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2020/4/24 21:00

新型「フィット」はどこが変わった? 3つの進化で読み解く「キャラ変更」の中身

【変化②】柔らかくしなやかな乗り心地を実現

次に、大きな変化が感じられたのが乗り心地。走り出してすぐに、足回りがしなやかによく動くことが伝わってきます。フロントサスペンションのフリクションを従来の半分まで低減し、初期から素早く動くようになっていることの効果でしょう。従来のホンダ車が、どちらかというとしっかりと路面にタイヤを押し付けるようなサスペンション特性だったことからすると、ずいぶんカドが取れて柔らかくなっている印象です。

↑段差を越えた際などの当たりが柔らかく、人にやさしい乗り心地になっている印象

 

柔らかいとはいっても、フワフワと頼りない感覚ではなく、高速域では剛性を増したボディによって安定性は高まっており、安心してドライブできます。ボディがしっかりした分、サスペンションはよく動いて細かい振動を吸収してくれるような特性です。

 

聞けば、乗り心地のベンチマークになっているのはシトロエンの「C3」とのこと。従来のホンダ車がドイツ車的な乗り心地だったことからすると、大きな方向性のシフトに感じられました。

↑高速走行時の剛性感や安定感は従来モデルよりも高まっていて、不安感はありません

 

もう1つ、乗り心地の向上に効いていると感じたのがシート。座り心地が良く、やさしく体を包み込むようにホールドしてくれます。これは、面支持構造のシートフレームをホンダ車としては初採用し、パッドの厚みを従来モデルから30mmアップしているため。センタータンクレイアウトのフィットはフロントシートの厚みを確保するのが難しい構造なのですが、その点を新設計のシートで見事にカバーしています。

↑パッドの下の赤い部分が面支持構造を可能にする樹脂製のパッド。これによって包み込むような座り心地とパッド厚を確保しています

 

【変化③】モーター走行を主役としたハイブリッドパワートレイン

3つめはパワートレインの主役がモーターとなったこと。従来のフィットにもハイブリッドがラインナップされていましたが、メインのパワートレインは1.3Lと1.5Lが用意されたガソリンエンジンでした。新型では、ガソリンエンジンは1.3Lのみとなり、e:HEVと呼ばれるハイブリッドは1.5Lエンジン+2モーターのハイブリッドシステムという構成。明らかにハイブリッドを主体としたモデルに生まれ変わっています。

↑1.3Lエンジンは最高出力98PS/6000rpm。アトキンソンサイクルと通常サイクルを使い分け、燃費と走行性能を両立するi-VTECです

 

ハイブリッドシステム自体も、従来のエンジンを主体としたものから、モーターを主な駆動力に用いるシステムへと様変わりしています。新たに採用されたe:HEVシステムは、同社の「インサイト」に搭載されるi-MMDと基本的には同じもので、ほとんどの走行シーンではエンジンが発電機として機能し、駆動はモーターの力で行います。そして、高速での巡航などエンジンが得意とする領域ではエンジンと車輪がクラッチで直結され、エンジンのみで走行。加速時などには、バッテリーとエンジンの両方から電力が供給され、モーターならではの力強い加速感が味わえます。ハイブリッドシステムの中でも、モーターとエンジンのいいとこ取りを実現した高度なシステムですが、大幅に小型化することでフィットの車体に搭載可能となったようです。

↑1.5Lのi-VTECエンジンと2つのモーターを用いたハイブリッドシステムを組み合わせるe:HEVパワーユニット。エンジン最高出力は98PSですが、モーターの最高出力は109PSを発揮します

 

実際にドライブしてみると、1.3Lのガソリンエンジンでもパワー不足を感じることはありませんでしたが、より快適で余裕のある走行性能が味わえたのはハイブリッドのほう。モーターのみで走るEV走行は静かですし、加速が鋭いのはもちろん、エンジンでの走行となる高速道路でもエンジン音が気になるシーンは皆無でした。

 

加えて、感心したのは加速時のエンジン音が自然なこと。従来のi-MMDシステムでは、エンジンを発電のみに使用する領域において、エンジン音が車速に合わせて変わることがなく、ずっと全開になっているような音になっていることがあったのですが、新型フィットは制御を見直すことで車速の伸びに合わせてエンジンの回転が上がっていくようになっています。発電機として考えれば、あまり意味のないことかもしれませんが、ドライブを楽しむ上ではエキゾーストサウンドは重要な要素。この音の演出と、俊敏な加速感が連動することで操る楽しさも提供されていることは、クルマ好きにはうれしいポイントでしょう。

↑ハイブリッドシステムのエネルギーの流れは、メーターに表示することもできます。写真はエンジンのみで走行している状態

 

安全運転支援システム「Honda SENSING」も進化しています。従来はカメラとミリ波レーダーを併用するシステムでしたが、新型では画角の広がったカメラによって前方を監視し、近距離のみをソナーセンサーで検知する仕組みに。カメラがワイド化されたことで、交差点での右直事故などのシーンでも、自動ブレーキが作動するようになりました。アダプティブクルーズコントロール(ACC)が渋滞追従機能に対応したのもうれしいところ。安心・安全機能も充実し、ファミリーカーの新たなスタンダードになるのにふさわしい仕上がりとなっています。

↑ACCなど安全運転を支援する情報もメーターに表示されます。前走車を追従している際の速度コントロールなどもより自然になっている印象でした

 

SPEC【HOME(2WD)】●全長×全幅×全高:3995×1695×1515mm●車両重量:1090kg●パワーユニット:1317cc水冷直列4気筒DOHC●最高出力:98PS/6000rpm●最大トルク:118Nm/5000rpm●WLTCモード燃費:20.2km/L

 

SPEC【e:HEV NESS(2WD)】●全長×全幅×全高:3995×1695×1540mm●車両重量:1200kg●パワーユニット:1496cc水冷直列4気筒DOHC+交流同期モーター●最高出力:98PS/5600〜6400rpm(エンジン)、109PS/3500〜8000rpm(モーター)●最大トルク:127Nm/4500〜5000rpm(エンジン)、253Nm/0〜3000rpm●WLTCモード燃費:27.4km/L

 

撮影/松川 忍

 

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