年々深刻化している地球温暖化は、生態系を破壊し異常気象による自然災害など、さまざまな影響をもたらすと言われています。最近、判明したのが早産のリスク。いま今以上に暑い日が増えたら、予定日より早く産まれる赤ちゃんが増加する可能性があることが、専門家によって指摘されたのです。
暑い地域ほど早産率が高い
赤ちゃんが生まれる時期は妊娠40週が適しており(いわゆる十月十日)、それより早い出産では赤ちゃんの健康にさまざまなリスクが生じてしまうため、できるだけ40週に近い時期まで赤ちゃんは母親の胎内にいた方がいいと言われています。しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアラン・バレッカ氏とクレアモント・マッケナ大学のジェサミン・スカラー氏が発表した内容によると、近年の地球温暖化により早産リスクが高まっているとのこと。
現に、2007年から2018年に38週より早く生まれた赤ちゃんの割合を、アメリカの州ごとに見てみると、ミシシッピ州では48.7%、ルイジアナ州で46.0%、フロリダ州で40.5%など、南側の気温が高い州で早産の傾向が高いことが判明しました。
最高気温が32度以上は出生率が高くなる
そこで彼らは、1969年から1988年の気温とアメリカの出産のデータを使用し、最高気温が32度より高い日にどのくらい赤ちゃんが生まれているか調べました。一般的に妊娠週は最後に生理があった日から数えますが、母親のなかにはこれをはっきり覚えていない人もいるし、病院側も推測している場合もあります。そこで、この研究チームでは各日の出産件数と気温にだけ着目することにしました。例えば、最高気温が32度より高い日に出産件数が増え、その直後の2日間に出産件数が減った場合、高温によって出産が2日短縮された可能性があると言えるわけです。
その結果、アメリカでは年間2万5000人の赤ちゃんが高温によって早く生まれ、予定日より早まった総日数は15万日にのぼることがわかりました。最高気温が15~20度の日の出生率を100%として気温別に出産率を比較してみると、気温が高くなるほど出産率が高くなっていることも判明。21~25度は1%増、26~31度は3%増、32度以上は5%も増加していることが明らかとなりました。
暑い日に出産が増える理由については、陣痛を誘発するオキシトシンという物質が高い気温によって誘発される可能性が考えられますが、現段階では明らかになっていません。この研究チームでは、今後年間4万2000人の赤ちゃんが早産となる可能性があると示唆しています。
予定日より数日程度出産が早まる分なら大きな問題にはなりませんが、数週間早く生まれるとなると、赤ちゃんの健康が心配になり、ママや家族も不安になるでしょう。出産と気候変動は無関係ではない。産婦人科の医師はそのようなことも考えておかなければならないのかもしれません。