乗り物
2020/6/8 20:45

立って乗れて公道も走れる電動バイク「X-SCOOTER LOM」試乗レポート! ラストワンマイル・モビリティに最高でした

思いついたらサッとまたがり気軽に乗り出せる。そんな新しい移動感覚を実現した電動バイク「X-SCOOTER LOM(クロススクーターロム)」がgrafit(グラフィット/本社:和歌山市)から登場。5月28日よりMakuakeにて先行販売されています。その概要について試乗レポートを交えながらレポートしたいと思います。

↑“立ち乗り”スタイルで乗る「X-SCOOTER LOM」は、街の中でも圧倒的な存在感を放つ。14万9600円(税込)で販売予定

 

折り畳んで持ち運びも自由! アプリ/BMS搭載で快適な走行をアシスト

X-SCOOTER LOMは、2017年に登場した「GFR-01」に続くグラフィットの第2弾となる製品。デビューは2020年1月に米国ラスベガスで開催された世界最大のIT家電ショー「CES2020」です。当初は世界的に需要が高まっているシェアリングモビリティとしての採用を目論んでいましたが、新型コロナウイルスの影響拡大によってその計画は中断せざるを得なくなりました。そこで、その後に計画されていた日本での販売を先行することになったのです。

 

バイクと言えば、これまではサドルの上に座って乗車するスタイルが一般的でした。しかし、このX-SCOOTER LOMが採用したのは、立ったままで乗る新たな乗車スタイル。グラフィットの鳴海禎造社長は発表会の席上、「自転車のように風景に馴染み過ぎず、目に止まるデザインにしたかった。特に立ち乗りスタイルの電動バイクだからこそ、運転している時の姿が美しくなるよう、フォルムを計算してデザインした」と語り、X-SCOOTER LOMが新たなスタイルを持った電動バイクであることを強調しました。

 

立ったままで乗るX-SCOOTER LOMは、そのスタイルから電動キックボードと比較されることが多いようです。しかし、X-SCOOTER LOMは前輪を12インチ、後輪10インチと、電動キックボードに比べてかなり大きなタイヤ径を採用していることに大きな違いがあります。これにより電動キックボードをはるかに超える高い走破性と安定した走りを実現。

↑前後輪ともディスクブレーキを装着。自転車のブレーキと同様、前後のブレーキをバランス良く制動させるのがコツだ

 

さらに電動キックボードは足を前後に置くことを強いられますが、X-SCOOTER LOMでは通常のバイクのように左右を並行にして置くことが可能。これは転倒リスクを減らし、自然な体勢で乗車できることにつながります。また、通販サイトなどで数多く販売されてる電動キックボードの大半は公道を走ることはできず、あくまで特定エリア内での走行に限られます。その点、X-SCOOTER LOMは原付1種に分類され、公道を走るために日本の法規に合わせたライトやウインカー、ミラーなどの保安部品を装着してナンバーも取得しています。

↑公道を走れるように、ストップランプや方向指示器など、保安系装置も標準で備わる

 

公道を走るために搭載する電動モーターはパワフルな仕様で、3つの走行モード(ECO/MID/HIGH)で公道を自在に走れる能力を備えました。重量は16.5kg(バッテリー込み)とやや重めですが、それでも折りたためば車のトランクにも収納できますし、オフィスに持ち込んでデスクの横に置いておくことも可能です。

↑ハンドルの右側に設置されたコントロール部。アクセルは下のレバーを押すことでONされるが、安全上、停止時はONされず、助走が付いてからパワーが駆動輪に伝わる仕組みとなっている

 

↑ハンドル左側に設置された保安系装置。上が方向指示器で、下は警告用のホーン

 

↑ハンドルは左右を折りたたんでコンパクトにまとまり、付け根にある赤いレバーを倒せばポールも簡単に折りたためる。ボディカラーはホワイト、モカベージュ、スカイブルー、マットブラックの4色展開

 

さらに見逃せないのが、X-SCOOTER LOMはスマートフォンとの連携を果たしていること。電源ON/OFFが行えるほか、バッテリー残量・航続可能距離の可視化に対応して、使えば使うほどにユーザーの行動に合わせた航続距離や電池残量を表示するようになります。これはパナソニックのBMS(Battery Management System)モジュールを搭載することで実現。また、アプリにはキーシェア機能をも備え、家族や友人とのシェア利用も可能になるということです。

 

鳴海社長は、「新型コロナウイルスの影響を受け、公共交通機関に乗ることに抵抗を持つ人が増えていますが、かといってクルマは都市部では駐車場が必要になります。近距離の通勤圏に使える“ちょうど良い乗りもの”としてX-SCOOTER LOMを提案したい」とも語りました。ターゲット層は第一弾のGFR-01の50代以上のユーザーとは違い、20代を中心とした世代を狙っているそうです。

↑決して軽くはないが抱えれば十分に運べる重さであるため、オフィスなどに持ち込むこともできる

 

↑ポールを折りたためるので、それほど車高が高くない普通の乗用車でもトランクに収納できる

 

↑ヘルメットを持ち出すのに便利な収納ケースも別売される。ヘルメットが入る大容量で、使わない時は小さく折りたたんで収納できる

 

安定感のある乗り心地、一回の充電で約40kmの走行が可能!

さて、このX-SCOOTER LOMに試乗してみると、最初は“立ち乗り”スタイルがうまく馴染めない感じはありました。慣れないと乗車姿勢が前屈みとなって重心がハンドル付近にかかってしまうのです。ただ、これをクリアすれば驚くほどスムーズに走れるようになります。電動キックボードと違って左右に並行して足が置けるため、カーブでもコントロールしやすく、その安心感は抜群。道路の凹凸に対しても不安なく乗り越えてくれます。

 

特に上り坂でのパワフルさは想像以上で、一緒に走ったGFR-01をアッと言う間に置いてきぼりを与えたほど。その理由は電動モーターの出力差にありました。GFR-01ではモーター出力が0.25kwだったのに対し、X-SCOOTER LOMでは0.35kwにまで大幅に引き上げられているのです。わずか0.1kwとはいえ、元々車重が軽い電動バイクにとってこの差はとても大きいのです。

 

しかもバッテリーは脱着式でほぼ電動自転車並みのサイズ。これで航続距離は満充電時で40kmを走ることができ、残量が少なくなったら取り外して充電することもできます。速度は手元のスイッチで切り替えられ、ECOモードなら約10km/h、MIDモードで約25km/h、HIGHモードで25km/h以上の3モードから選べます。また、航続距離を延ばすために容量を1.5倍にした大型バッテリー(別売)も用意。さらにオプションで、様々な用途に活用できるトレーラーも装着できるとのことです。

↑様々な用途に役立つフックも別売で用意される

 

↑様々な用途に活用できるトレーラーも装着できる。この状態でも原付免許で走行できるという

 

個人的に気になったのはステップの素材でした。フレームが基本的にスチール製となっているのに、ここだけは集成材の上にヤスリのようなシートを貼った仕上がりとなっているのです。何となく“後付け感”がしたのですが、鳴海社長によれば「それは意図的に仕組んだもので、これをベースにユーザーのセンスでカスタムメイドしてもらいたいと考えた」というのです。つまり、立ち乗りの電動バイクというスタイルが一つのファッションとして育っていくことを狙っているのです。

↑集成材の上に滑り止めのシートを貼った中央のステップ。ユーザーのセンスでカスタマイズすることで、よりファッショナブルなスタイルへと発展できる。バッテリーは着脱可能

 

日本ではこれまで、原付1種に相当する電動バイクはなかなか普及しないままで来ましたが、“立ち乗り”という新たなスタイルを提案するX-SCOOTER LOMは個性に重きを置く世代に打ってつけの乗りものとなるかも知れません。

 

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