ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、EV(電気自動車)導入に積極的なメルセデス・ベンツの小型EV、EQAを取り上げる。カーマニアの目にはどう映る?
※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のGODカー】メルセデス・ベンツ/EQA
SPEC【250】●全長×全幅×全高:4463×1849×1624mm●車両重量:1990kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:190PS(140kW)/3600〜10300rpm●最大トルク:37.7kg-m(375Nm)/1020rpm●一充電走行距離:422km
640万円(税込)
メルセデス・ベンツが目指す未来形EVが見えてきた
安ド「殿! 殿はEVが嫌いでしたよね?」
永福「嫌いというわけではないが、ガソリン車のほうが1億倍好きだ」
安ド「物は言いようですね! そんな殿がなぜ今回、メルセデスのEVである『EQA』をリクエストしたんですか」
永福「メルセデスは2030年までに、すべての新車をEVにする準備を進めていると宣言した。つまりEV化の本丸だ」
安ド「たしかに!」
永福「つまり、私にとっては敵の本丸。そこに殴り込んでみようと思っただけだ」
安ド「で、どうでした?」
永福「……あまり何も感じなかったな」
安ド「エッ、それはナゼ!?」
永福「EQAは、乗り味がかなり自然だ。アクセルを深く踏み込めば、EVらしく出足はものすごく速いが、普通に踏んでいれば普通に走る」
安ド「それはまぁそうですが……」
永福「ベースはコンパクトSUVの『GLA』そのものだから、エンジン車と大きくは変わらない」
安ド「でも、かなり未来っぽく見えませんか?」
永福「グリルの穴をなくして、前後のルックスをより滑らかにしてあるから、ちょうど良い未来感は出ているな」
安ド「この高級でヌルッとした雰囲気が、これまでのクルマとは何かが違うと思わせてくれるんじゃないでしょうか!」
永福「それはある。しかし、それだけとも言える」
安ド「インテリアも、紫色のアンビエントライトがとても似合う雰囲気でした。ここ10年くらい、メルセデスが目指してたのはコレだったのか! と納得しました」
永福「言われてみれば、メルセデスのアンビエントライトは、ガソリン車だとラブホっぽく感じるが(笑)、EVだとEVっぽいな」
安ド「横長ディスプレイも、ちょうどいい塩梅のサイズになっていて、使いやすかったです。ただ、リアシートはけっこう狭いですね。このクラスですから仕方ないかもしれませんが」
永福「後席床下にEVのバッテリーがあって、床が少し高くなっているのも、そう感じる原因だろう。それより私は、このヌルッとした形のせいか、実際よりずっと幅広く感じ、取り回しに気を使ってしまった。これでもメルセデスの最小EVなのだが」
安ド「確かに最小ですね!」
永福「もうひとつ気になったのは、電費の悪さだ。400km程度あるはずの航続距離が、都内の渋滞走行時では、実測で200kmちょっとしか走れない数値だった。よく見ると、走行には58%しか使っておらず、残りはエアコンやオーディオなどに使われていた」
安ド「エッ!? そんなにですか」
永福「ひょっとして紫色のアンビエントライトが、電気を大量に食っているのかもしれぬ」
安ド「それはないと思います!」
【GOD PARTS 1】エンブレム(車名)
タイプは「EQ」、クラスは「A」!
EQAは、EQCに続くメルセデスとして2モデル目のピュアEVとして誕生しました。車名の「EQ〜」というのがEVシリーズを表し、「A」や「C」は車両のクラス、車格を表しています。EQAのベース車は、同社エントリーSUVのGLA。「A」の系譜なんですね。
【GOD PARTS 2】リアコンビランプ
曲線で左右を結ぶクールな形状
リアまわりのデザインでひと際目を惹くのが、このリアコンビネーションランプ。左右のランプが繋がっていて、なんだかバカボンに出てくるおまわりさん(本官さん)の目みたいですが、周囲はスッキリしていて、クールな印象です。
【GOD PARTS 3】ホイールデザイン
未来的でありながらミステリアス
これまでの同社のホイールといえば、もっとスポーティだったりラグジュアリーだったりと力強いイメージでした。しかしEQAでは、直線が放射線状に並んだ、幾何学模様のようなミステリアスなデザインが採用されています。
【GOD PARTS 4】ラゲッジルーム
ワケあって床下収納はなし!
流麗なデザインになっているため開口部はそれほど広くない印象ですが、内部はしっかり340L収納可能な空間が広がっています。ただしフロア下にリチウムイオン電池を搭載しているため、ラゲッジ床下収納はありません。
【GOD PARTS 5】給電口
普通充電と急速充電はバラバラに配置
従来のEVだと、フタを開けた中に普通充電と急速充電の給電口が並んでいたり、ボディの左右に分けられていることが多かったのですが、EQAでは右側のフェンダーとバンパーにバラバラに配置されています。あまり美しくありません。
【GOD PARTS 6】モーター
高級感を演出する、EVらしからぬアクセルの重み
モーターは従来車のエンジン同様、フロント前方に搭載され、前輪を駆動します。アクセルを踏み込めばその瞬間からスムーズに加速しますが、EQAはアクセルが重くて、重量感があります。高級感と言えるかもしれません。
【GOD PARTS 7】ダッシュボード
物置きとして使えない凹みはデザインのため
GLAと基本的には同じデザインで、助手席前には微妙な曲線を描くパネルが設置されています。ここは凹んでいますが、物を置いても安定しません。アンビエントライト(間接照明)に連動してうっすらと光ります。
【GOD PARTS 8】パドルシフト
回生ブレーキの制動力をコントロール
「シフト」と言いつつも、これはシフトチェンジ用のパドルではなく、回生ブレーキの強度を調整するコントローラーです。5段階の調整が可能で、最大の「D−−」にすると、アクセルを離すだけでかなり強烈な制動力がかかります。
【GOD PARTS 9】フロントブラックパネル
顔の中央を黒くしたグリルのオマージュ!?
全体的に「コレが未来のラグジュアリーのあり方だ!」と思わせる、先鋭的な雰囲気でまとめられています。ガソリン車にあったフロントグリル(正面の空気取り入れ口)は、ピアノブラックのパネルに代えられ、オマージュされています。
【これぞ感動の細部だ!】リアバンパー下
ガソリン車のようなえぐれは遊び心?
ボディ後方下部、リアバンパーの両端には、えぐれたようなデザインが見られます。ここは本来、ガソリン車であればマフラーの排気管が見えるあたり。排気ガスを排出しないのでマフラーはありませんが、このような痕跡を残すところにメルセデスの遊び心が見られて楽しいです。
撮影/我妻慶一
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