乗り物
鉄道
2022/10/8 21:00

祝開業「西九州新幹線」! 新風が吹き込む沿線模様を追う

【変貌する西九州③】最短1時間20分で走る列車は?

ここからは西九州新幹線「かもめ」の車両と列車の概要を見ていこう。

↑大村市内を走る西九州新幹線。奥に大村市街と大村湾が広がる。このあたりの車窓風景が最も美しい

 

西九州新幹線で使用される車両は東海道・山陽新幹線用に導入されたN700Sの西九州新幹線用8000番台。西九州新幹線開業時に6両×4編成が導入された。デザインはJR九州の車両制作に大きく関わってきた水戸岡鋭治氏が担当した。車体カラーは白を基調にJR九州のコーポレートカラーの赤が配色された。

 

編成は長崎駅側3両が指定席で2席×2席の座席配置、武雄温泉駅側3両が自由席で、2席×3席の座席配置となっている。なお、グリーン車は連結されていない。新型車両らしく全席ともにひじ掛け部分にコンセントが付いている。最高時速は260kmだ。

 

列車本数は下り(長崎方面への列車)が計28本で、26本が武雄温泉駅〜長崎駅間を走る列車となる。そのうち4本は金・土曜・休日に運転される臨時列車だ。朝に走る2本のみ新大村駅→長崎駅間の列車で、新大村駅近くにある車両基地から出庫し、長崎駅へ向かう。対して上り(武雄温泉駅方面への列車)は計27本で、1本のみ深夜に長崎駅→新大村駅間を走る列車がある。金・土曜・休日に走る臨時列車は下りと同じく4本だ。なお武雄温泉駅〜長崎駅を走る下り・上り全列車が武雄温泉駅で特急「リレーかもめ」と連絡する。

 

西九州新幹線のみの所要時間は、各駅に停車する列車が30分もしくは31分、途中駅の嬉野温泉駅や新大村駅を通過する列車は23分〜28分となっている。

 

ちなみに、博多駅〜長崎駅間を最も早い所要時間1時間20分で走る下り列車は、博多駅10時4分の「リレーかもめ」17号で、武雄温泉駅で「かもめ」17号に乗り継げば長崎駅へは11時24分に到着する。また最速の上り列車は長崎駅9時50分発の「かもめ」16号で、武雄温泉駅で「リレーかもめ」16号に乗り継ぐことで博多駅には11時10分に到着する。こちらの所要時間も1時間20分となる。

 

【変貌する西九州④】3形式の「リレーかもめ」が使われる

ここで「リレーかもめ」の車両も触れておこう。

 

博多駅(一部は門司港駅発)発の特急「リレーかもめ」に使われる車両の多くが885系で、武雄温泉駅側の1号車は半分がグリーン車と指定席、2・3号車が指定席で、博多駅側3両が自由席となっている。

↑「リレーかもめ」885系。側面の表示では下りは武雄温泉駅での接続の注意書き付き(左側)、博多行きも「リレーかもめ」の名が入る

 

車体がグレーの787系も「リレーかもめ」として走っていて、こちらは8両編成。武雄温泉駅側の1号車はグリーン車でDXグリーンも付く。2〜4号車が指定席、5〜8号車が自由席だ。

 

一部の博多駅〜佐世保駅間を走る885系、もしくは783系使用の特急「みどり」の一部も、新幹線開業後は特急「みどり(リレーかもめ)」を名乗り接続列車として走る。885系「みどり」は6両編成で「リレーかもめ」と同編成、783系での運行の「みどり(リレーかもめ)」は4両(特急「ハウステンボス」車両を連結しない場合)、もしくは8両で運転される。

 

乗り継ぐ武雄温泉駅では、対面するホームに西九州新幹線N700S「かもめ」が停車し、武雄温泉駅側3両が指定席、長崎駅側3両が自由席となる。885系が「リレーかもめ」ならば同じ6両で、同じ号車がほぼ目の前(やや1号車側はずれる)に停まっているので、同じ号車の指定席を購入すれば、スムーズに乗継げるようになっている。

↑博多駅〜武雄温泉駅間は783系の特急「みどり(リレーかもめ)」、787系の特急「リレーかもめ」も走っている

 

【変貌する西九州⑤】3分という乗り継ぎ時間は短い&長い?

ここからは西九州新幹線のそれぞれの駅の様子を見ていこう。

 

駅は計5駅で、武雄温泉駅が起点となる。各駅停車の列車ならば嬉野温泉駅、新大村駅、諌早駅の順に停まり、終点は長崎駅となる。そのうち、嬉野温泉駅と新大村駅が、新幹線の開業に合わせて誕生した新駅となる。

 

筆者が訪れた日は開業してまだ1週間ということもあり、乗客以外にも新幹線を見学しようとする地元の人たちの姿が多く見受けられた。関心度は高いようだ。ちなみに入場券は各駅とも大人170円となっている。

 

まずは武雄温泉駅。これまでは佐世保線の途中駅だったが、この駅が「リレーかもめ」と「かもめ」の乗継ぎ駅となり利用者も増え、注目度も高まっている。

↑武雄温泉の御船山口(南口)。温泉最寄り駅とあって、駅前には湯煙が立ちのぼる噴水も。10番・11番線で乗り継ぎを行う(右上)

 

武雄温泉駅は従来の正面玄関だった楼門口(北口)と、再開発された御船山口(南口)がある。それぞれの名前は地元、武雄市の名所にちなむもので、楼門口は武雄温泉街にある朱塗りの楼門にちなむ。楼門は東京駅を設計したことで知られる辰野金吾の設計により1915(大正4)年に完成した。また御船山口は、佐賀藩の武雄領主が造営した御船山楽園にちなむ。

 

ホームは4面で、北側の1・2番線は在来線ホーム、また中間部に10・11番線ホームがある。そのうち10番線が特急「リレーかもめ」が発着するホームで、目の前の11番線が西九州新幹線「かもめ」の発着ホームとなる。1・2番線と10・11番線の改札口は異なっていて、10・11番線へ入るには新幹線および特急用の乗車券+特急券(入場券でも可)の購入が必要となる。

 

この武雄温泉駅では特急「リレーかもめ」が到着すると、乗り継ぐ新幹線「かもめ」が3分後に発車する。実際に見て、また自分も乗り継ぎを体験してみた。博多方面から「リレーかもめ」が到着すると、物珍しさもあり、まずはホームで写真を撮ろうとする観光客の姿が多い。特に先頭部1号車側で、乗換え前に写真を撮っておこうという人の姿が目についた。写真撮影を楽しんでいたのは鉄道ファンよりも、ごく普通の利用者が多い。とはいえ3分間は短く、撮影していた人たちもあわてて乗り込む姿が目立った。

 

一方、新幹線「かもめ」から特急「リレーかもめ」への乗り継ぎ時間も同じく3分。筆者が実際に体験した時には、のんびり乗り降りする人もいて、下車するまでに1〜2分かかってしまう。リレーかもめが885系ならば乗ってきた号車の、ほぼ目の前に同一号車が停車しているので迷わずに済むが、意外に慌ただしいようにも感じた。

 

「リレーかもめ」「かもめ」の自由席は、観光シーズンならば着席するのも大変そうに感じた。高齢の利用者や、親子連れはなるべく指定席の利用をおすすめしたい。

 

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4