〜〜系or形の使い分け&なぜ末尾が奇数数字なのか、など〜〜
日本国内には多くの鉄道車両が走っている。これらの車両は、115、201、225……といった異なる数字が付けられ、分類され、判別することができる。便利な方法だが、これらは一定の法則により、付けられていることをご存知だろうか。
今回は、電車の番号付け、「系」や「形」などの「系列」の呼び方などに注目してみた。今さら聞きにくい〝系列や数字10の謎〟を見ていきたい。
【鉄道車両10の謎①】「系」「形」「型」どれが正しいの?
数字+系・形などのことを「系列」と言う。複数造られた同種類の車両をまとめた総称で、英語で言えばシリーズに近い。この「系列」数字の後ろにつく「系」「形」「型」の使われ方を見ていこう。
JRグループは、大半の車両の「系列」には後ろに「系」を付けて呼ぶ。よって、数字+「系」で呼んでおけば間違いない。例外として、気動車や電気機関車、ディーゼル機関車、事業用車などは「形」を付けることがある。
「形(がた)」を付ける会社は、「京成電鉄」「京浜急行電鉄」「小田急電鉄」といったところ。「系」と「型」が交じるのは「東武鉄道」。「系」と「形」が交じるのが「京阪電気鉄道(大津線の一部のみ「形」を使用)と独自の表記をする会社もある。
特異なのは西日本鉄道で、「形」を付けるが、あえて「けい」と読ませている。ちなみに小田急電鉄は「形」と「けい」と読ませる時期があったものの、現在は「がた」に統一している。
「系列」の呼び方は、数字の後ろが「系」「形」「型」のいずれでなければいけないという決まりはない。各会社それぞれのルールがあり、社内でその呼び方が一般的だったから、そのまま引き継いだという場合が多い。
【鉄道車両10の謎②】JR貨物では数字の後ろに「形式」付け?
前述したように、JRの旅客会社では機関車に「形」を付けている。一方で、JR貨物のみ「形式」を後ろにつける。読み方は「けいしき」で、EF64形式直流電気機関車、EF81形式交直流電気機関車といった具合に使う。
JR移行後の新しい機関車の場合には、ニックネームが後ろに付くので、「JR貨物 EF210形式 直流電気機関車 ECO-POWER桃太郎」といった、はなはだ長い正式名称となる。筆者は児童書を制作している時には、名称を「EF210 電気機関車 ECO-POWER桃太郎」とやや省略して表記することがあったが、それでも間違いではないというのが、JR貨物の見解だった。
ちなみにJR貨物で唯一の動力分散方式の貨物電車は、M250系と「系」を付けて呼んでいる。
【鉄道車両10の謎③】なぜJR電車の数字末尾は奇数なのか?
JRグループの電車の系列に付く数字のほとんどは、末尾が奇数だ。この決まりは、言われてみて改めて気づく方も多いのではないだろうか。例えば103系、115系、201系、211系、311系とざっとあげただけでも、大半の電車の末尾が奇数となっている。例外については後述するが、なぜ末尾が奇数なのだろう? これには国鉄時代からの伝統がある。
国鉄にも古くは末尾が偶数の電車が走っていた。72系などがそれにあたる。太平洋戦争後間もなくのころだ。72系という形式は、正式なものではない。便宜的に分類された電車の総称だった。当時、国鉄はまだ混乱期で、寄せ集め的な編成も多かった。混乱からようやく立ち上がり、そして生まれたのが、101系という電車だった。
それまでの電車が〝旧型電車〟というのに対して、101系は〝新性能電車〟として区分けされた最初の電車だった。この電車の登場に合わせて、1959(昭和34)年6月1日に「車両称号規程改正」を施行された。101系は、当初90系という名称だったが、新たな「系列」呼称の101系が付けられた。この車両から称号規程改正されることになり、後に登場する電車には、みな末尾が奇数の数字が割り当てられるようになった。JR移行後にも「系列」名の数字末尾が奇数となる決まりが引き継がれ(一部の会社をのぞく)、JR他社の車両と、重複しないようにするという暗黙の了解事項がある。JRグループ内で混乱を招かないよう、それぞれ配慮しているというわけである。
ひとつ注意したいのは、「系列」名と編成の個々の車両の「形式」名とは異なることだ。例えば103系ならば、クモハ102形とクモハ103形、モハ102形とモハ103形の組み合わせといったように、末尾が異なる数字で組まれている。全車が103という統一数字ではない。このうち103が最大の数字で、その最大の数字が103系という「系列」名として使われる。
【鉄道車両10の謎④】10や100の位の違いに意味があるの?
「系列」名の末尾に奇数数字が付けられているように、10の位、100の位にも意味がある。
まず100の位は電気方式の違いを示している。「100」「200」「300」は直流方式の電車、「400」「500」「600」は交直両用電車を指す。
「700」「800」は交流電車を指し、その多くは現在JR北海道とJR九州が所有している。JR北海道が700の数字を多く利用し、721系、731系、733系、735系などの数字の電車が揃う。一方、JR九州が「800」を主に利用、811系、813系、815系、817系、821系が揃う。JR北海道とJR九州で上手く使い分けているのが現状だ。
次に10の位を見てみよう。まず「0」は通勤形電車で、103系、201系などがその代表格となる。「10」「20」は近郊形電車で115系、415系、そしてJR四国の121系(現在は7200系に更新済み)があげられるだろう。後に1つの車両で、通勤形電車、近郊形電車を兼ねた「一般形電車」が多く開発されるようになったため、明確化されていた国鉄時代にくらべ、今はややあやふやな定義となっている。
「40」は事業用・非旅客電車。「50」〜「80」は急行形電車もしくは特急形電車で、急行形電車は消滅したものの、特急形電車には今も、このルールが踏襲されている。全国では「50」もしくは「80」が使われる例が多い。
なお「90」は事業用・検査用電車に付けられる。この90付きの電車は現在JR東日本の車両で頭に「E」を付けたE491系、E493系などが目につくぐらいだ。
【鉄道車両10の謎⑤】「900」を唯一つけた試作車は?
さて100の位で「900」に関して触れなかった。「900」は試作車を示す数字であり、今は「E」が頭に付くJR東日本の試験車両がわずかにあるのみだが、唯一かなりの車両数が造られた試験車両がある。901系という電車だ。この901系はJR東日本の記念碑的な電車で、1992(平成4)年3月に10両編成×3本が〝試作車〟として造られた。
後に209系と改番され、京浜東北線を走ることになる。JR東日本で「新性能電車」をより新しくした「新系列電車(車両)」と呼ばれ、その後の同社の車両造りに大きく影響を与えた車両でもある。
現在、209系は更新され、首都圏や房総地区を走るが、そろそろ一部車両の引退が見られるようになってきた。一部の編成は伊豆急行に引き取られて更新した上で使われることになった。〝重量半分・価格半分・寿命半分〟と割り切って生まれた電車だったにもかかわらず、意外に重宝がられ、長持ちしている。試作車が30両も造られたこと自体が異例だったが、それだけ手をかけた意味があったわけだ。
【鉄道車両10の謎⑥】JR東日本の車両につく「E」はいつから?
JR東日本の系列名にはご存知のように「E」が頭に付く。この「E」はもちろん東を意味する「East」の頭文字だ。JR東日本の車両であることが明確なように「E」付けが始められたものだった。初の「E」付き車両は1993(平成5)年に登場したE351系からだった。
しかし、その後のJR東日本の電車の系列名の数字は、JR他社とほぼバッティングしないものが付けられている。例外は東北地域を走るE721系と同じ721系の電車がJR北海道を走っていることぐらいだろうか。
【鉄道車両10の謎⑦】JR四国の車両の四桁数字をよく見ると
JRグループでは唯一、独自の系列名を付けているのがJR四国だ。国鉄形はすでに気動車以外にあまり走っておらず、新造された車両がJR四国の主力車両となっている。ユニークなのは、気動車も「キハ」等を頭に付けないことだ。
新造車両はすべて四桁数字で、1000形、1200形、1500形は一般形気動車(普通列車用)。この気動車類には後ろに「形」が付く。2000系、2600系、2700系は特急形気動車となる。電車は5000以上の数字で、近郊形電車は5000系、6000系、7000系、7200系。特急形電車は8000系、8600系というように特急や電車はみな「系」を後ろに付けて呼ぶ。
他のJRグループが意図的に奇数数字を使うことが多いのに対して、偶数数字を多く含むところが興味深い。
【鉄道車両10の謎⑧】新幹線は0系から800系で終わる?
ここからは新幹線電車の系列名を見ていこう。新幹線の系列名は元祖となる0系を除き、3桁数字が付けられることが一般的だった(JR東日本の現状は後述)。100系・300系は東海道・山陽新幹線を走った電車ですでに引退。200系は東北・上越新幹線用、400系は山形新幹線用に造られた。
500系は初めて時速300kmで走った〝栄光〟の車両で、今も山陽新幹線を走る。600系は欠番(詳細後述)で、700系は2020(令和2)年に引退している。800系は現在の九州新幹線の主力車両だ。
今のところ新幹線の3桁数字は800系までだ。現在の東海道・山陽新幹線の主力となっているN700系、N700A、N700Sなど、700の数字に〝new〟〝next〟を意味する「N」を付ける、また末尾に「A」「S」を付けて、さらに新しい車両であることを示している。
900という数字は試作車や事業用車両の形式名として付けられることが多い。ちなみにドクターイエローの形式名は「新幹線923形電車」である。すでに電気軌道総合試験車に900の数字が付けられていることもあり、今後も新幹線車両の900系は出現しないだろう。
今後、新しい新幹線電車が西日本に登場する時には、何系とつけられるのか、気になるところだ。
【鉄道車両10の謎⑨】新幹線600系は欠番だが実は?
新幹線の3桁数字で600系を欠番としたが、この形式名になる予定だった電車がある。初のオール2階建て新幹線として走ったE1系だ。
JR東日本では前述したように1993(平成5)年に新造したE351系から系列名の頭に「E」を付けるようになった。1994(平成6)年に登場したE1系もルール(車両番号付番方法)の変更に合わせたのだ。
新幹線の3桁数字は、いずれ足りなくなることがわかっていたこともあり、この「E」付けは、その後のJR東日本の新幹線の増備を見ると賢明だったかも知れない。新しいところでは、北海道新幹線への乗り入れ用の電車はJR東日本の車両が「E5系」、JR北海道の車両が「H5系」を名乗る。
北陸新幹線用の電車はJR東日本が「E7系」、JR西日本の電車は「W7系」を名乗り走っている。今後はJR北海道やJR西日本独自の車両は、この「H」付けや、「W」付けのルールが一般化するのかもしれない。
【鉄道車両10の謎⑩】新幹線E7系には3桁の形式名がある?
JR東日本の新幹線は、E1系以降、すべてがE○系となった。E1系は引退したものの、E2系からE7系までもれなく付けられ、すでにE8系は山形新幹線用の新車両になることが発表されている。
JR東日本の新幹線車両は、みな頭にEが付き、その後ろに一桁数字が付いて、これが系列名となる。一方でE7系ならば、車体に「E715-30」「E725-103」「E726-103」などの数字が書かれている。この数字のE715やE725は「形式」名で、後ろの数字は「車号」と呼ぶ数字だ。
ほかE714形は12号車となるグランクラスの制御車で運転台がある。E715形は11号車のグリーン中間電動車、E725形とE726形はそれぞれ普通中間電動車、E723形は1号車の普通制御車(運転台付き)となる。
このように形式名と車号を付けて、社内で管理運用しやすいようにしているのだ。
車両の系列名や形式名の数字には、いろいろな意味に含まれていて、なかなか奥が深いことがよく分かった。