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2020/7/5 21:15

コロナ禍のさなか1日も休まず走り続けた「鉄道貨物輸送」――とても気になる11の秘密

 

【鉄道貨物の秘密③】深夜の東海道本線を快走する貨物電車は?

↑東海道本線を走るスーパーレールカーゴ。安治川口駅23時9分発で東京貨物ターミナル駅に5時20分に到着するスーパーな列車だ

 

宅配便の鉄道貨物へのシフトが著しい昨今だが、2004(平成16)年から専用列車を東京〜大阪間に走らせるのが宅配便大手の佐川急便。「スーパーレールカーゴ」というニックネームが付く列車が使われている。この専用列車のため特別な車両が開発された。

 

通常の貨物列車は機関車がコンテナ貨車などを牽いて走る。ところが、スーパーレールカーゴに使われるのは動力分散方式を採用した〝電車〟なのである。M250系電車と名付けられ、4M12Tという構成。電動車ユニットが4車両、その間に付随車ユニット12両を挟み、計16両で走る。

 

かつて筆者はM250系の取材をしたことがあった。その時、担当運転士は「通常の貨物列車と比べて、電車のように動きがスムーズですね」と話してくれた。

 

貨物電車M250系の最高運転速度は130km/h。設計最高速度は140km/hになる。この性能を活かして、東京貨物ターミナル駅〜大阪・安治川口駅間をかかる時間は下りが6時間12分、上りが6時間11分で走りきる。ちなみに1958(昭和33)年に登場した特急「こだま」は、東京〜大阪間を8時間前後かかっている。「こだま」が登場してから約40年後に登場したM250系。時代の変化が実感できる貨物列車だ。

 

 

【鉄道貨物の秘密④】真昼に新宿駅や渋谷駅を通過する貨物列車

↑渋谷駅〜恵比寿駅間を走る3086列車。目の前をちょうど正午に通り抜けていった。牽引するのはEH500形式交直流電気機関車だ

 

東京の都心では、貨物列車の姿を見ることは一部の路線をのぞいて、ほぼない。首都圏を通過して、列島の南北間を結ぶ貨物列車が多いのにかかわらずだ。都心で見ない理由は多くが武蔵野線を迂回して走っているから。武蔵野線は、都心部の混雑緩和のため、主に貨物列車の通過を念頭に設けられた。1976(昭和51)年に、都心を迂回してぐるりと回る武蔵野線の現在のルートが完成している。

 

以降、隅田川駅に発着する貨物列車以外は、都心部ではほとんど貨物列車を見かけなくなった。しかし、一部が残っており、しかも池袋駅、新宿駅、渋谷駅といった都心の駅を、ほぼ正午前後に通過する列車があった。

 

3086列車がそれで、札幌貨物ターミナル駅発、名古屋貨物ターミナル駅行き。埼京線や湘南新宿ラインの列車が走る線路を抜けていく。電車待ちをしている人たちは、まさに意表をつかれた、というような表情で赤い電気機関車+コンテナ車20両の長大編成の列車の通過を見守る。

 

山手線と平行、埼京線の電車が走る路線は、実は山手貨物線という路線名が今も残っている。古くは貨物線だったわけで、貨物列車が通過してもおかしくは無い。実際に、今も1日に3往復の貨物列車が走っている。そのうち5本は電車が走らない深夜2時台、1本は朝5時前後。唯一、3086列車のみ昼に通過していくのだ。

 

ちなみに雪が多く降り積もるような真冬には、コンテナの屋根に雪を残して走る姿も珍しくない。さすが北国・札幌発の貨物列車である。

 

 

【鉄道貨物の秘密⑤】日本海縦貫線ってどこの路線のこと?

貨物列車の専用時刻表「貨物時刻表」を愛読書としている鉄道ファンも多いのではないだろうか。この時刻表には、今も「日本海縦貫線」の時刻を掲載したページがある。さて、日本海縦貫線という路線が今もあるのだろうか。

 

この日本海縦貫線は路線の正式名ではない。日本海に面して走る北陸本線、信越本線、羽越本線、奥羽本線といった路線の総称である。北陸本線は、すでに北陸新幹線の延伸により、新潟県、富山県、石川県の一部の路線は、第三セクター化してしまい、北陸本線の名称すら怪しくなりつつあるのだが。

↑寝台特急が通ったころ人気の撮影スポットだった新潟県の鯨波海岸。いまは日本海縦貫線を走る長距離貨物が“主役”となっている

 

そんな状況の中でも、貨物列車の世界では、日本海縦貫線の名前には変化がない。まさに貨物列車の世界では“王道”、“鉄板”とも呼ぶべき路線名といって良い。ちなみに同路線には、前述した最も長距離区間を走る貨物列車以外に、関西地方と北陸、新潟、青森、北海道を結ぶ列車が走る。日本海側の都市にとっては欠かせない重要な路線であり、首都圏を通るよりも、走行距離と時間を減らすことが可能な大切なバイパスルートでもあるのだ。

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