乗り物
2017/1/11 20:04

大井川鐵道井川線が922日ぶりに全線開通で復活! 無類の絶景路線から山岳鉄道の魅力に迫る

本日1月11日、大井川鐵道(おおいがわてつどう)の井川線が2017年3月11日から平常運転に戻ることが発表された。2014年秋に不通になって以来、実に922日ぶりの完全復旧となる。

 

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大井川鐵道といえば、古くから蒸気機関車を使ったSL列車の運転で知られる。最近では、きかんしゃトーマス号が親子連れに大人気。乗車券の入手が困難になっていることもあり、注目度も日増しに高まっている。SL列車が運転されているのが大井川鐵道の本線で、SL列車は新金谷駅〜千頭駅(せんずえき)の区間でほぼ毎日運行。この終点にあたる千頭駅から、大井川にそって走るのが井川線(いかわせん)だ。「南アルプスあぷとライン」という愛称を持つ。

 

この井川線だが、2014(平成26)年9月2日に、大井川流域を襲った大雨により、大規模な土砂崩れが起き、列車の運行ができなくなってしまっていた。それから2年あまり、井川線の列車は、千頭駅〜接岨峡温泉駅間の折り返し運転に。流れ出た土砂は約200立方メートル。大井川沿いを走る険しい線区で、復旧にあたり二次災害も想定された。そのため、復旧作業も慎重に長い期間をかけて進められた。

 

日本国内では無類の絶景路線でもある井川線。そこで本稿では、不通になる前に訪れた時の沿線模様も含め、井川線の魅力を迫ってみたい。

↑客車とディーゼル機関車の組み合わせで走る井川線の列車。反対側の客車にも運転席が設けられている

 

↑井川駅側の客車に設けられた運転室。室内は狭く、運転士は中央に座って列車の運転操作を行う
↑井川駅側の客車に設けられた運転室。室内は狭く、運転士は中央に座って列車の運転操作を行う

 

【歴史と車両】井川線は大井川の電源開発用として誕生

井川線の路線の開業は1935(昭和10)年3月のこと。水量豊富な大井川の電源開発のため、電力会社によって工事用の専用路線が敷かれた。当初は線路幅が762ミリと狭く、またトンネルなども線路幅に合わせ、小さなサイズに造られた。その後、線路幅は大井川鐵道の本線と同じ1067ミリに広げられた。20年にわたり中部電力の専用鉄道として使われていたが、1959(昭和34)年に大井川鐵道が引き継ぎ、旅客営業を開始する。

↑井川線の客車の内部は、2列と1列シートがタテに並ぶ。通路は狭く天井高も低めだ
↑井川線の客車の内部は、2列と1列シートがタテに並ぶ。通路は狭く天井高も低めだ

 

列車はディーゼル機関車と客車の組み合わせで走行。線路幅こそJRの在来線などと同じサイズだが、車両は小さなトンネルにあわせてかなり小ぶりだ。井川線の車両の最大高は2700ミリ、最大幅は1850ミリ以下。ちなみに、JR山手線のE231系は最大高3980ミリ、最大幅が2950ミリで、井川線の車両は、一般的な電車の3分の2ぐらいのサイズと考えれば良いだろう。

 

同線では、小さめの列車が険しい渓流沿いに敷かれた線路を、まるで張り付くように走っていく。急カーブも多く、キーキッツ……というきしみ音をたてながら列車が走る情景も、井川線ならではのものだ。

↑アプトいちしろ駅〜長島ダム駅の1駅間のみ、千頭駅側に電気機関車が連結され、急勾配区間を走る
↑アプトいちしろ駅〜長島ダム駅の1駅間のみ、千頭駅側に電気機関車を連結して急勾配区間を走る

 

↑アプトいちしろ駅で車体下にラックレール用の歯車を持つアプト式のED90形電気機関車を連結する
↑アプトいちしろ駅で車体下にラックレール用の歯車を持つ、アプト式のED90形電気機関車を連結する

 

この井川線のハイライトとも呼べる区間が、アプトいちしろ駅と長島ダム駅間だろう。普通鉄道としては日本最大の90パーミル(1000メートル走る間に90メートルを上る)という急勾配区間だ。

 

この区間のみ、線路の中央にラックレールというギザギザのあるレールが敷かれている。そして、急勾配を安全に登り降りするため、千頭駅側にラックレールとかみ合わせるラックホイール(歯車)を付けた、アプト式電気機関車を連結して走行する。

 

アプトいちしろ駅で機関車の連結のため、少ないながらも停車時間が確保されている。連結風景やラックレールなど、地上施設の見学も可能だ。乗車したら、ぜひ日本で唯一のラックレールやアプト式電気機関車を見学しておきたい。

 

【絶景風景と秘境駅】スリリングな車窓風景と人里離れた名所の数々

井川線に乗車したら下車しないまでも(途中駅で下手に下車すると、本数が少ないため帰れなくなる可能性がある)、途中駅や橋梁などの施設にも注目したい。とにかく奥深い山に包まれた渓谷沿いを走るため、途中の駅は秘境駅ぞろいだ。

 

まずは奥大井湖上駅だ。接岨湖(長島ダム湖)に突き出た半島状の場所にある駅で、民家は皆無のうえ、駅の両側は長い橋梁。半島状とは言っても、陸続きには道がない。そんな“何もない駅”だが、ホームに「幸せを呼ぶ鐘」があって、恋人たちの聖地として隠れた人気を誇る。

↑奥大井湖上駅はダム湖に面した高台に設けられた駅。ホームの上に展望台などがある
↑奥大井湖上駅はダム湖に面した高台に設けられた駅。ホームの上に展望台などがある

 

↑橋梁を渡り、奥大井湖上駅に近づく上り列車。駅からはダム建設前に使われた、旧線などの遺構も見える
↑橋梁を渡り、奥大井湖上駅に近づく上り列車。駅からはダム建設前に使われた、旧線などの遺構も見える

 

奥大井湖上駅の隣が接岨峡温泉駅(せっそきょうおんせんえき)。ここから先、井川駅までが今回、復旧された区間だ。接岨峡温泉のひとつ先の駅が尾盛駅(おもりえき)。この駅も秘境駅として知られる駅で、列車でなければ到達できない駅になっている。1日の乗降人数は平均1名。駅そばには何もないため、降り立つのはほぼ100%が鉄道ファンなのだ。

 

尾盛駅と隣の閑蔵駅(かんぞうえき)間には、関の沢橋梁がある。この橋は、長さこそ114メートルながら、河床からの高さが70.8メートルあり、鉄道橋としては日本一の高さを誇る。閑蔵駅の先は進行方向右側、眼下に流れるのは大井川。この区間では、“東海の黒部”と呼ばれるV字渓谷を楽しめる。

 

なお、井川線が全線開通する3月11日と12日には「SLフェスタin千頭」が千頭駅で開催される予定。18日には全線開通記念式典も予定されている。さらにその先、4月から5月にかけては新緑が美しい季節。ぜひとも、完全復活した井川線に乗りに行き、沿線風景を楽しみたいもの。

 

最後に、先述のとおり井川線は運行本数が少なめ。井川発の最終列車が15時54分発(千頭駅17時38分着)と、予想以上に早いので注意が必要だ。こうした不便さも、本格的な山岳鉄道ならでは。時刻表をしっかりチェックし、井川線の絶景旅を楽しんでもらいたい。

↑車内からは、大井川の流れが眼下に望める。列車は断崖絶壁を走るため、スリリングに感じる車窓風景がつづく
↑車内からは、大井川の流れが眼下に望める。列車は断崖絶壁を走るため、スリリングに感じる車窓風景がつづく

 

↑深い山々に囲まれた終着駅の井川駅。駅構内には今は使われていないらしき多くの引込線が配置される
↑深い山々に囲まれた終着駅の井川駅。駅構内には、いまは使われていないらしき多くの引込線が配置されている
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