大きな地震が起きると、地面が揺れたり高波やうねりが生じたりするなど、地球のあらゆる部分に大きな影響が出ます。では、地震は自然や人間以外には影響を及ぼさないものでしょうか? 最近発表された研究で、大地震はマッコウクジラの餌を見つける力に1年間も影響を与えていることが判明しました。
2016年11月、ニュージーランド南島東海岸にあるカイコウラ沿岸でマグニチュード7.8の地震が発生。この地震によって大きなエネルギーが生じ、海底の大陸斜面に存在する海底谷から850トンもの堆積物が流されてきました。これは「キャニオンフラッシング(canyon flushing)」と呼ばれています。マッコウクジラにとってカイコウラにある海底谷は豊富な餌がある場所なのですが、この地震によりカイコウラ周辺の生態系は大きく変化し、マッコウクジラにも影響を及ぼした可能性があると考えられたのです。
そこで、地震によるマッコウクジラへの影響について研究を行うため、ニュージーランドのオタゴ大学の科学者たちは、1990年から調査されているマッコウクジラの行動データから、地震前の2014年1月~2018年1月までの情報を収集しました。
それらを分析した結果、2016年に地震が起きてから1年間は、マッコウクジラが海上近くで過ごしている時間が25%も増えていたことがわかったのです。これはマッコウクジラがより多くの酸素を吸って海中深くに潜り、長時間餌を探していた可能性を意味します。つまり、地震によって海底谷にあった餌が少なくなり、マッコウクジラは以前より餌を探しにくくなりました。そのために、餌の探し方を変えなければならなくなったということです。
東日本大震災でも同様の変化
ニュージーランドで見られた大地震による影響は東日本大震災でも起きていることがわかっています。日本の東北沖は、黒潮と親潮が混合する場所で世界三大漁場とも呼ばれる場所ですが、東日本大震災で発生した津波により、多くの魚の生息環境が破壊され、水産資源の減少が懸念されました。東北区水産研究所では震災後から調査を続け、地震後に漁獲量が減った魚と逆に増えた魚もあることを明らかにしています。
ただ、今回オタゴ大学の研究チームが発表したものは、海洋哺乳類への地震の影響に関するもので、これは世界でも初めてとなる研究結果と言われています。大地震の被害を受けるのは人間だけではないんですね。