ファッション小売業界では、基本的にシーズン毎に服のラインナップが入れ替わります。そのように短期間の間に大量生産される服のなかからは、どうしても廃棄となる不良品の服が一定数出てきます。
それらの服の行く先はどこでしょうか? ただ捨ててしまうのでしょうか? それではあまりにももったいないですよね。
実はそれらの服を焼却して発電する取り組みが始まっています。一般にこのような発電方法をゴミ発電と言い、日本でも注目されている再生可能エネルギーに位置づけられている発電方法です。
ゴミ発電では本来、焼却のみで完結していたゴミの焼却工程からエネルギーを回収。そのエネルギーが通常発電されるエネルギーの代わりに使われ、結果として二酸化炭素の排出を削減できるため注目されているのです。
スウェーデン拠点のファッションブランドのH&Mは、販売できない不良品の服を同国ベステルオースの発電所に送っています。発電所において本来ただの廃棄物として焼却される予定だった服は燃料となりエネルギーに変わります。
H&Mのコミュニケーション部門長のJohanna Dahl氏によると、発電所に送っている服はカビが生えていたりH&Mの基準に沿っていない、顧客が着用できない服だけを送っているとのこと。
2017年のこれまでに15トンのH&Mの服が発電所で焼却されました。
このようなH&Mの動きとスウェーデンの電力業界の利害は一致しています。スウェーデンは水力、風力、原子力など、ほとんど排気ガスの出ない発電方法を採用している国として有名。しかし、地方においては依然として冬の期間は家庭やオフィス向けの暖房のために石炭と石油による火力発電が続けられています。
2016年にスウェーデン政府は、今後2040年までに国内のエネルギー源を再生可能エネルギー100%にすることを目指すエネルギー政策を決定しました。
その政策に合わせて発電所にも変化が求められています。前述のベステルオースの発電所は2020年までに石炭・石油を使用した火力発電から再生可能エネルギーに移行することを目指しており、そのなかで再生木材、ゴミ、そしてH&Mなどのファッション小売から発生する不良品の服を燃やすゴミ発電に着手しているのです。
ファッション小売業界では世界的にみて大量生産・大量販売のファストファッションが主流。今後も新興国が経済成長を遂げ、購買力ある中間層が増えれば、その勢いは増すばかりです。
そうなると廃棄となる不良品の服も大量に出てくるでしょう。対策がより求められるようになることは必至。今回のようなH&Mの取り組みはファッション小売業界において避けて通れない不良品の服の処分対策の1つの試金石となりそうです。