乗り物
クルマ
2023/2/8 20:30

ホンダ新しいタイプのSUV「ZR-V」試乗。高い静粛性と気持ちの良い走りは感動もの

ホンダが上級SUVとして2023年4月21日に発売を予定してるのが『ZR-V(ゼットアールブイ)』です。「CR-V」が日本市場からなくなった今、その後継車種としてホンダの上級SUVを支える重要な位置付けにあるといえます。今回はそのZR-Vの試乗レポートをお届けします。

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ/ZR-V

※試乗グレード:e:HEV Z(4WD)

価格:294万9100円〜411万9500円(税込)

↑ボディカラーはスーパープラチナグレー・メタリック

 

都市型クロスオーバー的な雰囲気の新しいSUV

ZR-Vのコンセプトは“都会的なスタイルとセダンのような走り”。単にSUVとしてだけでなく、セダン的な使い勝手と走りを併せ持つホンダの上級SUVとして登場しました。そのZR-Vを前にすると、SUVらしいボリューム感のあるボディと流れるようなフォルムが、都市型クロスオーバー的な雰囲気に満ちあふれていることを実感します。タテ格子のバーチカル・フロントグリルは斬新で、その存在感は十分に異彩を放っていました。

 

ZR-Vのラインナップは、ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」と、ガソリンエンジンとして1.5Lターボが用意され、駆動系にはいずれも4WDと2WD(FF)を組み合わせることができます。

 

また、グレードは上級の「Z」とベースグレードの「X」がそれぞれ用意され、そのうち「Z」にはアダプティブドライビングビームやETC2.0車載器付きホンダコネクト・ナビゲーション、本革シート、12スピーカーBOSEプレミアムサウンドなどが標準で装着されます。まさにホンダの上級SUVらしい充実した装備といえるでしょう。

↑ZR-Vのラインナップには1.5Lターボエンジンを搭載したガソリン車もラインナップする。写真はXグレード

 

そんなZR-Vで試乗したのは、「e:HEV」の4WD車で、グレードも上位のZ。価格も420万円弱という結構なお値段のクルマです。価格面ではトヨタ「ハリアー」や、日産「エクストレイル」あたりともガチンコでぶつかるグレード。ただ、そうした状況でもZR-Vはこの両車に十分対抗し得る素晴らしいスペックを備えていたのです。

↑プラットフォームはシビックベースだが、足回りはCR-V譲りのパフォーマンスを発揮した

 

上級SUVらしいプレミアム感あふれるインテリア

クルマに乗り込むとインテリアはプレミアム感にあふれていました。試乗車のシートはパワー機構付きの本革製で、マットなグレー色に近い“ブラック”。その素材感は極めて高く、ダッシュボードのソフトパッドも心地よい弾力を伝えてきます。よく見るとソフトパッドは艶やかなガラスパールを散りばめたパール調表皮となっており、外装と同様、光の当たる具合で陰影ができることで、しっとりとした高級感を演出する造りとなっているのです。

↑曲線と直線を上手に交えた躍動感に溢れたデザインのインテリアは、極めて機能的でもある

 

↑後席シートはSUVらしいゆとりのあるスペースを確保している。シートは6:4可倒式を採用する

 

また、センターコンソールは中央を盛り上げるハイデッキタイプとすることで、運転席と助手席の各乗員に適度なパーソナル感を持たせており、さらにコンソール下側の凹みにはUSB端子を備えた収納スペースまで装備。もちろん、ワイヤレス充電にも対応しているので、手軽にスマホを充電することが可能です。

↑左右の席のセパレーターとしての役割も果たすコンソール。e:HEVにはボタン式シフトが採用されている

 

中でも“Z”の装備で見逃せないのが、BOSEプレミアムサウンドシステムの搭載で、車種独自の専用チューニングを施すことでクリアで臨場感あふれるサウンドをもたらしてくれます。しかも、サラウンドサウンドを体験できる「Centerpoint」システムを搭載したフルスペック仕様。限られたスペースで臨場感たっぷりのBOSEサウンドが楽しめるのは大きな魅力といっていいでしょう。

↑Zグレードには12スピーカーを備えたBOSEプレミアムサウンドシステムが標準で装備される

 

↑BOSEの「Centerpoint」は、12スピーカーを活用することで臨場感たっぷりのサラウンドが楽しめる

 

↑BOSEプレミアムサウンドシステムは、サブウーファーとセンタースピーカーを組み合わせた12スピーカーから成る。高性能スピーカーを車室内に最適配置しています

 

エンジンONがほぼわからない驚きの静粛性

ZR-Vは走りも素晴らしいものでした。ZR-Vの「e:HEV」は、2.0L・4気筒エンジンとホンダ独自の2モーターシステムを搭載したハイブリッド車となっています。これはシビックに採用されている「スポーツe:HEV」をZR-V向けに仕様変更したもので、充電用と駆動用のモーター2基を電気式CVT内に搭載。状況に応じてエンジンとモーターそれぞれの駆動を切り替えて使う独自の方式となっています。

↑ZR-Vのe:HEVに搭載された2.0L・4気筒エンジンとホンダ独自の2モーターシステムのハイブリッドシステム

 

具体的には、発進時や市街地での低速走行などではモーターのみのEVモードで走行し、加速時やある程度速度域が上がるとエンジンの動力で発電しながらハイブリッド走行します。さらに高速道路で高い速度で巡航するシーンになるとクラッチでエンジンと直結し、100%エンジンの力で走行するモードに切り替わるのです。いわば、シリーズ式ハイブリッド走行とエンジン走行のいいとこ取りをしたハイブリッドエンジンといえるでしょう。

 

この日の試乗コースは、会場となった羽田空港近くのホテルから首都高速~一般道を経由するルートです。

 

走り出して真っ先に気付いたのが高い静粛性でした。モーターで走行している時が静かなのは当然としても、エンジンがかかってもそれがほとんどわからないほど静かなのです。1.5Lエンジンを組み合わせるe:HEVを搭載した「ヴェゼル」では、アクセルを踏み込んだ際にエンジン音がハッキリと聞こえていましたが、それとは静粛性のレベルがまるで違います。高速道路の合流でもアクセルを踏み込んでもその傾向は変わらず、ロードノイズも十分抑えられていました。

↑市街地走行から都市高速に至る日常使いで優れたパフォーマンスを発揮したZR-V

 

都市高速のきつめのカーブにもしっかりと踏ん張る

足回りはしっかりと踏ん張ってコーナーを曲がっていく印象です。都市高速のきつめのコーナーを曲がった時でも車体がリニアに反応してスムーズに向きを変え、思い通りのラインを確実にトレースしていくのです。シビックを八ヶ岳で走らせた時、そのトレース能力に驚いたものですが、少なくともそれに匹敵する素晴らしさ。

 

ドライブモードは各走行シーンに応じた4つのモードから最適な設定に変えられ、e:HEV車にはパドルシフトを使って、回生ブレーキの強さを4段階で調節することができます。これを上手に使えば、峠道などで減速度を上げながら楽に走行することができるはずです。

 

一方で乗り心地は若干堅めでした。都市高速の継ぎ目などは確実に伝えてくるのです。しかし、不快さは感じないレベル。むしろ道路の状況が伝えられてくるリニア感が好ましく感じたほどです。乗り心地も良好で、後席に座った人からも不満は出ませんでした。

 

試乗を終えて実感したのは、ZR-Vはコンセプトの“都会的なスタイルとセダンのような走り”を確実に達成しているということです。特にe-HEVと組み合わせた走りは感動もののレベルで、「スムーズさ」と「静粛性」、そして「動力性能の高さ」の3本柱をしっかりと発揮していたのには驚きました。ホンダの新しい上級SUVとして、ぜひ試乗してみることをおすすめしたいです。

↑SUVらしく収納スペースも十分な容積を誇る。テールゲートはハンズフリーアクセス機能付パワーゲートが備わる

 

SPEC【e:HEV Z(4WD)】●全長×全幅×全高:4570×1840×1620㎜●車両重量:1630㎏●モーター:1993cc直列4気筒直噴エンジン+デュアルモーター●最高出力:エンジン141PS/6000rpm(モーター184PS/5000〜6000rpm)●最大トルク:エンジン182Nm/4500rpm(モーター315Nm/0〜2000rpm)●WLTCモード燃費:21.5km/L

 

写真/松川 忍

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】