ラグジュアリーブランドでありながら、いつの時代も「走りの愉しさ」を追求してきたBMW。その新時代のフラッグシップモデルとなる「XM」は、SUVでありながらスーパーカーのような斬新なスタイリングで、しかもPHEV(プラグインハイブリッドカー)。その全貌を清水草一がレポートする。
■今回紹介するクルマ
BMW XM(試乗グレード:Mモデル)
価格:2130万円
XMは現代のスーパーカー
メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家は、モデル数が天文学的に増えている。特にSUVは超売れ筋ゆえ、もはやクルマ好きでも観測不能というほど多くのラインアップが揃っている。
BMWのSUVラインアップは、従来X1からX7までの7モデルだったが、そこに今回新たにXMが加わった。これまで、1から7まで数字が大きいほど車体が大きく、奇数は実用的、偶数はスポーティという色分けだったが、X「M」はいったいどこに属するのか?
ズバリ「M」である。MとはBMW Mのこと。BMWのなかでも特別にスポーティなモデルを開発する部門で、これまで「M3」などの名車を送り出してきた。ただしXMは、M3やM4よりもさらに格上の存在だ。なぜなら、M専用モデルだからだ。
M3は3シリーズを、M4は4シリーズをベースに作られているが、XMはM専用ゆえにMしかない。1978年の「M1」以来のM専用モデルなのだ。M1と言えば、マンガ『サーキットの狼』にも登場したスーパーカー。現代のスーパーカーはSUVスタイルが妥当! ということなのだろう。
フラッグシップだけあって強力なオラオラ感
シルエットは、現代のスーパーSUVとしては控え目で、特別スポーティには見えない。正直、「これってX6がベース?」と思ったくらいだ。しかし実際のサイズはX7とほぼ同じで、シャシーベースになったのは新型7シリーズ。つまりXMはBMWの新しいフラッグシップモデルと言うこともできる。
さすが「M専用モデル」かつ「BMWのフラッグシップ」だけあって、デザインのディテールはもの凄い。キドニーグリルをはじめ、ボディ各所にゴールドがあしらわれ、強力なオラオラ感を醸し出している。ゴールドというとギンギラなイメージだが、XMのゴールドはシャンパン系のゴールドなので適度に上品。ギンギラギンではなく、上品に最大限オラオラしたいという富裕層にはピッタリではないだろうか。私は一目で気に入った。庶民ですけど。
なかでもインパクト絶大なのが、新しいデザインのキドニーグリルだ。形状は以前より角ばった八角形で、サイズも最近のBMWらしくどデカいが、縁が二重になっているのが新しい。しかもこのキドニーグリル、照明機能が付いており、夜間には輪郭がくっきり浮かび上がる。バックミラーに映れば一目瞭然。今回の試乗は昼間だったが、夜見たらインパクトはさらに絶大になったことだろう。「オラオラすぎる!」という意見もあるだろうが、なにしろBMWの頂点に君臨するモデルなのだから、これくらいワクワクさせてもらったほうがうれしい。
加速は強力無比。気持ちよすぎてついアクセルを踏みたくなる
BMWの新たなフラッグシップだけに、XMのパワートレインは強力そのもの。新開発のPHEVシステム「Mハイブリッド」を搭載している。4.4L V型8気筒ツインターボエンジンに、電気モーターを組み合わせ、最大出力653PS、最大トルク800Nmを発生させる。
駆動方式は、PHEV専用の4WDシステム「M xDrive」。0~100km/hの加速が4.3秒というから、まさにスーパーカー級だ。しかもこのクルマ、車両重量が2.7トンもある。そんな重い物体をこれほど強力に加速するのだから、恐れ入るしかない。ただし、最高速は250km/h(リミッター作動)と控え目(?)だ。エコに配慮したのだろうか。オプションの「Mドライバーズパッケージ」を装備すれば、リミッターを270km/hに引き上げることもできる。日本では関係ない話ですが。
実際に走らせると、XMの加速は強力無比。ガソリンエンジンの伸びと、電気モーターのトルクのいいとこどりなのである。アクセルを踏めばスーパーEVのようにグワッと前に出るが、どこか温かみがあり、ムチ打ちにはならないギリギリの線に抑えてある。もちろん加速の伸びはV8ツインターボならでは。加速が気持ちよすぎて、ついアクセルを踏みたくなる。
ボディやサスペンションの仕上がりがまた凄い。基本的に超絶スポーティなのだが、超絶なボディの剛性感のおかげで、これだけ巨大なサイズでありながら、引き締まって小さく感じる。全幅2mを超えているのに5ナンバーサイズみたい……と言ったらおおげさだが、とにかくいっさいブレずにゴーカートにように走ってくれるので、そのぶん小さく感じるのは確かだ。
ちなみに搭載されているリチウムイオンバッテリーは、容量29.5kWh(正味容量25.7kWh)。EVモードでは、最大88km(WLTPサイクル)走行できるが、ドライブモードを「スポーツ」や「スポーツ+」に切り替えると、エコなんか一切忘れて加速レスポンスに徹することになる。さすがBMWのM専用モデルだ。
ナイトドライブはさらにゴージャス(と想像)
インテリアも豪華そのもの。オラオラしつつも、適度に上品にまとめられているのはエクステリアと同じだ。驚かされるのは天井部の造形で、音響室のように凸凹している。これはいったい何が目的か? と訝ったが、サウンドを美しく聞かせようというわけではなく、夜、ルーフサイドにあしらわれたアンビエントライトで、凸凹を怪しく浮かび上がらせる目的らしい。
今後もしXMに乗る機会があれば、ぜひナイトドライブを体験してみたい。昼間よりもさらにゴージャスに突っ走るに違いなかろうて。
SPEC【XM】●全長×全幅×全高:5110×2005×1755mm●車両重量:2710kg●パワーユニット:4394ccV型8気筒エンジン+電気モーター●システムトータル最高出力:653PS(480kW)●システムトータル最大トルク:800Nm●WLTCモード燃費:8.5km/L
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撮影/清水草一