今年9月、12年連続で日本人が受賞したイグ・ノーベル賞。「人を笑わせ、そして考えさせる研究」はどうやら日本人の得意分野であり、現在、東京ドームシティのGallery AaMoでも「イグ・ノーベル賞の世界展」が開催されています(11月4日まで)。そんな賞をかつて、ある身近な食材に関する研究が受賞したことを読者の方は覚えておりますでしょうか?
それがスパゲッティ。そして、この食材には永遠の問題があったのです。乾燥したスパゲッティの麺を半分に折ろうとしても、きれいに2つに折ることができない――。
一見これは単純な問題に見えますが、実はノーベル賞を受賞した物理学者もかつて解明に挑んだ超難問。長い間、この問題は未解決だったのですが、今年8月、アメリカの名門マサチューセッツ工科大学の科学者がついにこの謎を解き明かしたと発表したのです。
ノーベル賞学者もたどり着けなかったスパゲッティのナゾ
乾燥したスパゲッティの両端を手で持ち、半分に折り曲げてみると、きれいに2つに割れることはなく、ほとんど3つ以上に割れてしまいます。この理由を解明しようと立ち上がったのが、アメリカの物理学者で1965年にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン氏。キッチンで様々な仮説をたてて検証しましたが、その理由と解けないまま、1988年ファインマン氏は他界します。
次に、このナゾの解明に挑んだのがフランスの物理学者。彼らは、麺を2つに割ろうとするとき波のような動きが麺に生じ、この結果、スパゲッティが2つ以上に割れてしまうという原理を解明。この研究は2006年にイグ・ノーベル賞を受賞しました。
しかし、スパゲッティの麺を2つに折れるのかどうか、ということは依然として解明されていなかったのです。
真打ち登場!
そこで、ファインマン氏の母校であるマサチューセッツ工科大学の研究者たちがついに登場。スパゲッティを折る機械も開発し、様々な方法で折り曲げて解析を行いました。スパゲッティの麺は両端を持って曲げると、湾曲した麺にたわみが生じ、それによって、きれいに2つに折れることはできません。しかし、MITの研究者たちは実験を進めると、麺をあらかじめ捻ってから曲げると、たわみの波を弱めることができることを発見。270度以上のねじりを加えれば、麺はきれいに真っ2つに折れることがわかったのです。
日本の「そば」は?
では、スパゲッティ以外の麺ではどうなるでしょう? 筆者は日本製のそばを用意し、麺の両端を手で持って折り曲げてみました。すると、あっさりと真ん中できれいに2つに割れることがわかりました。何度やっても同じ結果で、スパゲティのように3つに割れてしまう…なんてことは一度もなかったのです。
どうやら、麺を2つにきれいに割れないというのは、そばの乾麺には当てはまらないようです。ちなみに、そばを捻ってから曲げるという方法も行ってみましたが、この場合もきれいに真ん中で割ることができました。
スパゲッティという身近な食材が世界的な学者たちの研究対象になるとは、とてもユニークですね。キッチンでスパゲッティなどの乾麺を折るときは、科学者たちが長年かけて解明した方法を使ってみてはどうでしょうか?