様々な業種で展開されるサブスクリプションサービス(サブスク)に注目が集まる中、トヨタが展開するクルマのサブスク「KINTO」が高い人気を集めています。発表によればKINTOは昨年6月以降、1か月で1000台を超える契約数を連続して獲得。クルマという高額商品ではこの実績は異例のことです。そんな中でKINTOは、新サービスとしてオンラインプラットフォーム「モビリティマーケット」(モビマ)を2021年4月より立ち上げることを発表しました。その狙いはどこにあるのでしょうか。
目的は「移動のよろこび」を感じてもらえること
モビマはコロナ禍で移動が制限されている昨今、人間が本来より持っている「どこかに行く」というニーズに応えることを目的として提供されるもの。近い時期にコロナ禍が落ち着き、移動が自由になる時に向けて「移動のよろこび」を感じてもらえるサービスを目指します。
利用は日本国内の在住者・滞在者なら誰でも可能ですが、KINTO契約者には特別な特典も用意。契約期間中1台を選ぶ「KINTO ONE」では3万円相当、契約期間中複数台を選ぶ「KINTO FLEX」では6万円相当の優待や様々な特典が予定されているのです。つまり、単に「クルマ」に乗る楽しみ方を与えるだけでなく、出かけた時に感じる「移動のよろこび」までもコミコミで提供するのがモビマ最大の特徴と言えるでしょう。
その実現のために用意したカテゴリは以下の5つ。それぞれ目的にマッチしたアクティビティを用意しています。
【新しい生活の扉を開こう】
キャンピングカーを利用したワーケーションや、シェアサイクルで巡る旅、ドライブインシアターなど、ニューノーマル時代の新たな移動体験を提供。
【心踊るスペシャルな体験を】
海外でのKINTOブランドのカーシェアや、モータースポーツの観戦・体験、クルマでしか行けないようなローカルでの食事と体験など、クルマを使った非日常体験を提供。
【クルマ時間をとことん楽しもう】
カーコーティングや、レジャー時の駐車場予約、クルマの中で流す音楽やお出かけを楽しくするカメラなど、快適なクルマ時間を演出するサービスを提供。
【もっと気持ちよく、軽やかに】
クルマ・電車・バス・船をはじめ複数の移動手段を組合わせたMaaSや、リムジンによる自宅から空港への送迎など、シームレスでストレスフリーな移動サービスを提供。
【やさしく移動を応援】
ドライビングレッスンや、移動する日をピンポイントでカバーする保険、クルマの中の除菌など、移動の安心安全をサポートするサービスを提供。
これらアクティビティの活用範囲は広く、このサービスを実現するにはトヨタだけで提供することはできません。そこで国内事業者と提携し、現時点で20社が確定。さらに30社前後と協議中だということです。その中にはJTBや近畿日本ツーリストなどの旅行会社も含まれますが、ここで提案されているのは一般的な旅行商品ではなくKINTO向けにクルマ移動を前提とした旅プランです。これを踏まえ、他の提携先ともKINTOに最適化したサービス内容になるよう詰めていくとのことです。
加えて、コロナ禍が落ち着いて海外へ出かけられるようになった頃には、トヨタが海外16か国で展開するカーシェアサービス「KINTO SHARE」も利用できるようにする計画とのことでした。海外でもシェアできるようになれば、海外での移動のハードルがいっそう下がることが期待されます。
提携サービスを将来は100社、200社と増やしていく
モビマを提供する狙いについてKINTOの小寺信也社長は次のように説明しました。「クルマの利用だけでなく、クルマをもっと楽しんでいただくためにモビマを展開することにした。サービスが点在している中で、モビマを開くことで、ここに来るだけで(それらに)アクセスできるようにしたい」。そのために提携事業者も「現在の20社を、将来は100社、200社と増やしていきたい」(小寺社長)と、今後サービスの拡大に意欲を示しました。
KINTOではこのサービスに先行して2020年末にスタートアップキャンペーンを実施しており、そこではキャンピングカーと車中泊スポットをセットにしたワーケーション体験や、シェアサイクルを組み合わせた旅行プラン、レンタカーとドライブシアターをセットにしたエンタメ体験など“移動の喜び”を感じられるサービスを用意しました。その結果は「参加者の満足度は70%を超えており、サービス展開への手応えを感じた」と小寺社長が話すほど好評だったそうです。
また、質問でモビマへの出店料について聞かれた小寺社長は、「パートナー企業からいただく費用は必要最低限としていて、出店料で利益をあげることを目的にしてはいない。あくまでユーザーに対して様々なサービスを提供し、クルマで移動する楽しみを体験できるコンテンツを利用していただくことが第一の目標」と回答。モビマでのサービスをまずは充実させていく考えを示しました。また、4月の正式なオープン前の2月~3月にプレオープンの体験キャンペーンも予定しているとのことでした。
■資料:提携予定企業一覧
NTTドコモ(kikito)
| スマートフォンと一緒に利用できるさまざまなデバイスをレンタルして利用可能なサービス |
SPDホールディングス(SPDスクール) | 関東圏のペーパードライバー講習を専門に出張教習
|
オーシャンブルースマート(PiPPA)
| アプリひとつで自転車の貸し出し・返却・精算までができるシェアサービス。市中にあるポートのどこでも借りて返せるため駐輪代金は不要 |
Carstay(Carstay)
| 国内最大のキャンピングカーシェア・車中泊スポットの予約サービスを運営 |
キャンピングカー(ジャパンキャンピングカーレンタルセンター) | キャンピングカーレンタル事業
|
KeePer技研(EX KeePer/W DIA KeePer/DIAMOND KeePer/CRYSTAL KeePer) | カーコーティング・洗車用ケミカルと機器などの開発・製造・販売、カーコーティング技術認定店「キーパープロショップ」の展開、カーコーティング&洗車の専門店「キーパーLABO」の運営 |
JTB
| ツーリズム(トラベル・地域交流)、エリアソリューション(地域課題起点)・ビジネスソリューション(法人課題起点)を軸とした交流創造事業 |
scheme verge(Horai)
| MaaSアプリ「Horai」と地域事業者のDXを通じたデータ駆動型エリアマネジメント |
SmartRyde(SmartRyde)
| 全世界150か国で利用可能な空港送迎サービス「SmartRyde」の企画・開発・運営、時間貸し・周遊観光チャーターサービスの展開 |
テーブルクロス(byFood.com) | インバウンド体験グルメメディア「byFood.com」の企画・運営、社会貢献ができるグルメアプリ「テーブルクロス」の運営 |
近畿日本ツーリスト中部(近畿日本ツーリスト)
| 旅を通じて「感謝の気持ちを伝える」お手伝い。SDGs・ワーケーション・BCP・防災プログラム等を通じて企業及び行政との連携により課題解決をおこなう事業の展開 |
ハッチ(Do it Theater)
| まだ誰もみたことがないシアター体験のプロデュース、イベントやコミュニケーションのプランニング・制作・運営 |
富士スピードウェイ(富士スピードウェイ)
| 自動車レースの企画・運営事業・イベント企画・運営事業・レンタル・プランニング事業・サーキットライセンス事業・スポーツ走行運営事業・マーケティング事業 |
ペーパードライバーサポート愛知(ペーパードライバーサポート愛知) | ペーパードライバーを対象とした、交通安全と自動車の運転に関する各種講習
|
トヨタファイナンシャルサービス(my route)
| 街のあらゆる移動手段を組み合わせてルート検索。予約からキャッシュレス決済までmy routeで完結。地元のお店や隠れた観光スポットも満載で、お出かけや寄り道もサポート |
Mellow(Mellow) | モビリティを活用した空地活用事業・店舗型モビリティの開業支援およびコンサルティング事業 |
ライフクリエイション(さなげアドベンチャーフィールド) | ライトSUVからクロカン車まで幅広く楽しむことができるオフロードコースを運営
|
R-ISE(ライズペーパードライバーズクラブ) | 運転を楽しもう!ペーパードライバー向け講習、目指せ社会復帰!障がい者運転支援講習、運転寿命を延ばそう!高齢ドライバー講習 |
リンベル(RINGBELL)
| カタログギフト・雑貨・グルメ・デジタルギフトなどギフト全般、宿泊・食事・温泉などの体験型ギフト |
海外KINTO SHARE運営会社(KINTO SHARE)
| 海外16の国と地域(以下)のカーシェア事業 アメリカ(含むハワイ)、プエルトリコ、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、アイルランド、イギリス、イタリア、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、台湾、中国、オーストラリア、ニュージーランド |
※()内は提供ブランド名
KINTOは契約件数で月間1000件以上を連続して獲得
KINTOは2019年3月にサービスを開始し、発表によれば20年12月までの累計で契約件数は1万2300件に達したということです。特に契約数が増えたのは、車種の拡充や認知度を高めるテレビCMなどを本格化させた20年6月以降で、毎月1000件を超える契約が順調に獲得できるようになりました。KINTOは法人契約もできますが、リース契約とは違って特に個人ユーザーが全体の8割を超えているのも大きな特徴です。ただ、「(経営的には)今は限りなく黒字に近いところまで来たという段階」(小寺社長)であり、KINTOとしてはモビマのようなサブスクらしい独自企画を提案し、認知度を高めていく計画です。
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