5:ブラジル
ブラジルでは「2歳まで母乳育児」が推奨されています。しかし、母親の産休が6か月しかないため、職場復帰を機に粉ミルクへ変更する場合が多いのが現状。公的機関や大手メディアのデータは見つかりませんでしたが、Lunetasというメディアによれば、ブラジルでは6か月まで完全母乳で育つ赤ちゃんの割合は38.6パーセントなので、粉ミルク利用率は約62%となります。
ブラジルも日本のように「液体ミルク」はなく、製造・販売されているのは粉ミルクのみ。Nestleの「NAN」と「NESTGENO(ネストジェーノ)」、Danoneの「Aptamil」と「Milnutri(ミルニュトーリ)」が高い市場シェアを占めており、この2社は「母乳と同じような栄養素を持つミルク」や「ラクトースフリー」、アレルギー用の「乳たんぱくフリー(大豆ベースのもの)」などの各種ミルクを販売しています。
さらに、各社は上記ミルクに加え、6か月くらいから食べられる「シリアル入り」や「フルーツ味の米粉やコンスターチ」ベースの「栄養補助食品」も販売しています(写真上)。しかし、これらは便利な反面、危険な側面も。粉ミルクと共に「与えすぎて」しまうと、赤ちゃんが糖分過多や太り過ぎたりすることがあるのです。
また、ブラジルでは昔から「入眠儀式」として温かいミルクを飲ませる習慣があり、乳児期から就学前、もしくはそれ以降でも「フォローアップミルク」を飲む子どもがいます(写真上)。1歳を過ぎて哺乳びんを卒業していく日本とは違って、4〜5歳になっても就寝前に哺乳びんで粉ミルクを飲むことは珍しくないのです。
日本:高まる液体ミルクへの期待
日本における粉ミルク使用率は月齢に比例して高くなります。厚生労働省によると、0か月の完全ミルクは約3.5%ですが、6か月では約40%になり、それに混合栄養(母乳と粉ミルクの両方を与えること)も合わせると、その割合は6割以上(6か月の時点)に増加。母乳育児が推奨されつつも、「完全母乳」で育てる人のほうが少ないということが伺えます。
粉ミルク市場でも、国内メーカー大手5社などから多種多様のミルクが販売されています。国産粉ミルクを初めて販売した「和光堂」、乳業メーカーの「森永」や「雪印」、そしてお菓子で有名な「明治」や「グリコ」が市場に参入。アレルギー用のミルクだけでもメーカーごとに種類があり、味や栄養素も違うので、ミルクの「比較サイト」や「好み」などから選んでいくのが賢明です。
そして冒頭でも述べたように、日本でも液体ミルク解禁の動きから、厚生労働省が国内製造へ向けた食品衛生法や製造に関する規格の法整備を行っています。早ければ今夏には省令が改正され、国内製造が可能となる模様。しかし、実際に消費者の手に渡るのは、商品開発や生産ラインの確保など含めると、早くても2年後ではと言われているようです。
以前より設備が整ってきたとはいえ、外出先などでの調乳は大変だったりします。液体ミルクなら調乳する手間もなく、常温保存も可能なので、災害備蓄はもちろん、母親の負担を減らす意味でも大いに役に立つでしょう。販売が実現されるまでは、液体ミルクへの期待は高まりそうです。