巷は自動運転車やコネクテッドカーの話題で持ちきり。一方でインターネットにつながっているがゆえセキュリティーリスクが懸念されています。仮に自動車がハッキングされて暴走すれば命に関わる惨事となりかねません。自動車メーカーは自動運転車やコネクテッドカーがハッキングされることを防止するためのセキュリティーリスク対策に力を入れ始めています。
そのキープレイヤーとして意外な企業の活躍が見られます。それは「BlackBerry」です。
同社はスマホ黎明期に多くの人が使用していたBlackBerryの製造・販売メーカー。2011年以降、スマホ市場の競争激化によりシェアを失い、2016年9月、BlackBerryはスマホの製造から撤退することを発表していました(BlacKBerryブランドのOEM提供は現在も実施)。
そのBlackBerryが現在どうなっているかと言うと、同社の強みを生かしながらソフトウェア・セキュリティー対策事業に力を注いでいます。今年1月17日に東京で開催された自動車業界の最新技術の展示会「オートモーティブワールド2018」に登壇。自動運転車やコネクテッドカー向けサイバーセキュリティーソフト「Jarvis(ジャービス)」を日本で初公開しました。
自動車業界で高まるセキュリティーリスクに対する懸念に応える形です。
実際、2015年にセキュリティー対策エンジニアのチャーリー・ミラー(Charlie Miller)氏とクリス・ヴァラセク(Chris Valasek)氏が実験で走行中のジープ「チェロキー」をハッキングし遠隔操作することに成功しています。これは、「チェロキー」のスマートフォンとWi-Fi接続し、リモートでエンジンの始動、車両追跡ができる機能の脆弱性を狙ったもの。外部からWi-Fi接続し不正プログラムを車両に送り込むことでハッキングしたのです。
このハッキング事例は自動運転車やコネクテッドカーの脆弱性を示しています。
BlackBerryのジャービスは自動運転車やコネクテッドカー時代にどのような役割を果たすのでしょうか。自動車メーカーの製造段階からハッカーが不正プログラムを車両に送り込むことを画策することすら考えられます。そこで、まずジャービスは自動車メーカーがソフトウェアを車両に組み込む前のソフトウェアに欠陥がないか診断。メーカーはジャービスをクラウドベースで使用できるそうです。
既にジャガー・ランドローバーをはじめ複数の自動車メーカーで使用テストを実施中。ジャガー・ランドローバーCEOのDr Ralf Speth氏によると、30日間かかっていたセキュリティー診断が7分まで短縮されたそうです。
もともとBlackBerryのスマホはビジネスパーソンの間で「ウイルス感染しない」と言われ、セキュリティーの高さに定評がありました。BlackBerryは長年培ってきた汎用性あるセキュリティー対策技術を、自動車のみならず輸送や医療などの人命に関わる領域に活かしていく予定です。