〜〜日本一短い新幹線「西九州新幹線」最新レポート〜〜
武雄温泉駅(佐賀県)と長崎駅を結ぶ西九州新幹線が9月23日に開業した。新しい路線の誕生に地元の期待は高まる。開業した1週間後に実際に駅を訪ね、列車に乗車してみると、現状がより見えてきた。新幹線開業でどのように変わったのか、また在来線を含め沿線はどのように変わろうとしているのか迫ってみたい。
*取材は2022(令和4)7月1日と、9月30日・10月1日に行いました。
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【変貌する西九州①】建設予定からこれまでを整理してみる
まずは西九州新幹線が計画された当初から、現在に至るまでを見ておこう。
西九州新幹線が計画されたのは今から50年前の1972(昭和47)年12月12日にさかのぼる。全国新幹線鉄道整備法の中で「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」に告示され、翌年に九州新幹線(西九州ルート)として整備計画が決定された。さらにその35年後にあたる2008(平成20)年に武雄温泉〜諌早間の工事が着工、2022(令和4)年9月23日に武雄温泉駅と長崎駅間66.0kn(営業キロ69.6km)が完成し、暫定開業に至った。
今回、新幹線の未開業区間となっている武雄温泉駅〜新鳥栖駅間は、当初フリーゲージトレイン(軌間可変電車)が導入される計画だった。しかし、技術的な問題が解決できず、新幹線の一般車両に比べて割高かつ維持経費がかかることが予想され、また高速化が不向きといった諸問題が重なり導入が断念された。その後に全線フル規格での建設を求める方針が国から示された。こちらのフル規格での新線建設も、佐賀県の建設費負担や、ルート選定などの問題で、佐賀県の同意が得られない状況となっている。
さらに、莫大な建設費に対しての貸付料(=施設使用料)のバランスが取れていない課題も明らかになった。武雄温泉駅〜長崎駅の建設費は総額6197億円に及んだ。対してJR九州から施設の使用料が支払われるが、一年間で5億1000万円になることが明らかになった。開業してから30年間で総額153億円になると試算されている。
当初に予想していた貸付料(=施設使用料)は年間約20億円と算出されていたのだが、九州新幹線と結ばれていないなど、収入増とはなりにくい要素も見込まれ、想定を大幅に下回ることになった。支払われる建設費のうち3分の2は国が、3分の1は自治体の負担になると報道されている。
西九州新幹線の66.0km区間も着工してから14年という長い年月がかかった。残り武雄温泉駅〜新鳥栖駅間(現在の営業キロは50.4km)の着工は目処がたっていない状況で、いつになったら全線が結ばれるのか、現状では次世代に夢を託すしかなさそうだ。
【変貌する西九州②】新幹線で平均26分の所要時間短縮に
9月23日の西九州新幹線の暫定開業では、博多駅〜武雄温泉駅間を走る特急「リレーかもめ」と、西九州新幹線「かもめ」が佐世保線の武雄温泉駅で乗継ぎ可能な形で運転される。両列車は同じホームで対面して停車し、スムーズに乗り継げるように調整された。
西九州新幹線が開業する前と開業後の所要時間、運賃+特急料金などの変化を見ておこう。まずは博多駅〜長崎駅間の所要時間がどのぐらい短縮されたかを見ていこう。
◇長崎本線・下り特急「かもめ」を利用の場合(9月22日まで)
所要時間:1時間50分〜2時間11分(平均2時間2分)/列車本数22本
◇長崎本線/佐世保線・下り特急「リレーかもめ」+西九州新幹線「かもめ」を利用の場合(9月23日以降)
所要時間1時間20分〜1時間50分(平均1時間36分)/列車本数26本(臨時列車も含む+乗り継ぎ時間3分を含む)
全列車の所要時間の平均を計算してみると在来線利用の特急「かもめ」は博多駅から長崎駅まで平均2時間2分で走った。一方、「リレーかもめ」+西九州新幹線「かもめ」を利用すると平均1時間36分で、新幹線の利用効果は26分早く着くと算出できた。
ちなみに、新幹線利用時の最速列車の所要時間と、時間がかかる列車の所要時間には30分の差が出た。この差に関しては、まず新幹線の途中駅を何駅停まるかによる。最速の列車は途中の嬉野温泉駅と新大村駅の2駅を通過する。一方、所要時間がかかる列車は途中3駅すべてを停車して走る。
加えて時間がかかる列車の場合は、佐世保線の単線区間の影響も受けている。佐世保線の江北駅〜武雄温泉駅間には単線区間があり、途中駅で行き違う列車との待ち合わせが必要となる。これらの要素により、列車の所要時間に差が出てしまうわけだ。
さて、特急料金の変化に目を転じてみよう。ここでは、博多駅〜長崎駅に加えて、一つ手前の諌早駅までの金額も記した。( )内は新幹線開業前の特急料金だ。両駅間とも運賃の変更はなかった。
博多駅〜諌早駅:運賃2530円、特急料金2740円(1780円)
博多駅〜長崎駅:運賃2860円、特急料金3190円(1940円)
特急料金は博多駅〜諌早駅間の場合に960円、博多駅〜長崎駅間の特急料金は1250円高くなった。ちなみに自由席の場合は530円引き(嬉野温泉駅のみ880円引き)となる。
【変貌する西九州③】最短1時間20分で走る列車は?
ここからは西九州新幹線「かもめ」の車両と列車の概要を見ていこう。
西九州新幹線で使用される車両は東海道・山陽新幹線用に導入されたN700Sの西九州新幹線用8000番台。西九州新幹線開業時に6両×4編成が導入された。デザインはJR九州の車両制作に大きく関わってきた水戸岡鋭治氏が担当した。車体カラーは白を基調にJR九州のコーポレートカラーの赤が配色された。
編成は長崎駅側3両が指定席で2席×2席の座席配置、武雄温泉駅側3両が自由席で、2席×3席の座席配置となっている。なお、グリーン車は連結されていない。新型車両らしく全席ともにひじ掛け部分にコンセントが付いている。最高時速は260kmだ。
列車本数は下り(長崎方面への列車)が計28本で、26本が武雄温泉駅〜長崎駅間を走る列車となる。そのうち4本は金・土曜・休日に運転される臨時列車だ。朝に走る2本のみ新大村駅→長崎駅間の列車で、新大村駅近くにある車両基地から出庫し、長崎駅へ向かう。対して上り(武雄温泉駅方面への列車)は計27本で、1本のみ深夜に長崎駅→新大村駅間を走る列車がある。金・土曜・休日に走る臨時列車は下りと同じく4本だ。なお武雄温泉駅〜長崎駅を走る下り・上り全列車が武雄温泉駅で特急「リレーかもめ」と連絡する。
西九州新幹線のみの所要時間は、各駅に停車する列車が30分もしくは31分、途中駅の嬉野温泉駅や新大村駅を通過する列車は23分〜28分となっている。
ちなみに、博多駅〜長崎駅間を最も早い所要時間1時間20分で走る下り列車は、博多駅10時4分の「リレーかもめ」17号で、武雄温泉駅で「かもめ」17号に乗り継げば長崎駅へは11時24分に到着する。また最速の上り列車は長崎駅9時50分発の「かもめ」16号で、武雄温泉駅で「リレーかもめ」16号に乗り継ぐことで博多駅には11時10分に到着する。こちらの所要時間も1時間20分となる。
【変貌する西九州④】3形式の「リレーかもめ」が使われる
ここで「リレーかもめ」の車両も触れておこう。
博多駅(一部は門司港駅発)発の特急「リレーかもめ」に使われる車両の多くが885系で、武雄温泉駅側の1号車は半分がグリーン車と指定席、2・3号車が指定席で、博多駅側3両が自由席となっている。
車体がグレーの787系も「リレーかもめ」として走っていて、こちらは8両編成。武雄温泉駅側の1号車はグリーン車でDXグリーンも付く。2〜4号車が指定席、5〜8号車が自由席だ。
一部の博多駅〜佐世保駅間を走る885系、もしくは783系使用の特急「みどり」の一部も、新幹線開業後は特急「みどり(リレーかもめ)」を名乗り接続列車として走る。885系「みどり」は6両編成で「リレーかもめ」と同編成、783系での運行の「みどり(リレーかもめ)」は4両(特急「ハウステンボス」車両を連結しない場合)、もしくは8両で運転される。
乗り継ぐ武雄温泉駅では、対面するホームに西九州新幹線N700S「かもめ」が停車し、武雄温泉駅側3両が指定席、長崎駅側3両が自由席となる。885系が「リレーかもめ」ならば同じ6両で、同じ号車がほぼ目の前(やや1号車側はずれる)に停まっているので、同じ号車の指定席を購入すれば、スムーズに乗継げるようになっている。
【変貌する西九州⑤】3分という乗り継ぎ時間は短い&長い?
ここからは西九州新幹線のそれぞれの駅の様子を見ていこう。
駅は計5駅で、武雄温泉駅が起点となる。各駅停車の列車ならば嬉野温泉駅、新大村駅、諌早駅の順に停まり、終点は長崎駅となる。そのうち、嬉野温泉駅と新大村駅が、新幹線の開業に合わせて誕生した新駅となる。
筆者が訪れた日は開業してまだ1週間ということもあり、乗客以外にも新幹線を見学しようとする地元の人たちの姿が多く見受けられた。関心度は高いようだ。ちなみに入場券は各駅とも大人170円となっている。
まずは武雄温泉駅。これまでは佐世保線の途中駅だったが、この駅が「リレーかもめ」と「かもめ」の乗継ぎ駅となり利用者も増え、注目度も高まっている。
武雄温泉駅は従来の正面玄関だった楼門口(北口)と、再開発された御船山口(南口)がある。それぞれの名前は地元、武雄市の名所にちなむもので、楼門口は武雄温泉街にある朱塗りの楼門にちなむ。楼門は東京駅を設計したことで知られる辰野金吾の設計により1915(大正4)年に完成した。また御船山口は、佐賀藩の武雄領主が造営した御船山楽園にちなむ。
ホームは4面で、北側の1・2番線は在来線ホーム、また中間部に10・11番線ホームがある。そのうち10番線が特急「リレーかもめ」が発着するホームで、目の前の11番線が西九州新幹線「かもめ」の発着ホームとなる。1・2番線と10・11番線の改札口は異なっていて、10・11番線へ入るには新幹線および特急用の乗車券+特急券(入場券でも可)の購入が必要となる。
この武雄温泉駅では特急「リレーかもめ」が到着すると、乗り継ぐ新幹線「かもめ」が3分後に発車する。実際に見て、また自分も乗り継ぎを体験してみた。博多方面から「リレーかもめ」が到着すると、物珍しさもあり、まずはホームで写真を撮ろうとする観光客の姿が多い。特に先頭部1号車側で、乗換え前に写真を撮っておこうという人の姿が目についた。写真撮影を楽しんでいたのは鉄道ファンよりも、ごく普通の利用者が多い。とはいえ3分間は短く、撮影していた人たちもあわてて乗り込む姿が目立った。
一方、新幹線「かもめ」から特急「リレーかもめ」への乗り継ぎ時間も同じく3分。筆者が実際に体験した時には、のんびり乗り降りする人もいて、下車するまでに1〜2分かかってしまう。リレーかもめが885系ならば乗ってきた号車の、ほぼ目の前に同一号車が停車しているので迷わずに済むが、意外に慌ただしいようにも感じた。
「リレーかもめ」「かもめ」の自由席は、観光シーズンならば着席するのも大変そうに感じた。高齢の利用者や、親子連れはなるべく指定席の利用をおすすめしたい。
【変貌する西九州⑥】地元の観光関連産業はまだ様子見?
武雄温泉駅の次の駅は嬉野温泉駅となる。嬉野温泉駅は嬉野市内にできた初めての鉄道駅だ。嬉野温泉は「日本三大美肌の湯・嬉野温泉」と商標登録されている温泉で、美肌の湯に定評がある。
嬉野温泉駅から温泉街の中心にある公衆浴場「シーボルトの湯」までは西へ約1.8kmの距離があり、駅からはバスやタクシーの利用が賢明だ。これまで嬉野温泉へのアクセスは、武雄温泉駅からバス利用、もしくは高速バスを利用して、長崎自動車道の嬉野インターチェンジバス停からタクシー利用者が多かっただけに、新駅開業でどのように人の流れが変わるか注目される。
嬉野温泉駅を訪れたのは平日の日中だっただけに人もまばら。駅構内に売店等はまだなく、温泉口(西口)の野外に臨時の出店(弁当などを販売)が1軒あるのみで、駅前広場の整備工事は完了していない状態だった。
武雄温泉駅から嬉野温泉駅までは10.9kmで、新幹線の場合、出発したらあっという間についてしまう。上り列車ならば、嬉野温泉駅を出発したら、すぐに武雄温泉駅到着のアナウンスが流れるほどだった。一方、嬉野温泉駅から次の新大村駅間は21.3km(諌早駅〜長崎駅間も同じ21.3km=実キロ)とやや離れている。それだけにこの駅間は列車も加速した様子がうかがえた。
新大村駅も新駅となるが、大村線の線路上に設けられたこともあり、大村線の新大村駅も同時に開業した。場所は大村市の中心街がある大村駅から北へ2駅めで、距離は約2.7kmと離れている。観光案内所が設けられているものの、駅周辺の開発はまだこれからといったところだ。
ちなみに、筆者は今回の行程では一部レンタカーを利用した。多くの観光客が到着する長崎空港は大村市内にある。空港は大村湾の海上に埋め立て地に設けられている。大手レンタカー会社の事務所は、みな空港内にデスクを設け、大村市街に営業所が設けられているのだが、新大村駅までの送り迎えを始めたかどうか尋ねてみた。しかし、送迎はないと回答。話を聞くと今後は利用状況を見ながら送迎を始めるかどうか検討中とのことだった。
バス事業者も新大村駅の駅開業に合わせて立ち寄る路線バス便を設けたもののまだ本数は少なめ。新大村駅への地元の公共交通機関の本格的なアクセスは、まだ先のことになりそうだ。
【変貌する西九州⑦】大きく変わった諌早駅。乗換えも便利に
西九州新幹線の開業で大きくリニューアルしたのが諌早駅だ。諌早駅は在来線の長崎本線、大村線と接続、さらに島原半島へ向かう島原鉄道の起点駅でもある。ホームは1〜4番線がJRの在来線、11・12番線が新幹線ホームとなった。改札を出ると東西自由通路があり、そこにはスターバックスコーヒーやコンビニエンスストアが設けられ、利用者も多く賑わいを見せていた。
東口には駅前ホテルが新設され、高層マンションも建てられた。駅前のバスロータリーが大きく整備され、拠点駅として機能していることを窺わせる。諌早市は長崎県内のほぼ中央部にあり、もともと交通の要衝として栄えてきたが、今回の新幹線開通での駅リニューアルにより、より活気が増したように見えた。
【変貌する西九州⑧】長崎駅の150m移動で流れが変わるか?
最後は終点の長崎駅だ。長崎市内は周囲を山に囲まれたところが多く、平地が少なめだ。長崎駅周辺も例外ではない。西九州新幹線は市街の東側で新長崎トンネル7460mを出ると、すぐに長崎駅へ到着する。
長崎駅はここ数年で大きく変わった。元は駅前に国道202号が通り繁華な印象が強かった。一方で、在来線の長崎本線は地上部を走るため、市内の踏切が混雑しがちで、高架化が必要とされていた。そこで旧駅の西側にあった車両センターの場所へ駅自体を移動し、まず2020(令和2)年3月28日に在来線用の新しい長崎駅が設けられた。西九州新幹線の長崎駅はこの東側に平行して造られた。
在来線は1〜5番線、新幹線ホームは11〜14番線ホームとなる。駅下には総合観光案内所や「長崎街道かもめ市場」という大きな土産売り場が設けられた。
150mほど駅の位置を西へ移動したことにより新たな問題も出てきている。踏切対策のため移動、高架化した長崎駅だが、市内の公共交通機関は、長崎電気軌道が運行する路面電車と路線バスの利用者が多い。だが路面電車と路線バスの駅前にある停留所は、移動工事は行われていない。なぜだったのだろう?
【変貌する西九州⑨】電停の移動を断念した長崎の路面電車
長崎駅周辺の地形は特殊だ。長崎駅の西側は浦上川が迫り、東側は国道202号が南北に通り抜ける。国道の東側はすぐに傾斜地が迫っている。平地が限られていて国道202号以外に広い通りがない。この国道の中央部を路面電車が走り、長崎駅前電停がある。さらに多くの路線バスも路面電車の左右を走っている。長崎駅前にある交差点では国道202号から桜町通りという幹線道路が分岐している。他に道がないだけに国道202号は車で混みあっている。
路面電車を新駅の側に移動するプランも検討されたのだが断念。そこには長崎ならではの事情があった。
長崎電気軌道の路面電車の利用者は、市内の南北の移動に電車を利用する人が多い。長崎駅前電停の乗降客はそれほど多くないそうだ。つまり駅前電停をスルーしてしまう利用者が多い。そういった事情もあり、150mほどずらした新駅へ迂回するルートを設けてしまうと、より時間がかかることになり逆に不便になるという。渋滞しやすい国道202号を横切るのも、さらなる渋滞を招く。路線バスも同様の事情がある。
さらに、これまで路面電車を利用する場合には国道をわたる歩道がないため、国道202号上に設けられた高架広場へいったん階段を上がり、さらに電停への階段を下る必要があった。この上り下りは40段以上にもなっていた。今回の駅前再開発で多少は改善され、駅前電停の専用エレベーターが9月20日に設置された。だが、駅側から高架広場に上るエレベーターの位置が分かりにくく、新駅から仮通路を歩き、面倒とばかり高架広場の階段を上り下りする人が目についた。
将来的には旧駅前に多目的広場と、新駅からの通路がつくられ、エスカレーターも設けられるという。ただし、どう改良されても150m歩くことに変わりはない。西九州新幹線から路面電車に乗継ぐ場合、最低でも10分以上の余裕は見ておくことが必要なようだ。
【変貌する西九州⑩】新長崎駅ビルが誕生すればさらに賑やかに
長崎駅の周辺の再開発も進みつつある。かもめ口(東口)に加えて、いなさ口(西口)が整備された。いなさ口の駅前にはバス・タクシーの乗り場も設けられたが、人の姿もまばらで、これからといった印象だった。
新駅と以前の駅があった、その中間部の開発も急ピッチで進む。駅の東隣には「新長崎駅ビル」が建てられている。こちらは2023年秋に開業予定で、1〜3階は商業施設が入居、さらに上部は高級ホテルやオフィスが入居する予定となっている。
連なるように既存の駅ビル「アミュプラザ長崎」が建っている。こちらには1階から5階まで全国の有名店などの商業施設や、映画施設が入っている。新駅ビルの誕生で、ますます駅周辺は華やかになっていきそうだ。
【変貌する西九州の⑪】長崎本線の肥前浜〜諌早間が非電化に
西九州新幹線の開業にあわせて、取り巻く在来線もかなり変わりつつある。
まず長崎本線と佐世保線が分岐していた肥前山口駅(ひぜんやまぐちえき)が江北駅(こうほくえき)と名を改めた。地元・江北町(こうほくまち)の要望による変更で、駅名改名の関連費用も町のお金でまかなわれた。
佐世保線は「リレーかもめ」が走ることにより、より幹線として列車本数が増えることになった。一方で、従来の長崎本線の江北駅〜長崎駅間が大きく変わることになった。
これまで全線が電化されていたが(喜々津駅〜浦上間の長与支線を除く)、肥前浜駅〜長崎駅間は非電化となり、走る車両が電車から気動車へ変更された。江北駅〜肥前浜駅間のみ電化区間として残され、博多駅(一部は門司港駅発)〜肥前鹿島駅間を結ぶ特急「かささぎ」が1日7往復することになった。肥前鹿島駅はこれまで30分〜1時間間隔で走る特急「かもめ」の停車駅として便利だっただけに、新幹線の開業でやや不便になった。
西九州新幹線開業後の大村線の変更点も触れておこう。新大村駅が誕生したことにより、大村線沿線は大きく変わりつつある。大村市内には、新大村駅の先、2つめに大村車両基地駅という新駅が誕生した。駅名通り、西九州新幹線の大村車両基地に併設された在来線の新駅だ。
大村線は長崎市と長崎県第二の都市・佐世保市を結ぶ路線として機能してきた。ローカル線ながら、乗車率も高い。その路線が西九州新幹線と接続したことで、新たな利用者も増えていきそうだ。さらに観光要素も見逃せない。新大村駅から4つめの千綿駅(ちわたえき)は、ホームの目の前に大村湾が迫る駅で、〝映える駅〟として知られてきた。その駅へのアクセスが便利になった。この千綿駅に停車する観光列車も新たに誕生した。
【変貌する西九州⑫】早くも人気に!沿線を走る新たなD&S列車
西九州新幹線の開業と合わせて9月23日から走り始めた新たな観光列車が、「ふたつ星4047(ふたつぼしよんまるよんなな)」である。
「ふたつ星4047」はキハ40形、キハ140形を改造したJR九州のD&S(デザイン&ストーリー)列車の1本として誕生したもので、デザインは西九州新幹線N700Sも制作した水戸岡鋭治氏が担当した。外装は光るパールメタリックで、ゴールドのロゴとラインがあしらわれる。1号車と3号車は普通車指定席で、中間車はビュッフェ・ラウンジ車。こちらは物販用のカウンターなどが設けられた。
運行ルートは、西九州新幹線の周囲を走る長崎本線と大村線、佐世保線をぐるりとめぐる行程で、主に金曜日〜月曜日と祝日などに運行される。午前便と午後便があり、午前便は武雄温泉駅から江北駅へ、さらに長崎本線の肥前浜駅、多良駅、諌早駅を巡り長崎駅へ至る。
午後便は、長崎駅から諌早駅へ。そこから大村線へ入り、新大村駅、千綿駅、ハウステンボス駅、早岐駅(はいきえき)と走り、武雄温泉駅へ至る。長崎本線、大村線とも海景色が楽しめる路線で人気列車となりそうだ。
西九州新幹線の開業でその途中駅だけでなく、街や沿線も変わりつつある姿が見て取れた。また新しい観光列車の運行により、新たな魅力も加わった。あくまで暫定開業という一面もあるが、せっかくの新線開業で変わる沿線の魅力を満喫したいものである。