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2020/10/21 17:00

Honda eに乗ってきました。最小回転半径4.3mの実力を迷路のようなコースで試乗

いよいよ10月末にリリースされるHonda初の市販電気自動車「Honda e」に試乗するチャンスが巡ってきました。ホンダが横浜に用意した特設会場は全長800m、コース幅は3.5m。白く綺麗な段ボールを積み重ねまるで道幅の狭い教習所のようでした。試乗コースが屋内というのはEVならではのこと。ゼロ・エミッションだからこそ可能としています。

 

Honda eはデザイナーの遊び心が溢れている

最初に、ボディサイズのおさらい。軽自動車クラスのようにすら感じられるHonda eのスリーサイズは、全長×全幅×高さ=3895×1750×1510mm。Honda Fitより100mm短く55mm幅広で5mm低く、乗車定員4名の5ドアハッチバックです。ホイールベースは2530mmとなります。ここで特筆すべきなのがHonda eの最小回転半径の小ささです。わずか4.3mという数値はホイールベース2520mmのN-BOXでも4.5m〜4.7mなのですから、いかに小回りが効くかが分かります。

↑シティコミューターとしてたっぷりなサイズ感と街を和ませるデザインには思わず名前を付けたくなるペットのような存在

 

コース上のクルマに乗り込む前に、本田技研工業の広報担当三橋文章主任にHonda eの概要説明を受け基本的なことを教えていただき、三橋氏から渡されたFind Honda e Challengeカードの出題を解きます。個性的なHonda eはアイコン化されていて、サイドビューのシルエットがクルマの前後に3か所、隠されているのだそう。そして、市販車全てにこのアイコンが隠されているのだそうです。これはぜひ、皆さんもHonda eを見かけたら探してみてください。かなり小さなアイコンですが必ず入っています。Honda eのデザイナーとのコミュニケーションともいえる部分です。

↑当日配布されたFind Honda e Challengeカード

 

登録されたスマートフォンがキーの代わりに

Honda eでは自前のスマートフォンに専用アプリ(Hondaリモート操作)をダウンロードし登録することでスマートキー機能を持たせることが可能です。そのスマホを携帯し、ドアに近づくと自動的にドアノブがポップアップし、ノブを引けばロックが解除されスムーズに乗り込むことができます。Honda eではそこで終わりではなく、国産車初で、エンジンの始動までが可能となりました。いつものように部屋からスマホを携帯してクルマに近寄ればドアが開けられ、エンジンの始動までできるのです。さらにオーディオやエアコンのコントロールも可能なので、例えば暑い夏の日、お出かけ時には、家でHonda eの充電をしている状態で電力負荷の大きいエアコンの初期作動をさせることができます。乗り込み時に快適な室内環境を作っておけるだけでなく、走行用の電力の確保もできるのです。

↑国産車で初めてパワーオンまで行うことを可能としました

 

さて、いよいよHonda eに乗り込みました。私のように規格外に大きな体型でも十分に受け入れてくれる室内はブラック、グレイ、効果的なアクセントに用いられるブラウン、木目の色合いが基調の落ち着いた雰囲気です。家のリビングからの延長のようなイメージで、日常の生活の中でそのまま自然にHonda eがいる感覚です。それがシームレスということなのです。

↑シンプルで心安らぐリビングのような空間。パネルには、リビングテーブルのようなぬくもりを感じる自然な風合いのウッド調パネルを採用しています

 

インテリアでまず目を引くのが車室幅一杯に広がっている5連のモニターです。左右外側のモニターにはドアミラー代わりのサイドカメラミラーシステムからの映像がクリアに映し出されます。ドライバーの目線から見て自然なレイアウトのため、後方視界の違和感や不安はなく良い感じ。荒天時も雨の雫がカメラに付着しない設計になっていること、雨粒の付いたガラスを通して外のミラーを見る必要がないので、クリアな後方視界が期待できそうです。

↑中央には、12.3インチのスクリーンを2画面並べた「ワイドスクリーン Honda CONNECT ディスプレー」を配置。運転席や助手席でそれぞれ表示機能を選択できます

 

↑クラウドAIによる音声認識と情報提供をおこなう「Hondaパーソナルアシスタント」を搭載。「OK, Honda」と呼びかけることで、音声認識によりリアルタイムの情報を提供してくれます。オリジナルキャラクターがなんとも言えずポップ

 

↑カメラで捉えた映像はインストルメントパネル左右に配置した6インチモニターに映し出されます。サイドカメラミラーシステムは、170万画素の高精細カメラ

 

↑ドアミラーのかわりにサイドカメラミラーシステムを採用。これが車幅減に少し貢献し、狭い路地での心配も減ります

 

迷路コースを難なくクリアする理由

エンジンがかかり、Dボタンを押すことで走行可能となります。アクセルペダルを踏み込めば通常のクルマ同様に前進。このコースでは走り始めるとすぐに最初の直角カーブが迫ります。クルマの四隅に気を配りますが、モニターでの内側の確認にも、ハンドルの切れる感じにも違和感はなく静かにすっと曲がります。きついと思っていた狭い直角カーブもスルスルとスムーズにクリア。最小回転半径4.3mを実現させる裏にはEV専用設計のシャーシの恩恵があります。

 

ガソリンエンジン、ハイブリッドカーはシャーシレイアウトのベースをガソリン車のものとしているのがほとんどです。対して、Honda eは当初からEV。重量物のバッテリーは低重心化し、もしもの事故の衝撃から守るためにフロア下に敷き詰められるようにレイアウトされました。当初考えられていた前輪駆動から発想を変更。駆動輪を後ろにし、モーターもリアマウントにすることで、フロントにスペースの余裕をつくりました。通常のガソリン車よりも構造材の間隔を短くし、フロントサスペンション部に有効なスペースを生みました。

↑車両の床下にはバッテリーを格納する薄型IPU(インテリジェント・パワー・ユニット)を配置

 

そうして有効なスペースを利用してよく切れるステアリング機構となったHonda eが生まれました。しかしこのままではハンドルを切る量(=回転量)が増えてしまいます。Honda eでは可変ギアレシオを使い、小蛇角の時と大きくハンドルを切る時のステアリングギア比が変わりロック トゥ ロックは3.1回転で不自然さのないステアリング機構を生み出しています。地味な部分かもしれませんがHonda eの実用的な走りの魅力を大きく上げる機構といえるでしょう。

↑RR(リアモーター・リアドライブ)が可能にした大きく切れるステアリングにより、最小回転半径4.3mに

 

Honda e Advanceの高トルクと大パワー

Honda eにはベーシックグレードのHonda eとハイパワーグレードHonda e Advanceの2種類があります。今回試乗したのはハイパワー版のAdvanceでした。最高出力は113kW(154PS)と最大トルクが315N・m(32.1kgf・m)はこのコースでその実力を試すことはできませんでしたが、小回りがきくHonda eとこのコースに慣れてくると、かなり思い切った走りができるようになってきます。アクセルを深く踏み込むとレスポンスよく高トルクが発生され、見た目の可愛さを遥かに超えた加速をします。ノーマルモードとスポーツモードの実力はまた別の機会に広い道で試してみたいと思いました。

↑リアにはコンパクトかつ大出力のモーターを配置しています

 

Honda eは減速時にも楽しいドライビングを提供。通常のAT車のようなアクセル、ブレーキの2ペダル運転とシングルペダル運転の選択ができます。その選択もボタンを押すだけで完了。アクセルペダルを離すだけで減速が行われます。ハンドルの奥にあるパドル式の減速セレクターによってブレーキの効き具合を3段階にコントロールできます。これによりアクセルワークに集中できるスポーティーなドライビングが可能なことを確認することができました。

↑シングルペダルコントロールによって、加減速の切り替えをスムーズに行えます

 

ドライバーだけでなく同乗者を退屈させない

出先での充電時やドライブ中もHonda eはドライバーだけでなく、同乗者も退屈させません。5面のHonda Connectディスプレーは充電中にも走行中にも助手席の同乗者にも扱いやすく使用が可能です。また、ナビの情報など左右のモニターの情報を簡単にドライバーにも見やすく提供することができます。今回の迷路試乗では『街なかベスト』な乗り味の確認がメインでした。Honda eにはまだまだ魅力的なコンテンツが沢山あります。別のシーンでも試してみたいと感じました。その魅力が十分にあることは確かです。

 

Honda e 451万円(税込)/Honda e Advance  495万円(税込)

試乗車SPEC【Advance】●全長×全幅×全高:3895×1750×1510mm●車両重量:1540kg●モーター:交流同期電動機●最高出力:113kW(154PS)/3497〜10000rpm●最大トルク:315N・m(32.1kgf-m)/0〜2000 rpm●一充電走行距離WLTCモード:259km●交流電力量消費率WLTCモード:138Wh/km

 

 

撮影/野田楊次郎

 

 

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