近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。
※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです
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【その1】ルーツのデザインを生かして軽自動車のスタンダードに!
ホンダ
N-ONE
159万9400~202万2900円(税込)
軽自動車販売台数7年連続ナンバーワンのN-BOXの兄弟車で、より低重心な運転感覚が味わえるトールワゴンモデル。デザインは初代モデル同様、ホンダ車の始祖であるN360がモチーフで、2代目となる現行型もレトロな雰囲気を持っている。
SPEC(Premium Tourer・FF)●全長×全幅×全高:3395×1475×1545mm●車両重量:860kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:65N・m/4800rpm●WLTC燃費:23.0km/L
[ココはトガっている] 丸にこだわったホイールも選べる
丸目だからといってデザインすべてが丸系ではなく、全体的には四角や台形などとの組み合わせ。ただ、ホイールにはしっかり丸系デザインが用意されている。足元にも丸を配置することで楽しさを演出。
子どもが描いたようなたくらみのない愚直さ
N-ONEの丸目は本物の丸目、つまり真円だ。円形のヘッドライトは、照明の基本形。半世紀ほど前に四角いヘッドライト、つまり角目が登場するまで、クルマのヘッドライトは、すべて丸目だった。
つまりN-ONEの丸目は、昔のヘッドライトの形そのもの。昔は丸目のクルマしかなかったけれど、現在は丸目はレアだし、真円の丸目はさらに希少。それだけで人の「目」を引き付け、ホンワカした郷愁を感じさせてくれる。
加えてN-ONEのデザインは、N360など、半世紀前のホンダ車のデザインをモチーフにしている。当時のクルマのデザインは、今見ると子どもが描いた絵のようで、これまたホンワカした郷愁に浸ってしまう。いや、現代の子どもたちが描くクルマの絵はたいていミニバンらしいので、これまた「昔の子どもが描いた絵」と言うべきかもしれないが……。
細かいことはさておき、この、たくらみのない愚直なデザインが、N-ONEをちょっと特別なクルマに見せる。断面が台形で、大地を踏ん張る感やスピード感があるのも、一種のレトロデザインなのである。
【その2】オープンカーの楽しみを広げてくれる個性的デザイン
ダイハツ
コペン セロ
194万3700~214万7200円(税込)
2代目となる現行型コペンの、第3のスタイルとして2015年に追加された人気モデル。“親しみやすさと躍動感の融合”をテーマにしたデザインは、丸目のみの意匠で高い評価を得ていた初代コペンを彷彿させ、根強いファンが多い。
SPEC(セロS・5速MT)●全長×全幅×全高:3395×1475×1280mm●車両重量:850kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6400rpm●最大トルク:92N・m /3200rpm●WLTC燃費:18.6km/L
[ココはトガっている] デザインアレンジが自由自在!
現行型コペンは内外装着脱構造を備え、樹脂外板やヘッドランプなどを交換して、別のスタイルへ変更することが可能。クルマのデザインを自由に変更して自分らしさを表現できる。
昔のクルマのようなカタチで運転の本来の喜びに浸る
創世記のフェラーリ、たとえば166MMといったクルマを見ると、「カマボコにタイヤを4個付けて、丸い目と四角い大きな口を描いたような形」をしている。NHKのマスコットキャラクター「どーもくん」の顔をつけたイモムシ、と言ってもいい。
コペン セロのデザインは、それに非常に近くはないだろうか?
目は真円ではなく微妙に楕円だが、真正面から見るとほとんど丸。テールランプも丸。ボディは斜めのエッジを付けたカマボコ型だ。
そして2人乗りのオープンカー。いまでこそオープンカーはゼイタク品だが、昔はオープンカーが標準で、雨の日のために幌が用意されていた。つまりコペン セロのデザインは、70年くらい前の標準的な自動車の形、と言えなくもない。
すなわち、コペンは特殊なドライビングプレジャーを提供するクルマだが、本質は本来の自動車そのものということ。だからデザインも、70年くらい前の自動車に似ているのである。そしてこのクルマで走れば、70年くらい前の人が感じたのと同じ、原初的なヨロコビに浸ることができるというわけだ。スバラシイじゃないか。
【その3】どんな道も力強く駆け抜ける古典的4WD車の最新形
スズキ
ジムニー
155万5400~190万3000円(税込)
約20年間販売された先代型に代わり、2018年にモデルチェンジした軽クロスカントリーSUV。登場するや否や爆発的な人気で1年以上の納車待ち状態に。オフロード向きのラダーフレーム構造と、最新の安全装備を採用している。
SPEC(XG・4速AT)●全長×全幅×全高:3395×1475×1725mm●車両重量:1050kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:96N・m/3500rpm●WLTC燃費:14.3km/L
[ココはトガっている] 縦横無尽のオフロード性能!
初代モデルから一貫して採用されているのはパートタイム式の4WD。雪道、荒地、ぬかるみ、登坂路など、様々なシーンに合わせた駆動パターンを選ぶことができて、高い悪路走破性能を発揮する。
機能に一極集中したパワフルなデザイン
ジムニーのデザインは、余計な工夫を何もしていない。悪路の走破性の高い、いわゆるジープタイプのカタチのまま作っている。
ヘッドライトも当然丸い。繰り返すが、ジムニーは余計な工夫を一切排除している。つまり、80年前のジープとまったく同じなのだ。この機能オンリーのデザインパワーは、すさまじい破壊力を持って、我々の心に食い込んでくる。
【その4】アクティブな乗り方に耐える現代仕様のタフデザイン
スズキ
ハスラー
136万5100~181万7200円(税込)
2020年に現行型となる2代目モデルへモデルチェンジした、クロスオーバーSUVタイプの軽自動車。使い勝手のいい軽ハイトワゴンに流行りのSUV風のデザインを施し、高レベルの低燃費性能と安全性能、小回り性能を備えている。
SPEC(HYBRID Xターボ・2WD)●全長×全幅×全高:3395×1475×1680mm●車両重量:840kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:98N・m/3000rpm●●WLTC燃費:22.6km/L
[ココはトガっている] インテリアデザインはギア風!
従来の軽自動車では見たことがなかったような自由度の高いデザイン。インパネ正面に3つのサークルを設けるなど、どこかギアっぽさ、おもちゃっぽさを感じる作りになっている。
印象をガラリと変える目尻の付け足しがニクい
ジムニーは3ドアだが、ハスラーは5ドアなので実用性が高い。ジムニーはボディの角が角ばっているが、ハスラーは適度に丸みを帯びている。そして丸目の外側に目尻を付けたハスラーの顔は、ジムニーに比べるとグッとソフトで、ぬいぐるみっぽく感じられる。
つまり「ジムニー的な機能オンリーデザインのソフト&カジュアル版」というわけだ。
【その5】世界から愛されて50年超丸目の哲学を今に受け継ぐ
BMW
MINI
298万~516万円(税込)
長年にわたって販売されていたクラシック・ミニが、2001年にBMWによってリボーンさせられてからすでに3代目。独自の乗り味「ゴーカートフィーリング」はそのままに、メカは現代的にアップデートされている。
SPEC(クーパー・5ドア)●全長×全幅×全高:4025×1725×1445mm●車両重量:1260kg●パワーユニット:1498cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:100kW/4500rpm●最大トルク:22oN・m/1480〜4100rpm●WLTC燃費:15.6km/L
[ココはトガっている] クセの強い特別仕様車が続々登場!
ブランド力とファッション性の高さもあって、さまざまなカラーリングの特別仕様車が次々に登場している。写真は、英国のストリートアートの聖地の名を冠した「ブリックレーン」
生まれたのはまだ丸目しかなかった時代
59年に誕生した元祖ミニは、最小のサイズで最大限の居住性を追求した偉大なる大衆車で、極限までシンプルだったから、当然ヘッドライトは丸目だった。
現在のミニのデザインは、あくまで元祖ミニを出発点としている。サイズは大幅に大きくなったが、フォルムはあくまで元祖を彷彿とさせる。ミニは元祖ミニっぽくなければ、ミニじゃなくなってしまうのだ。
【その6】ファニーフェイスでロングセラーモデルに!
フィアット
500
255万~324万円(税込)
3ドアハッチバックタイプのイタリア製コンパクトカー。かつての名車のリバイバルデザインで2007年に発表されたが、登場から約15年が経ったいまもファンから愛されており、ほぼ変わらぬデザインのまま販売され続けている。
SPEC(TWINAIR・CULT)●全長×全幅×全高:3570×1625×1515mm●車両重量:1010kg●パワーユニット:875cc直列2気筒ターボエンジン●最高出力:63kW/5500rpm(ECOスイッチON時57kW/5500rpm)●最大トルク:145N・m/1900rpm(ECOスイッチON時100N・m/2000rpm)●WLTC燃費:19.2km/L
[ココはトガっている] 待望のEVモデルがデビュー!
新型EV(電気自動車)として誕生した「500e」は、500のデザインを受け継いだモデルとして6月に発売された。ヘッドライトは上下に分割されて「眠そうな目」となる。価格は473万円から。
レトロモチーフを現代に蘇らせた快作
現在のフィアット500は、ミニと同じく、半世紀以上前の大衆車がモチーフ。元祖は機能第一だったが、現在はファンカーで、実用性は二の次になっている。もちろんヘッドライトは丸目だ。
こうして見ると、現在の丸目カーは、すべて昔のクルマがモチーフ。丸目にすると激しく昔っぽくすることができる。目が丸いって、スゴいパワーなんですね!
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