乗り物
2016/9/17 14:00

いま最注目の路面電車「福井鉄道 福武線」ーーその理由とは?

全国を走る路面電車の旅 第9回 福井鉄道

 

福井市の田原町駅と越前市の越前武雄駅を結ぶ福井鉄道・福武(ふくぶ)線。福井市内の田原町駅〜商工会議所前電停の間で併用軌道区間を走り、商工会議所前電停〜越前武生駅の間は専用の鉄道線を走る。

 

北陸の富山県・福井県では、「路面電車を積極的に活用しよう」という方針が打ち出され、両県の路面電車の路線ともに非常に活気づいている。特に福井県内を走る福井鉄道は、新車両の導入、他鉄道線との相互乗り入れ、海外の路面電車の車両導入、そして県の玄関口、福井駅への路線延伸と、改革に積極的だからだ。今、国内で最も注目されている路面電車と言えるだろう。

↑2013年3月に登場した新型F1000形。2016年度中には計4編成が走る予定だ
↑2013年3月に登場した新型F1000形。2016年度中には計4編成が走る予定だ

 

 

【歴史】90年以上にわたり福井県内を走り続ける

福井鉄道の路線の歴史は約90年前の1924(大正13)年2月に始まる。当時、福武電気鉄道が武生新駅(現・越前武生駅)と兵営駅(現・神明駅)との間に路線を開設。その翌年には、兵営駅〜福井新駅(現・赤十字前駅)間が開通し、武生と福井が鉄道線により結ばれた。その後、1933(昭和8)年に福井駅前まで軌道線が延びる。1945(昭和20)年には福井鉄道となり、1950(昭和25)年に田原町駅まで軌道区間が延伸され、現在の路線がほぼ形作られた。

↑商工会議所前電停から越前武生駅までは専用の鉄道線区間。この区間は郊外路線の趣が強い
↑商工会議所前電停から越前武生駅までは専用の鉄道線区間。この区間は郊外路線の趣が強い

 

 

【車両】バラエティに富む新旧の車両、さらに気になる古参電車も

福井鉄道の路線を走る電車はバラエティに富む。まずは目をひくのが最新型のF1000形だ。2013年3月に登場し、現在は、オレンジ、水色、黄緑とカラフルな3編成が導入されている。新しい路面電車の定番スタイル、超低床電車で、愛称は「FUKURAM(ふくらむ)」だ。シャープな面立ちで、“イケメン”系電車と言っていいだろう。

↑福井鉄道では約50年ぶりとなる新造車F1000形。3車体連接の超低床車だ
↑福井鉄道では約50年ぶりとなる新造車F1000形。3車体連接の超低床車だ

 

最新のF1000形以外に車両も見ておこう。路線で良く見かけるのが770形や880形。白地の車体、下部が薄いグリーン、窓部分が水色という塗り分け、正面にV字、シルバーの飾りが入る。この両形式は名古屋鉄道(名鉄)の軌道線・岐阜市内線、美濃線などを走っていた電車で、名鉄の軌道線が廃線された後、福井鉄道へやってきた。今も車両数が多く福井鉄道の主力車両として活躍している。

 

ユニークなのが735形だ。この電車、元はドイツのシュツットガルト市電だった。高知の土佐電気鉄道(現・とさでん交通)を経て、2014年4月から福井鉄道で走り始めている。愛称は「リ・トラム」。冷房装置がないため、春と秋の土休日のみ限定運行。日本の路面電車とは異なる姿形で、福井の新しい“顔”として親しまれている。

 ↑併用軌道区間を走る735形は元ドイツシュツットガルト市電。春と秋の土休日に臨時運行されている
↑併用軌道区間を走る735形は元ドイツシュツットガルト市電。春と秋の土休日に臨時運行されている

 

加えて、福井鉄道には鉄道ファンとしては気になる電車がある。200形電車だ。頭に埋め込み式の前照灯、上部をやや後ろに傾斜させ、鼻筋がピンと通った“湘南タイプ”と呼ばれる正面デザインが特徴。このデザインは、戦後、東海道を走った国鉄80系電車が始まりとされる。80系が「湘南電車」と呼ばれたことで湘南タイプと呼ばれるのだ。当時、国鉄・私鉄の多くがこのデザインを採用し、全国に湘南タイプの車両が走った。

↑福井電鉄の200形は美形の“湘南タイプ”。50年以上にわたり福井鉄道を支えてきた“生え抜き”車両だ
↑福井電鉄の200形は美形の“湘南タイプ”。50年以上にわたり福井鉄道を支えてきた“生え抜き”車両だ

 

福井鉄道の200形は1960(昭和35)年〜1962年生まれで、福井鉄道では貴重な生え抜き車両。50年以上にわたり走り続けたが、F1000形と入れ替わるように次々と引退していった。残りは203号の1編成のみで、2016年9月現在、休車となっている。

 

貴重な車両だけに保存して欲しいという要望も鉄道会社に届いているという。今後の予定は未定だが、貴重な昭和の鉄道車両だけに何とか残して欲しいところだ。

↑200形電車は電停に着くと乗車用のステップが出てきた。乗車時、ややスリリングな構造だった
↑200形電車は電停に着くと乗車用のステップが出てきた。乗車時、ややスリリングな構造だった

 

 ↑この電車はえちぜん鉄道のL形電車。Ki-bo(キーボ)という愛称が付く。相互乗り入れ電車として福井鉄道へ乗り入れる。F1000形と比較すると愛嬌のある容姿だ
↑この電車はえちぜん鉄道のL形電車。Ki-bo(キーボ)という愛称が付く。相互乗り入れ電車として福井鉄道へ乗り入れる。F1000形と比較すると愛嬌のある容姿だ

 

 

【沿線風景】市役所前から一駅のみ福井駅へ乗り入れる“ヒゲ線”

福井鉄道福武線は、2016年に2つの駅構内および区間で路線が大きく変わった。まず、2016年2月に福井鉄道の終点駅だった田原駅を改造、接続するえちぜん鉄道三国芦原線と相互乗り入れを行えるようにした。その後は、福井鉄道とえちぜん鉄道の電車がそれぞれ越前武生駅〜えちぜん鉄道・鷲塚針原(わしづかはりばら)駅間を走るようになっている。

↑田原町駅は福井鉄道とえちぜん鉄道の接続駅。大きく改造され、相互乗り入れが可能になった
↑田原町駅は福井鉄道とえちぜん鉄道の接続駅。大きく改造され、相互乗り入れが可能になった

 

さらに2016年3月には、駅前線を100mほど延長。福井駅前停留場を福井駅西口広場に移して福井駅とした。これまでの駅前電停は、JR福井駅からはやや離れていて、小さな造りだった。新しい福井駅は西口広場のなか。JRの駅からもより近くなり便利となった。

 

この福井駅へ延びる駅前線。福武線の市役所前から盲腸線のように1駅600メートルの区間のみ、路線がのびている。地元では“ヒゲ線”と呼ぶ区間だ。田原町発、福井駅経由、越前武生行きの電車ならば次のように走る。

 

①市役所前→福井駅へ

②福井駅で折り返して市役所前まで戻る

③市役所前で再度、折り返して越前武生へ向かう

 

福井駅から越前武生方面へ直接つながる線路がないため、やむを得ずなのだが、始めて乗るとちょと面食らう。

↑福井駅西口広場にある福井鉄道の福井駅。JRの駅に近くなり造りも広々、乗り降りしやすくなった
↑福井駅西口広場にある福井鉄道の福井駅。JRの駅に近くなり造りも広々、乗り降りしやすくなった

 

ここ数年で様変わりした福井鉄道。カラフルな最新型の超低床車両、ドイツ生まれの車両、えちぜん鉄道から乗り入れる新型車両と、乗って楽しい車両が多い。休車になっている“湘南タイプ”の200形はこの後、どうなるのだろうか。保存され、新旧さまざまな電車に混じって走るようになれば、さらに魅力が増すだろう。今後の福井鉄道の動きに注目したい。

 

【TRAIN DATA】

路線名:福井鉄道福武線

運行事業体:福井鉄道

営業距離:21.5km

軌間:1067mm

料金:160円〜400円

開業年:1924(大正13)年

*前身の福武電気鉄道により武生新(現・越前武生)〜兵営(現・神明)間が開業