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2021/1/23 6:30

「安全なクルマ」を支えるのは、8つの技術!

かつては高価なオプションとして設定されていた予防安全技術が、いまは軽自動車やコンパクトカーでも標準装備化している。今回は、ぶつからない、そして安定した走行をキープして安全運転につながる8つの代表的な技術を紹介。先進技術はここまで進化しているのだ。

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が解説します

カーITジャーナリスト

会田 肇

クルマやカーナビをはじめ、先進交通システムにも造詣が深い。海外のモーターショーにも積極的に足を運ぶ。

自動運転技術の開発過程で進化した予防安全技術

急速に高度化し、普及が進んでいる予防安全技術。背景のひとつとして2021年に衝突被害軽減(プリクラッシュ)ブレーキの搭載が新車に義務付けられることがあるが、自動運転化技術の進化も大きい。完全な自動運転を実現するのは簡単ではないが、その研究・開発の過程で生まれた技術が反映されているのは間違いないのだ。

 

衝突被害軽減ブレーキではミリ波レーダーや赤外線でセンシングする技術が使われ、レーンキープではカメラによるセンシングが活かされる。また、ステアリング制御はこれらの情報をトータルで処理するソフトウェアの技術によって日々向上している。これらはすべて自動運転に向かう過程で生み出されたものなのだ。特に日産・スカイラインなどで実現したハンズオフ(手放し)走行機能はこれらの技術の集大成とも言えるが、現状では運転の責任がドライバーにあることに変わりはない。それでも技術はヒューマンエラーによる事故を防ぎ、安心で快適なドライブを可能にする。予防安全技術の進化は着実に進んでいるのだ。

 

【その1】衝突被害軽減ブレーキ

ドライバーに代わって自動でブレーキをかける

このシステムは、クルマが車両や歩行者などを感知してブレーキをかけてくれる。車両前部のセンサーやカメラ、レーダーが前方を警戒し、衝突の危険が高いときにはメーター内の警告灯や警報音で注意喚起したのち、ブレーキの補助が介入。衝突時の被害を軽減する。もちろん過信は禁物。

 

↑最新の技術では対車両だけでなく歩行者の存在も検知できる。夜間街灯のない道路でもブレーキ動作を補助してくれる

 

【その2】定速走行・車間距離制御装置

ドライバーの疲労軽減に加えて渋滞の抑制にも効果あり

文字通り先行車との車間を一定に保ち、オートクルーズコントロールと組み合わせれることの多いこのシステムは、長距離ドライブの疲労を軽減してくれる。また高速道路の登り坂では車速を一定に保つことで速度低下を防止し、渋滞発生の抑制にもなる。

 

↑カメラやセンサーが先行車を認識し一定の車間を保つ。クルマによっては2台前の加減速を感知するモデルもある

 

【その3】ペダル踏み間違い時速度抑制装置

ヒヤリ・ハットをクルマが制御してくれる

ニュースなどでも報じられることの多いアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故。このシステムはそんな誤発進を抑制してくれるものだ。車両に搭載されたセンサーが障害物を認識して、急激なアクセル操作が行われたときなどにエンジンの出力を制限し、急発進を防いでくれる。

 

↑センサーが障害物を感知しているときに急発進を抑制するシステム。前進時はもちろん、後退時にも働く先進安全システムだ

 

【その4】レーンキープアシスト

カーブでもはみ出さず同一車線の走行をアシストする

車線からはみ出すことなく、同一車線の走行をアシストするシステム。アダプティブクルーズコントロールと併用される。電動パワーステアリング作動中に適切なトルクを発生させるなどのステアリング制御を行い、車線維持をアシスト。軽いステアリング操作でレーンキープが可能だ。

 

↑無意識のはみ出しやふらつきにも有効。最近は同一車線を走行するようステアリングアシストが入るモデルが増えている
●メーカーによって名称は異なる場合がある

 

【その5】車線逸脱警報装置

無意識のふらつきを検知しドライバーに注意を促す

センサーやカメラが車線を認識し、車線逸脱を警告するシステム。車線をはみ出しそうになったときにクルマがドライバーに警告音やディスプレイの表示で注意を促す。クルマによっては車線内に戻るようにアシストが入るモデルもある。高速道路だけでなく、車線が認識できる一般道でも有効。

 

↑ウィンカーを出さずに車線を跨いだ時などに警報音などで注意喚起する。最近では制御の入るモデルも多い

 

【その6】車両後方視界情報提供装置

バック時に潜む危険をクルマが見守ってくれる

駐車場などからバックで出庫する際、見えにくい左右後方から接近するクルマを自車のセンサーで認識し、ドライバーにブザー音やインジケーターで知らせるシステム。衝突の危険性が高いときはクルマが自動でブレーキを制御し、衝突を回避する。歩行者などを検知するモデルも増加している。

 

【その7】オートマチックハイビーム

周囲のドライバーを惑わせずに積極的にハイビームを活用できる

いまや軽自動車でも周囲の明るさに応じてライトが自動で点灯するオートライトが増えてきたが、こちらはもう一歩進んだもの。先行車や対向車の存在をセンサーが認識して、自動でハイビームとロービームを切り替えてくれる。自身の視界確保だけでなく、存在のアピールにもつながる。

 

↑ステアリングの操舵に応じて照射範囲を切り替えてくれるモデルも。車線の確認や対象物の早期発見に有効だ

 

【その8】後側方接近車両注意喚起装置

車両左右後方の死角をカバーして安全なレーンチェンジを助ける

ミラーでは映しきれない左右斜め後ろなど、クルマの死角をカバーするシステム。車線変更や右左折時に車両が接近した場合に表示でドライバーに通知し、その際にウィンカーを出すと音で警告してくれる。このセンサーは車両後部にあり、ステッカーなどを貼ると反応しない場合もあるので注意。

 

↑車両斜め後ろの死角をサポートする後側方接近車両注意喚起装置。ドアミラーのインジケーターが点灯する

 

★「安全なクルマ」を実現させる機構はコレだ

【その1】レーダー(ミリ波レーダー)

天候に左右されない検知が可能で最近は歩行者も感知できるように

ミリ波レーダーの強みは自車前方の約200〜250mの長距離検知と天候に左右されない検知性能。最近は性能が向上し、自転車や歩行者もレーダーで感知できるようになった。

 

↑ミリ波レーダーの設置場所は車両前部。フロントグリルのエンブレム後部やバンパー後部が多い

メルセデス・ベンツやトヨタ、日産、ホンダなど国内外多くのメーカーが採用。ミリ波レーダーだけでなく、カメラなどと組み合わされることが多い。

 

【その2】カメラ

車両前方の対象物を的確に捉える最もわかりやすいデバイス

フロントウィンドウのルームミラー付近にある最もわかりやすいデバイス。画像を認識して物体の大きさや距離を算出するために使用。意外にもスマホの顔認識も同じ原理だ。

 

↑写真は2台のカメラで対象物を捉えるステレオ方式。ひとつのカメラで捉える単眼カメラ方式もある

カメラ方式の代名詞といえばスバルのアイサイト。多くのメーカーが他のセンサーなどを組み合わせて豊富なモデルに展開している。

 

【その3】赤外線レーザー

短距離の検知に強い赤外線は暗闇でも頼りになるレーザー

ミリ波レーダー同様に反射波を利用した暗所にも強いセンサー。近距離はかなり正確に測定できるが荒天時などは影響を受けやすい側面もある。カメラと組み合わされることが多い。

 

↑写真はアウディ車に搭載される赤外線レーザー。近距離の検知に強いが、最近では単独のモデルは減少

低コストのため多くのメーカーが採用している。しかし歩行者などを検知する場合はカメラ方式が必要になることもあり、カメラとの併用が増加している。

 

【CHECK!】安全なクルマ選びの参考になる2つのマークに注目せよ!

先進安全装備がついたクルマを選ぶ際に参考になるのが、独立行政法人自動車事故対策機構の自動車アセスメントによるテストを基に発表される結果だ。衝突を軽減する性能を評価する予防安全性能の最上位はASV+++、衝突時の乗員と歩行者保護性能を評価する衝突安全性能の最上位は5つ星となっている。

 

↑写真は予防安全性能テスト。一定のスピードから前方車両への衝突を回避する被害軽減ブレーキのテストだ ●写真提供/(独)自動車事故対策機構(NASVA)

 

■予防安全性能

ASV+++は高い予防安全性能の証

2018年度から予防安全性能評価試験の結果に+++が新設。評価の+が多いほど予防安全性能に優れ、最上位の評価が+++だ。

 

■衝突安全性能

5つ星は万が一の際の安全性能の大きな目安

衝突安全性評価はボディ、乗員、歩行者に対して行われ、項目ごとに点数が定められる。100点満点中82点以上が5つ星に認定される。