乗り物
クルマ
2023/2/12 20:30

フォルクスワーゲン「ゴルフ R ヴァリアント」は典型的な“羊の皮を被った狼”だった

「羊の皮を被った狼」たる理由

試乗したのは、ゴルフ R ヴァリアント(ステーションワゴン)。車両重量は1600kgとかなりの重量級だ。ランエボやインプレッサWRXは1300kg前後だったから、それに比べるとだいぶ重く、加速も相殺される。速いと言えば速いが、「ウルトラバカ速ッ!」ではない。そのぶんゴルフ R ヴァリアントは、広いラゲージやゆったりした室内など、高い実用性を持っている。「R」のエンブレムも非常に地味で目立たない。

↑見やすい大型10.25インチTFT液晶ディスプレイを採用。通常のメーター表示やナビゲーションマップなど、好みに応じて表示を切り替え可能

 

↑ホールド性もR専用ファブリック&マイクロフリースシート。ブルーのRロゴがステキ!

 

↑最大1642Lの大容量ラゲージスペースを持つ。荷物の形状や量に合わせて室内をフレキシブルにアレンジできる

 

ただ、前後バンパーはR専用であり、リアのディフューザーと4本のテールパイプが、タダモノではないことを示している。マニアが見れば、GTIより15mm低い車高や、19インチホイールの間から覗くブルーのブレーキキャリパーで、「うおお、Rだ!」と識別することが可能。このクルマは、典型的な「羊の皮を被った狼」である。

↑クロームの輝きと迫力あるルックスを演出する、クロームデュアルツインエキゾーストパイプ。足元は19インチのアルミホイールと245/35ZR19サイズのタイヤだ

 

↑VWロゴの下でさりげなく光るRエンブレム

 

では、新型ゴルフ R ヴァリアントが、ただの旦那仕様のスポーツモデルかと言えばさにあらず、新型Rのハイライトは、4WDシステムが、従来の4モーションから、「Rパフォーマンスベクタリング」に進化した点にある。4モーションは、前後輪のトルク配分を変えて最良の駆動力を得ていたが、新型Rは後輪に湿式多板クラッチを2個加えることで、後輪左右のトルク配分を変えることができるのだ。つまりコーナリング中は、外側タイヤの駆動力を増すことで、よりグイッと曲がらせることが可能というわけだ。

 

私はかつて、フェラーリ458イタリアを所有していた。458には「Eデフ」という名の左右駆動トルク配分システムが備わっており、恐ろしいほど曲がるクルマだった。コーナーで外に膨らむことはまずありえず、逆に曲がりすぎて内側のガードレールに激突しないように注意する必要があった。

 

では、新型ゴルフRもそんな感じかというと、まるで違う。普通に走っていたら、左右駆動トルク配分をしていることなど体感できない。458はそこらの四つ角を曲がるだけで「うひぃ! 曲がりすぎる!」という感覚だったが、ゴルフRは実に自然だ。セッティングがまるで違う。

 

それはワインディングロードでも同じ。まったく自然によく曲がるだけで、特段意識させるような挙動は起きない。サーキットで限界まで攻めれば違うと思いますが、一般ドライバーが公道で、左右トルク配分を体感するのはまず不可能。それよりも、「ゴルフRは進化を続けている!」という事実(勲章)のほうが重要なのだ。なにしろ「R」なのだから。価格は652万5000円。もちろんゴルフのラインナップ中、最高価格である。

 

SPEC【R】●全長×全幅×全高:4650×1790×1465㎜●車両重量:1600㎏●パワーユニット:1984cc直列4気筒ターボエンジン●最高出力:320PS/5350-6500rpm●最大トルク:420Nm/2100-5350rpm●WLTCモード燃費:12.2㎞/L

 

撮影/茂呂幸正

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

  1. 1
  2. 2