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2018/8/27 17:00

「視察ビジネスマン」が水上バスで観光?? ミャンマー・ヤンゴン港の異様な風景

ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と言われる国。中国やインド、タイなどと隣接するこの国は、現在、日本の産業界から熱いまなざしを受けています。そんななか、同国最大の都市・ヤンゴンでは少し変わった風景が見られるとのこと。現地ライターのレポートで解き明かしていきます。

 

渋滞解消の切り札として登場した「水上バス」が今回の主役

民主化が進むミャンマーでは、自動車輸入の規制を緩和してから乗用車が急増。特に人口が集中するヤンゴンでは、深刻な渋滞が社会問題になっています。その解決のために、政府はバス路線の大幅な見直しや高架道路の建造、イギリス植民地時代に敷設した鉄道「ヤンゴン環状線」のスピードアップなどに努めてきました。そこへ、さらなる一手として導入したのが水上バスです。

 

ヤンゴンは市街中心部の南側と西側にヤンゴン川が流れています。ここに水上バスを運行させ、郊外の住宅街からオフィスが多いダウンタウンへ通勤の足にしてもらおうというのが、その主な目的。水上バスは2017年10月に就航しました。

ダウンタウンの南東端にあるボータタウン埠頭を出発し、市街北西はずれにあるインセイン埠頭まで計6つの埠頭に停まります。所要時間は普通艇なら2時間近くかかりますが、高速艇ならわずか40分。対照的に路線バスなら1時間かかることはざらで、渋滞がひどい通勤時間帯なら2時間以上になることも。しかし、水上バスなら必ず座って移動できます。

船の定員は60~200名で一般層が乗りやすいようにと、運賃は路線バスと同じ200チャット(約16円)に設定。ただしインセイン埠頭からの始発が6時40分発、ダウンタウンからの最終が18時50分発と運行時間が限られているうえ、本数も計15本と少なく利便性はそれほど高くありません。そのせいか、通勤客の利用率はあまり順調とはいえない状況です。

 

観光に加え、なんとビジネスにオススメ!

しかし、この水上バスは意外なところで評判を呼んでいます。それは観光利用。ダウンタウンからインセインまでの川岸には、魚の卸売市場や造船場などが点在。安価な運賃でクルーズ気分を楽しめるのです。朝夕には対岸から通勤客を満載した小舟が往来し、なかなか情緒ある風景を写真に収めることもできます。

 

さらに、密かにこの水上バスに注目しているのが世界のビジネスパーソンたちなのです。というのも航路からはヤンゴン港の全容を見渡せるからです。

 

軍事政権が長く続いたミャンマーでは、基本的には空港や港、橋などは撮影禁止。視察ツアーがヤンゴン港を見学する場合は事前に許可を取る必要があり、これがなかなか面倒なのです。しかし水上バスなら、何キロにもわたって岸辺にドックが点在するヤンゴン港をたっぷり見学することが可能。そのうえ、写真も撮り放題なのです。

乾季ならティラワ港見学も可能

さらに10月頃から3月頃までの乾季の週末には、1日1便のみですが、ボータタウン埠頭から通常航路と反対方向の市街南東郊外に位置する、水上パゴダへのツアーボートを走らせています。こちらのコースなら、ティラワ港をじっくり見学できます。

 

ティラワ港は日本とミャンマーが官民一体で協力して開発した、最も注目を集めるティラワ工業団地に至近の立地。同工業団地への進出を検討する企業ならぜひ視察しておきたい港です。その全容を川側から見ることができるのはかなり大きなメリットといえるでしょう。

 

水上バスは往復sw乗るもよし、行きだけ乗って帰りはタクシーで戻るもよし。ヤンゴン環状線と組み合わせて、陸と海からヤンゴンの町を概観するという方法もおすすめです。また夕方なら、川向こうに沈む真っ赤な夕日も鑑賞可能。ヤンゴンに来ることがあれば、観光やビジネスの移動には、この都市の新しい公共交通機関である水上バスをぜひ利用してみてください。