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2016/8/27 13:00

新幹線と路面電車が同じ駅で乗り入れる!? 類を見ない魅力に溢れた「富山地方鉄道市内電車」

全国を走る路面電車の旅 第6回 富山地方鉄道市内軌道線

 

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富山県は“路面電車県”だ。県の面積は日本で33位と決して大きくないのにも関わらず、「富山地方鉄道市内電車」「富山ライトレール」「万葉線(高岡市ほか)」と3つの路面電車の路線があり、ともに地元の人たちの大切な足として活かされている。このような県は全国にも例がない。よって、本稿では勝手に“路面電車県”と言わせていただくことにした。

 

3つの路線の中でも特に注目したいのが「富山地方鉄道市内電車(正式には富山市内軌道線)」。2015年春の北陸新幹線の開業に合わせて市内電車の駅前の電停を移動、新幹線の富山駅の高架下に富山駅の電停が造られた。実は日本の路面電車の中で、新幹線の高架駅の下に電停がある例は他にない。この富山地方鉄道市内電車(以下:市内電車)のみなのである。スタイリッシュな新型車両も多く導入される、そんな市内電車を使っての市内旅を楽しみたい。

↑2015年春の北陸新幹線の開業に合わせ、新幹線の高架駅の下に市内電車の富山駅が造られた
↑2015年春の北陸新幹線の開業に合わせ、新幹線の高架駅の下に市内電車の富山駅が造られた

 

【歴史】大正時代から富山市民の足として親しまれる

市内電車の歴史は大正の初めにさかのぼる。富山電気軌道が1913(大正2)年に、富山駅前~共進会場前(現:大町近く)間に路面電車を走らせたことに始まる。その後、富山電気軌道は富山市営軌道となった。戦時中に、市営軌道の路線は富山地方鉄道に譲渡。富山地方鉄道は路面電車の路線以外にも、富山駅と立山や宇奈月温泉を結ぶ鉄道路線をもつ。こちらは富山地方鉄道の鉄道線と呼ばれる。一方、富山市内の軌道線は、富山地方鉄道の市内電車として呼ばれ、親しまれている。

 

市内電車は富山駅北と射水市を結ぶ射水線を廃止(一部は万葉線となる)するなど、縮小・停滞期が続いた。しかし、地元富山市が路面電車を活かす政策を打ち出し、2009(平成21)年の12月に丸の内から荒町を結ぶ都心線が新設された。この都心線は市街をぐるりと回る“環状線”で、富山城趾や繁華街の西町、総曲輪(そうがわ)などを巡るときに便利な路線だ。さらに2015年3月には、前述したように富山駅直結の電停も造られている。

 ↑富山城趾公園のすぐ近くを走る都心線は市内を左回りに走る環状線だ。車両は9000形「セントラム」
↑富山城趾公園のすぐ近くを走る都心線は市内を左回りに走る環状線だ。車両は9000形「セントラム」

 

【車両】富山市が所有する超低床路面電車「セントラム」が走る

市内電車では4タイプの車両が走る。1957(昭和32)年から導入された7000形。丸みを帯びたレトロなスタイルが特徴だ。7000形の置き換え用に造られた8000形は1993(平成5)年生まれ。やや角張った顔つきなのですぐわかる。

↑「レトロ電車」に改造された7000形7022号車。水戸岡鋭治氏が車内外のデザインを担当した
↑「レトロ電車」に改造された7000形7022号車。水戸岡鋭治氏が車内外のデザインを担当した
↑8000形は7000形に比べてやや角張ったスタイル。現在、5両が利用されている
↑8000形は7000形に比べてやや角張ったスタイル。現在、5両が利用されている

 

2009(平成21)年に都心線に導入された9000形「セントラム」は、2車体連接の低床車で、車体色もおしゃれ。将来的には富山ライトレールとの相互乗り入れを目指して富山市が購入した車両だ。また、2010(平成22)年から導入を開始されたT100形は「サントラム」という愛称をもつ。こちらは富山地方鉄道が導入した初の超低床路面電車車両(LRV)でもある。

↑雪舞う市内を走るT100形「サントラム」。さすが雪国らしく除雪設備がしっかりと整備されていた
↑雪舞う市内を走るT100形「サントラム」。さすが雪国らしく除雪設備がしっかりと整備されていた

 

【沿線風景】富山城趾公園を横に見て市内を走る路面電車

路線は3系統ある。1系統は南富山駅前から大学前へ走るルート。富山駅と南富山駅前を結ぶ2系統、そして市街の環状線を左回りする3系統の3本だ。ちなみに、2系統は1系統の富山駅〜南富山駅前間の区間と重複している。いずれの系統も2015年3月からは、富山駅へ一度入って折り返すスタイルで走るようになった。

 

市内の観光名所である松川公園へは、1系統・3系統の県庁前で下りるのが便利。富山城趾公園へは1系統・3系統の丸の内か3系統の国際会議場前が近い。富山市を代表する繁華街の西町や総曲輪へは、1・2系統の西町か荒町、もしくは3系統の中町(西町北)か荒町での下車がおすすめだ。

↑加賀藩の分家として生まれたのが富山藩。富山城は富山前田氏13代の居城として使われた
↑加賀藩の分家として生まれたのが富山藩。富山城は富山前田氏13代の居城として使われた

 

まだ少し先の話になるが、2022年には富山駅は在来線も含めすべて高架化し、市内電車と富山ライトレールの線路をつなぐ予定。富山の路面電車がさらに便利になりそうだ。

↑富山を訪れたら新鮮な魚介類を楽しみたい。富山の方言では新鮮なことを“きときと”と表現する
↑富山を訪れたら新鮮な魚介類を楽しみたい。富山の方言では新鮮なことを“きときと”と表現する

 

【TRAIN DATA】

路線名:富山地方鉄道富山市内軌道線

運行事業体:富山地方鉄道

営業距離:7.5km

軌間:1067mm

料金:200円(全線均一)*ICカード利用180円

開業年:1913(大正2)年

※富山電気軌道により富山駅前~共進会場前(現・大町近く)間を開業