走行可能距離は820kmと十分
さて、そのネッソを公道で走らせてみます。ヒョンデによれば水素をフル充填すると走行可能距離は820km(WLTC)ということで、これをエアコンの利用などを考慮して7割と見積もっても500kmは超えます。同じFCVであるミライは850km(グレードGの場合・WLTC)」と少し上回りますが、その差はわずかでいずれも十分に長い距離を走れるクルマと言えるでしょう。
電気モーターで発生するパワースペックは、最高出力120kWと最大トルク395Nm。それだけにアクセルを少し踏んだだけでモーターらしい太いトルクが伝わり、車重1870kgのボディを軽々と運んでくれました。モーターらしいフラットなトルクはどの速度域でも俊敏に反応してくれ、市街地はもちろん、高速道路の流入でも力不足は微塵も感じさせません。これは内燃機関とは大きく違う点です。
乗り心地もすこぶる快適でした。路面の凹凸をしっかり吸収しており、荒れた路面でもフラットな感覚で上手にいなしてくれるのです。若干、フワついた印象もありあますが、それは軽めのステアリングがそう感じさせるのかも知れません。300kmほど少し遠乗りもしてみましたが、同乗者からも乗り心地に不満は一切出ませんでした。SUVとしての走りは十分な満足度が得られそうです。
車外からリモコン操作で自動駐車
先進安全運転支援(ADAS)の機能も十分なものでした。センシングは単眼カメラとミリ波レーダーによる組み合わせで行う一般的なものですが、レーンキーピングではフラつくこともなく自然に進んでくれましたし、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)での先行車追従でも車間を安定して制御していました。
運転中のアシストとして感心したのが「ブラインドスポットビューモニター」です。一般的にこの機能はミラーにオレンジ色の警告表示が出るだけですが、ネッソではウインカーを出すと同時に、出した側の様子を映像でウインドウ風に表示するのです。この映像を通して死角をなくそうというわけです。
そして、自動で駐車できる「リモートスマートパーキングシステム」にも注目です。これは駐車可能なスペースを自動的に検出した後、車外からコントロールして駐車枠内に自動で収める機能です。作動中はリモコン操作で外部からコントロールするので、車内はまったくの無人。これで切り返しをしながら自動的に駐車するのだから驚きです。
操作手順としては、機能をONにしてゆっくり走ると、自動的に駐車できる枠を検出して停止するので、そこで並列駐車か縦列駐車するかを選びます。また、この機能は運転席に座った状態も可能で、その時はコンソールにあるリモートスマートパーキングシステムのボタンを押すだけです。まさに先進性をコンセプトにしたネッソらしい機能といえます。
ネッソを借りたいなら個人間カーシェアリング「エニカ」で
ではこの先進性あふれるネッソにはどうすれば日本で乗れるのでしょうか。ヒュンダイモーターコーポレーションの日本法人「ヒョンデ・ジャパン」によれば、韓国での価格は「約650万円から750万円」とのことですが、残念ながら日本での販売は今のところ未定。2010年に同社が日本市場から撤退して以降、その後、大型バスなどは展開しているものの、乗用車を再び販売するという話はまだ具体化されていないのです。
そんな中、唯一ネッソに乗れる方法が、冒頭でも触れた個人間カーシェアリングAnyca(エニカ)の会員になることです。エニカは個人が所有する車両を融通し合って貸し借りするカーシェアリングサービスです。多くのカーシェアリングは、レンタカーと同様の車両を貸し出すのと違い、個人が所有するオリジナリティあふれるクルマを借りられることが大きな特徴となっています。
そして、もう一つの大きな特徴が自動車会社が所有するディーラー車をシェアするサービスも行っていることです。実はネッソもそのサービスの一環として展開しているものなので、これは「購入を想定したクルマを少し長めに試乗してから購入を決めたい」という声に応えて有料でサービスが始まったもの。すでに多くの自動車販売店が登録済みで、今回のネッソもヒョンデ・ジャパンが提供しているものなのです。エニカに登録して、日本ではなかなかお目にかかれないユニークなクルマに乗ってみるのも面白いと思います。