ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、全ラインナップEV化宣言をしたボルボのEV第1弾モデルを取り上げる! カッコは良いが、走りはどうだ?
※こちらは「GetNavi」 2023年1月号に掲載された記事を再編集したものです
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。
【今月のGODカー】ボルボ/C40 リチャージ
SPEC【プラス・シングルモーター】●全長×全幅×全高:4440×1875×1595mm●車両重量:2000kg●パワーユニット:電気モーター●総電力量:69kWh●最高出力:231PS/4919〜11000rpm●最大トルク:33.6kg-m(330Nm)/0〜4919rpm●一充電走行距離:502km(WLTCモード)
659万円〜759万円(税込)
素晴らしい性能だけに日本のEV充電の利便性が残念
安ド「殿! この連載にボルボが登場するのは久しぶりですね!」
永福「うむ」
安ド「久しぶりに登場のボルボは、EVの『C40 リチャージ』です!」
永福「EVか……」
安ド「そんな憂鬱そうな顔をしないでください!」
永福「ボルボはディーゼルエンジンの販売をすでにやめ、ガソリン車の販売も近い将来やめると、急激に電動化を進めている。しかし日本で乗ることを考えると、まだEVを買う気にはなれないのだ」
安ド「でも、このC40 リチャージ、素晴らしかったですよ!」
永福「たしかに素晴らしいな」
安ド「デザインは間違いなくカッコ良いですし、走りも2tという車両重量を考えると、あれだけギュンギュン走るのはスゴいです。カーブでも安定してますね!」
永福「付け加えると、乗り心地が絶妙だし、内装のセンスも良い」
安ド「今回乗ったのはFFの『シングルモーター』でしたけど、4WDの『ツインモーター』も乗ってみたいです!」
永福「ツインモーターの加速はこんなもんじゃないぞ」
安ド「そうなんですか!」
永福「シングルモーターの最高出力231PSに対して、ツインモーターは408PS。停止状態から100km/hまでの加速は、私が以前乗っていたフェラーリ『458イタリア』とほぼ同じだ」
安ド「エエッ! そんなに速いんですか!」
永福「うむ。実は乗ったことはないのだが、想像はつく。スーパーEVの加速感は、どれも似たようなものだ」
安ド「無音でグワーンと加速するんですね!?」
永福「うむ。最初は感動するが、飽きてしまう。このシングルモーターで十分だろう」
安ド「そう思います! 値段もツインモーターより100万円安いですし」
永福「しかし、このクラスのEVは、日産もトヨタもヒョンデも、どれも同じに思えてしまう。ただひとつ違うのは、テスラだ」
安ド「えっ、殿はテスラ派ですか?」
永福「もちろんだ。テスラが断然優れている」
安ド「テスラのどこがそんなに優れているんですか?」
永福「独自の充電ネットワーク『テスラ スーパーチャージャー』を持っていることだ。テスラだけが、日本の要所要所で、テスラ専用の充実した超高速充電サービスを受けられる。他のEVは、順番待ちして1回30分ほど急速充電して、それで100kmちょいしか走れない。この差はあまりにも大きい」
安ド「そうなんですか!」
永福「日本のEV界では、テスラだけが貴族で、あとは庶民なのだ。ボルボだろうとジャガーだろうと、サービスエリアなどで充電の順番待ちをする必要がある。EVはクルマの性能より、充電の利便性が圧倒的に重要なのだ」
安ド「勉強になりました!」
【GOD PARTS 1】フロントグリル
穴は埋められたが下部に謎の隙間あり
XC40には立派なグリル(空気取り入れ口)がありましたが、このC40はEVなのでエンジン車のように吸気を必要とせず、フタのようなもので埋められています。が、よく見ると下にちょっと隙間があって、微妙な表情を形作っています。
【GOD PARTS 2】リアシート脇の小物入れ
何を入れるか悩む収納スペース
リアシートの脇には、コンパクトな小物入れが設置されています。こういった場所に小物入れがあるクルマはなかなか見ませんが、スッと手の届くところにあるので便利といえば便利。使わないといえば使いませんが。
【GOD PARTS 3】スターターレス
キーを挿して回すこともボタンも押すこともなし
スターターボタンもキーを挿すキーシリンダーもありません。では、どうやって走り出せばいいのかというと、ただキーを携帯しながら運転席に座るだけ。これだけで勝手にモーターが起動し、シフトを「D」レンジに入れればもう走れます。
【GOD PARTS 4】エンブレム
小さな文字で書かれたオシャレネーム
リアには「RECHARGE(リチャージ)」と車名が書かれたエンブレムが貼られています。意味は「充電する」ということで、ボルボのピュアEV第一弾ということを高らかに謳っています。なお、ツインモーターの4WDは、この下に「TWIN(ツイン)」と付きます。
【GOD PARTS 5】ボンネット下収納
フタの下のフタの下に厳重に守られたスペース
モーターをフロントの床下に積むこのクルマでは(4WDモデルはリアの床下にもモーター)、ボディ前方に収納スペースが用意されています。ボンネットを開けてみると、さらにもう1枚フタが……。なんだかマトリョーシカみたいでした。
【GOD PARTS 6】レザーフリーインテリア
まるで本革のような質感の新素材を採用
その名のとおり内装に革素材が使われていません。自然環境を守るというボルボの強い意思が感じられますが、なんとボルボはまるで革のようなタッチのインテリア素材を開発! 自然な肌触りで、言われるまで気付きませんでした。
【GOD PARTS 7】リアコンビランプ
技術の進歩が生み出した複雑にねじられた形状
まるで「S」のような、いや、「L」と「E」を組み合わせたような複雑怪奇な形状をしています。さらに、触ってみるとかなり凸凹していて、カッコ良いかどうかは別にして、昨今のクルマパーツ業界における造形技術の進歩が感じられます。
【GOD PARTS 8】ルーフ&テールゲートスポイラー
上でも下でも整流してさらなる効率化を実現
スポイラーというパーツはスポーツカーに装着されるものだと思われがちですが、実は空力を整えることは燃料消費量にも好影響を及ぼします。C40 リチャージは最新のEVということで、これ見よがしに、上下2段のスポイラーを付けています。
【GOD PARTS 9】シフトノブ
穴の空いた形状はどこからきたのか?
ボルボのインテリアといえば、以前はセンターコンソールに左右貫通した横穴が象徴的でしたが、この最新モデルではシフトノブに横穴が残されていました。ここに指を通して操作するわけではなく、ただのオシャレデザインなんでしょうね。
【これぞ感動の細部だ!】ワンペダルドライブ
強烈なブレーキ感覚に慣れてEV時代に備えよ
日本では日産のe-POWERでお馴染みかもしませんが、アクセルペダルだけで加速も減速も停止もできる「ワンペダルドライブ」機能がこのC40 リチャージにも搭載されています。しかし、アクセルペダルを緩めたときの回生ブレーキはかなり強烈。これをギクシャクしないように運転することがEVとの共存の第一歩と思って、修行に励みましょう。
撮影/池之平昌信
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