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2023/2/22 20:30

ホンダ「ヴェゼル」。人気車種のデザインや装備に隠された魅力を改めて深堀り!

初代モデルが大ヒットしたホンダ「ヴェゼル」だったが、2021年に登場した新型モデルは、デザインイメージを一新。ライバルとは一線を画するシンプル&クリーンなデザインで、コンパクトSUV市場でも目立った存在となっている。本稿ではそのデザインや装備に隠された魅力を深堀りする。

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ/ヴェゼル

※試乗グレード:e:HEV PLaY

価格:227万9200円~329万8900円(税込)

 

新型ヴェゼル、他車との違いはデザインの妙にある

コンパクトSUV市場はここ数年ずっと活気に満ちている。なかでもホンダのヴェゼルは、2013年に登場した先代型がブランニューモデルであったにも関わらずヒット作となり、2014年から3年連続で新車販売クラスナンバーワンに輝いた。手頃なサイズと価格、そしてアクのないデザイン、室内の広さなどが人気を博した要因だ。

 

そんなヴェゼルが新型へフルモデルチェンジしたのは2021年だが、現在のコンパクトSUV市場にライバルは多く、トヨタの「ヤリスクロス」や「C-HR」、日産「キックス」などが存在している。では、この市場で新型ヴェゼルが打ち出した違いが何かといえば、それはデザインの妙だ。

 

切れ長のヘッドライトというのは現代SUVのトレンドでもあるが、ボディ同色グリルは新型ヴェゼルの真骨頂である。まるでグリルが存在しないように見えて、無機質な感じで無印良品っぽいというか、シンプルでクリーンなイメージだ。初めは違和感を覚える人もいるかもしれないが、見慣れてくると、品がよく、知的に見えてくる。

 

一方で、やはりクルマには目立つグリルがあってこそ、みたいなユーザーも一定数存在する。その証拠に、オプションパーツでは、ボディ色と異なるブラックのグリルが人気らしい。ないものねだりという人もいるだろうが、これはつまり、ボディ同色グリル以外の部分でもヴェゼルのデザインが優れていることの証明にほかならない。

↑e:HEV PLaY専用カラーバーオーナメント付フロントグリル

 

ボディサイドには、水平基調でまっすぐなウエストラインがフロントからリアまで伸びている。しかもこれが結構高い位置に設定されていて、車両全体の重心が高いように感じられる。しかし、スポーツカーでは重心が高く見えるとカッコ悪いが、ヴェゼルのようなSUVでは問題ない。むしろ重厚さが感じられて、乗員の安心感にもつながる。

 

さらに、サイドラインからつながるように高い位置に配置された、左右につながった形状のテールランプも特徴的だ。ランプ内はサイバーなデザインが施されていて、リアのアクセントになっている。また、その上のリアウインドウはかなり傾斜がつけられていて、クーペライクなスタイリングになっている。横から見るとクルマが前傾姿勢をとっているようにも見えるが、このアンバランスさがヴェゼルのおしゃれさを引き立てている。

↑エクステリアのデザインは、クーペライクなプロポーションを際立たせている。試乗車のボディカラーは、サンドカーキ・パール&ブラック

 

全体的に見てみると、ライバル車と比べて、端正なラインで、シンプルかつ品のある雰囲気にまとめられている。清潔感がありすぎて毒が足りないという人もいるようだが、他に似てない独自性という意味では頭ひとつ抜け出しているようにも感じる。

↑e:HEV PLaYは、18インチアルミホイール(ブラック+切削)+スチールラジアルタイヤを履く

 

室内は外観同様クリーンなイメージ

ウエストラインが高いがゆえ、室内スペースは狭そうにも見えるが、さにあらず。「フィット」譲りのセンタータンクレイアウトによって、車内には余裕が感じられる。また、リアシートは座面を跳ね上げてからシートバックを前方へ倒すことができるので、ラゲッジルームを拡張した際の床面がしっかりフラットになる。こういったところはSUVを趣味の道具として使う人にとって重要なポイントだ。

↑予約ボタンを押してクルマから離れるとテールゲートが自動で閉まる「予約クローズ」機能付き。個別の車両設定により、閉まった後に自動でキーロックさせることも可能だ

 

外から見ていると、なんだかボディが大柄に感じられる。たしかに先代モデルより全長と全幅は拡大されているものの(全高は低くなった)、しっかりコンパクトなモデルで、それはシートに座ってみると実感できる。ボディ全体の感覚は掴みやすいし、特別視界が悪いということもない。なお、インテリアデザインも、外観同様クリーンなイメージでまとめられていて好印象だ。

↑インテリアのデザインではしっかりと芯の通った「かたまり感」のあるソリッドなフォルムでSUVの力強さを表現

 

↑e:HEV PLaY専用のコンビシート(グレージュ)。シートサイドにオレンジのステッチをあしらった遊び心のあるデザイン

 

↑これはちょうどイイ! フロント左右に配置された「そよ風アウトレット」。風が体に直接当たることなく穏やかに頬をなでます

 

パワーユニットは、1.5Lガソリンエンジンと、同じく1.5Lベースのハイブリッドがラインナップされている。今回試乗したハイブリッドモデルは、アクセルを踏み込んでもそれほど加速感が鋭いわけではない。どちらかといえば穏やかで上質で、のんびり走ってちょうどいいクルマといった趣である。サスペンションはほどよい固さで乗り心地も上々。先代型と比べて静粛性は高くなっているし、心地よさという部分でしっかり進化を感じられた。

↑最高出力106PS/6000-6400rpm、最大トルク127Nm/4500-5000rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッターアトキンソンサイクル i-VTECエンジン

 

進化という部分では、先進運転支援装置の「ホンダセンシング」も最新バージョンが搭載されている。高速道路走行中に前走車との車間を自動でキープして走れるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は渋滞追従機能付きとなったことで、渋滞走行がさらに楽になった。標識認識機能で走行中の道路の制限速度を見落とすことも減り、先行車発進お知らせ機能は信号停車時に後方からクラクションを鳴らされるのを防いでくれる。

↑空力性能においては、F1マシンの設計・開発などを行なうHRD Sakuraの風洞実験施設を使い、コンパクトSUVトップクラスの空力性能を目指したという

 

売れ筋のカテゴリーであり、各メーカーから数多くラインナップされるコンパクトSUVのなかで、あえてヴェゼルを選ぶ人というのは、きっとシンプルな暮らしを好む、都会的で品のある人なんだろうなぁと思えてくるから不思議である。

 

SPEC【e:HEV PLaY】●全長×全幅×全高:4330×1790×1590㎜●車両重量:1400㎏●パワーユニット:1496cc直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:78kW/6000-6400rpm●エンジン最大トルク:127Nm/4500-5000rpm●WLTCモード燃費:24.8㎞/L

 

文/安藤修也 撮影/茂呂幸正

 

 

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