乗り物
2022/11/3 20:45

「LUUP」電動キックボードって実際、バスや電車より早い? お得? 六本木〜渋谷で試乗しつつ、性能も確かめた

最近、街中でもニュースでも見かける機会が増えている電動キックボード。特に、LUUP(ループ)が有名ですね。都内では実証実験事業としてシェアリングサービスも開始されています。事故などの報道もあり、不安を抱いている人もいるかと思いますが、実際に乗ってみてフィーリングや注意点、お得感などを探ってみました。

 

シェアリングサービスはヘルメット「不要」

電動キックボードが注目されているのは、2022年4月に可決された道路交通法の改正案によって「特定小型原動機付自転車」という新たなカテゴリーに分類されることが決まったから。これによって、16歳以上であれば運転免許不要で、ヘルメットの着用も任意で乗れることになりました。(その代わり、最高速度は20km/hに制限されます)

 

ただ、この改正道交法はまだ施行されていないので、現状の電動キックボードは原動機付自転車のカテゴリーになり、免許やヘルメットが必要。シェアリングサービスは実証実験としてエリアと事業者を限定して行われているものなので、こちらは法の施行に先んじてヘルメット不要で乗ることができますが、運転免許の携帯は必要とされています。

↑今回、利用してみたのは都内で多くのスポットで提供されているLUUP。駅の近くに設置されていることが多い

 

LUUPの利用には、事前にスマホアプリをダウンロードし、登録を済ませておく必要があります。登録には、決済用のクレジットカード情報のほか運転免許証の登録(原付免許不可)も必須。そして、電動キックボードに関わる道路交通法のテストにもアプリ上で答えて全問正解しておかなければなりません。

↑免許証を撮影して登録。そして左側通行や歩道走行はNGなどの交通ルールを理解しておく必要がある

 

登録やテストにはそこそこ時間がかかるので、借りようとする現場ではなく事前に済ませておいたほうが良さそう。そして、アプリからレンタルするポート(専用駐車場)と車両、そして返却するポートを設定すれば予約完了です。返却ポートを登録する必要があるので、目的地を決めずにブラブラするような使い方は想定していないのでしょう。

↑レンタルした電動キックボード。都内では見かける機会も増えてきています

 

↑駆動モーターは後輪に組み込まれています

 

↑特定小型原動機付自転車に分類されるのでナンバーやテールランプ、ウィンカーなどを装備

 

↑フロントにはサスペンションが装備されていますが、タイヤ径が小さいので段差には注意が必要

 

↑アクセルはハンドルの右手側にあって、親指で押し下げるように操作します

 

↑ハンドルの左手側にはウィンカーとホーンを鳴らすためのボタンがあります

 

電動キックボードで公道を走る上での注意点

ここからは、実際にLUUPの電動キックボードに乗りながら、公道を走る上での注意点を紹介していきましょう。まず、現状では特定小型原動機付自転車は歩道を走ることができません(改正道交法が施行されれば6km/h以下での走行が可能となる)。歩道(横断歩道も)は押して通行する必要があります。走行できるのは、車道の左側。普通自転車専用通行帯(自転車レーン)は走ることができます。また、交通量の多い特定の道路は走行禁止となっており、そのエリアはアプリ上に赤い枠で表示されます。

※初出では「自転車歩行者道(自歩道)や普通自転車専用通行帯(自転車レーン)は走ることができます。」としておりましたが、事実が誤っておりました。正しくは電動キックボードでは自転車歩行者道(自歩道)の走行ができません。

↑予約した電動キックボードを借りるには、ハンドル部に貼られているQRコードを読み込みます

 

↑歩道部分の走行は禁止されているので、押して通行する必要があります

 

↑走り出す際は、足で地面を蹴って進みはじめてからアクセルレバーで加速する

 

LUUPの最高時速は約15km/h。ママチャリで走っているのと同程度の速度です。個人的には、バイクに乗るときはもちろん、自転車に乗るときもヘルメットをかぶるようにしているので、ノーヘルで車道を走るのはやや不安でした。速度的には、それほど危なくはありませんが、速度差のあるクルマと接触してしまった場合、ヘルメットがあったほうがリスクが抑えられそうです。また、道路の左側は自転車やバイクも走るので、その点も注意が必要だと感じました。

 

個人的に、最も気をつける必要があるなと感じたのは右折。原付の場合、2車線以上ある道路では2段階右折をする必要がありますが、特定小型原動機付自転車の場合は2段階右折は禁止です。右折レーンがあるような交差点では、クルマと同様に右折レーンから曲がる必要がありますが、15km/hしか出ない乗り物では少なからず危険を感じます。LUUPでも、そうしたシーンでは、キックボードから降りて横断歩道を押して渡り、車列に並ぶ方法を推奨していますが、この走り方が危険が少ないでしょう。

↑LUUPの推奨する右折方法。青い矢印の部分は降車して押し歩きます

 

↑降車していれば歩行者扱いになるので、横断歩道を通行することができる

 

↑横断歩道を渡ってから、行きたかった方向に向かう車列に並べば不安なく右折できます

 

LUUPはバスに比べて早いのか? お得なのか??

今回は東京・渋谷から六本木に向かう約3kmの道のりを走りました。時間的には15分程度。担当編集者には、ほぼ同時刻に渋谷駅前からバスの乗って六本木駅前に向かってもらったのですが、担当編集者のほうが少し早く六本木に到着していました。筆者は気づいていませんでしたが、途中は抜きつ抜かれつのデッドヒートだったとのこと。道路の渋滞具合にもよりますが、時間的にはだいたい同じくらいと考えて良さそうです。

↑走行時は車道の左側を走ります。普通自転車専用通行帯も走行可能

 

料金的にはどうでしょうか? LUUP電動キックボードはライド基本料金50円(税込)、時間料金1分あたり15円(税込)となります。LUUPやバス、電車、タクシーで渋谷から六本木までの移動料金を比較してみた結果は以下のとおり。

・LUUP電動キックボード:渋谷から六本木 275円(約15分)

・都営バス:渋谷駅前から六本木駅前 210円(約15分)

・電車:渋谷駅→青山一丁目駅→六本木駅 276円(13〜18分・乗り換え時間含む)

・タクシー:渋谷から六本木 日中予想料金1380円(約10分)

※編集部調べ

 

移動時間はほぼ変わらなかったけど、料金で言うとわずかにバスに軍配が上がりました(タクシーは言わずもがなですね……)。あえて、バスのデメリットを述べると乗車までの待ち時間が多少発生してしまうし、時間帯によっては満員バスで不快を感じる時もあります。そういう時は、予約して気軽に乗れる電動キックボードの方が移動としては快適かもしれませんね。

↑返却予約したポートに電動キックボードを駐めたらアプリで写真を撮って記録したら返却完了です

 

近年は電動アシスト自転車のシェアリングサービスも拡大していますが、電動キックボードはそれよりは気軽に乗れて、近距離の移動に向いている印象でした。こうした電動のモビリティでは、よく”ラスト・ワン・マイル”という言葉が使われますが、まさに電車などの公共交通機関を降りて目的地までの1マイル(約1.6km)の移動に適していると言えそうです。

 

撮影/松川 忍

 

 

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