多い。ちなみに「電車内ビジョン広告」とよばれる液晶ディスプレーを使った広告は、1週間〜20数週間といった契約期間が長いものが多いため、企業広告もまだ流されているようだ。
広告の出稿量は景気の動向に左右されやすい。鉄道車両内の広告は、乗客の目に直接触れるだけに、効果が大きいと言われる。しかし現状、電車の利用者が激減している。企業はこうした傾向に敏感に反応する。そして広告の出稿を抑える。
車内広告は短期間の契約が多いだけに、その影響をすぐに受けたわけだ。鉄道会社にとって、運賃収入の減少とともに、こうした目に見え難い部分の収入も減るという状況に陥りつつある。
【苦悩する鉄道⑨】より脆弱な地方鉄道の今後が危ぶまれる
2020年4月10日、JR西日本の長谷川一明社長の定例会見で次のような報告が行われた。
「経営環境としては、当社として未だかつて経験したことのない、極めて厳しい状況です」。
収入の推移がその厳しさを物語っている。JR西日本の3月の収入は対前年の56.3%、新幹線、在来線特急の利用は前年の5割を切っている。さらに同報告が行われる直前の4月の7日間の収入は対前年40.8%といった具合だ。4月7日に国の緊急事態宣言が出される前の数字で、これ以降は、さらに収入悪化したことが推測される。
JR西日本の社長がいだく思いはすべての鉄道会社に共通する思いであろう。
余力のある鉄道会社は何とか、ある程度の期間はしのぐことも可能であろう。社債やコマーシャルペーパー(CP)を発行して減収分を補う会社の例も見られる。しかし、地方鉄道はそうした余力がない。
すでに静岡県を走る大井川鐵道では井川線(いかわせん)の千頭駅(せんずえき)〜井川駅間の5月8日まで運休すると発表された。井川線は、観光客の利用が多いとは言え、運休というのは思い切った手段である。またJR西日本の関連会社が運行する嵯峨野鉄道のトロッコ列車も5月8日まで運転を見合わせるとしている。
またGW期間中に廃止の予定だったJR北海道の札沼線(さっしょうせん/廃止区間は石狩当別駅〜新十津川駅間)は最終運転を前倒しすることとなった。4月17日の新十津川駅10時発を最終運転として、以降の列車は完全運休する。さらにJR北海道では5月から従業員の約2割の一時帰休を実施すると発表している。
終息がなかなか見えてこないなか、大都市圏を含め鉄道会社を取り巻く環境が、今後一層、厳しくなっていくことが予想される。国民への一時金の支給が取り沙汰されている一方で、鉄道会社のような公共インフラを支える企業への支援は、これまで取り上げられたという話は聞こえてこない。大切な公共インフラを守るためにも、考慮すべき時が近づいてきたのではなかろうか。
【苦悩する鉄道⑩】一筋の光明? JR貨物は黙々と貨物輸送に励む
JRグループの中で唯一、列車も運休させずに、黙々と列車を走らせ続けているのがJR貨物だ。4月7日に発表されたニュースリリースでは、「当社としては、物流を担う指定公共機関として、利用運送事業者の皆さま等と協力して引き続き貨物列車の運行を確保し、社会・経済への影響を最小化するとともに、緊急物資の輸送要請を受けた時は、それを最優先とするよう、努めてまいります」と頼もしい。
そんなJR貨物も影響が皆無というわけではない。2020年3月のコンテナ輸送量は対前年比93.5%、4月は13日までで、対前年89.7%となっている。行き交う貨物列車を見ても、コンテナを積んでいない貨車が目につく。
とはいえ輸送量の極端な落ち込みは見せていない。外出の自粛が長引くに伴い、宅配便の輸送量が増加しているなど、貨物輸送にとってプラス要素もある。旅客各社が苦しむ中で一筋の光明である。鉄道貨物の輸送が絶えない限り、まだ日本経済の根幹は朽ちていないことを物語る。
鉄道旅客各社にしても一部に社員の一部を休ませる「一時帰休」が行われ始めている。幸い鉄道会社の社内で、大規模なクラスター感染が報告されていない。やはり鉄道を支える人たちの日々の細心の注意が、こうした好結果をもたらしているのであろう。
海外では人々の健康や暮らしを支えるために、自宅外に出て働く人たちを「エッセンシャル・ワーカー」と呼ぶ。感染拡大が広まるなかでそうした頑張る人たちを讃えている。日本国内でも鉄道の運行を支える「エッセンシャル・ワーカー」が、底力で持ちこたえ、鉄道の運行を支える限り、いつか、光が見えて来るに違いない。そしてその時が少しでも早く訪れることを祈りたい。
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