デジタル
2023/1/31 11:15

【西田宗千佳連載】ソニー・ホンダが目指す「自動車のスマホ化」

Vol.123-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはソニー・ホンダモビリティがCES 2023で披露したEVの話題。同社がEVで目指すクルマの新しい在り方とは何か。

↑AFEELA(アフィーラ)というブランド名は同社がモビリティ体験の中心に掲げる「FEEL」を表したもの。本プロトタイプをベースに開発を進め、2025年前半に先行受注を開始し、同年中に発売を予定。デリバリーは2026年春に北米から開始する

 

スマホへの変化のようにクルマも変化していく

ソニー・ホンダモビリティは、年初に米ラスベガスで開催された「CES 2023」のソニーグループ・ブースで、同社のEV(電気自動車)「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプを公開した。

 

ソニーは2020年にEVの試作車「VISION-S」を公開。2022年にはホンダとの協業による市場参入を正式に発表している。それを受け、今年は、市場投入に向けたプロトタイプを公開した……という流れだ。

 

展示自体は静止した形で行なわれたが、中身はできていて、走るクルマだ。ただ公開されたのはプロトタイプであり、そのままの形で市販されるものではない。

 

VISION-SとAFEELA・プロトタイプの最大の違いは“デザイン”だ。VISION-Sはスポーツカーらしいデザインだったが、AFEELAはかなり線がシンプルになった。

 

「まるでスマホのようだ」

 

そう思ったなら、直感は正しい。ソニー・ホンダモビリティの川西 泉社長は、AFEELAへの変化の背景にある思想を“フィーチャーフォンからスマートフォンへの変化”に例える。

 

フィーチャーフォンの時代、携帯電話のデザインは複雑だった。中身としての機能では差別化しづらかったからだ。だがスマホになると、機能の多くはソフトで実装されるようになった。差別化はハード+ソフトで行なわれるようになり、デザインはシンプル化していくようになった。

 

カスタマイズや進化がEVで当たり前になる

自動車はEVになると、ソフトウェアで制御される領域が多くなっていく。だとすれば、差別化要因はソフトウェアの進化で生まれることになるだろう。そして、デザインはよりシンプルになるのでは……。そんな発想から、デザインのトレンドから外れた、シンプルな線で構成されたAFEELAのデザインが生まれたと川西社長は語る。

 

デザインには賛否両論あると思う。その点も含め、「あくまでプロトタイプであり、製品はこのままとは限らない」と川西社長は説明する。しかし「基本的にはこのラインで行く」とも語っているので、“スマホ的な変化”を軸に据えていくことだけは間違いないようだ。

 

EVでクルマがスマホ化するとはどういうことなのか? ポイントは2つある。

 

ひとつは「カスタマイズが当たり前になる」ということ。自動車のカスタマイズといえば、パーツ交換や内装の変更を指した。だがスマホでは、アプリの入れ替えや壁紙の変更は当たり前。同じスマホでも、使っている人によって姿は違う。EVも、車内にあるディスプレイの見た目や、そこで使われる機能を自分で変えられるのはもちろん、ナビゲーションや“乗り味”など、走行に関する機能を変えられるようにもなる。

 

次は「進化」。スマホがOSのアップデートやアプリの追加で進化するように、EVも進化する。テスラのように、発売後アップデートで機能が変わる自動車も増えていくが、AFEELAも同様に、機能やアプリ追加をしていくことで、進化するEVになることを目指している。

 

もちろん、こうした要素を加えていくには、従来の自動車とは作り方を変える必要が出てくる。それはどういうことなのか? その点は次回以降解説する。

 

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