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2020/4/16 18:30

「魅力的な授業」は成績アップに逆効果? メタ分析による研究結果に賛否両論

教科書に沿って淡々と進める授業と、雑談やジョークを交えながら賑やかに行われる授業なら、後者のほうが「楽しい」と思う人がきっと多いはず。先生は授業が面白くなるように、さまざまな工夫をしています。しかし、楽しい授業は必ずしも学習成果を上げるわけではないようです。

↑タブレットを使うと授業は楽しいけど、悪魔の誘惑が……

 

授業の内容とまったく関係ないけど、授業自体が楽しくなるような面白い情報(話や画像、音楽など)を教育心理学は「セダクティブ・ディテール(seductive details)」と呼んでいます。このような情報は学習成果を本当に高めるのかどうか? この問題は1980年代後半から研究されており、授業と関連がない情報は役に立たないという見解が一般的です。しかし、これまでの研究は比較対象や調査範囲が限定的でした。

 

そこで、数多くの先行研究を統合して解析(これはメタ分析という手法)してみたのが、ワシントン州立大学(WSU)の研究者たちです。彼らは図書館にある文献やGoogle Scholarなどを使ってセダクティブ・ディテールに関する58件の研究をまとめました。このなかで生徒・学生の数は計7500人以上にもなったそう。そして、セダクティブ・ディテールをちりばめた授業を受けた生徒・学生と、そうでない授業を受けた人たちを比べたところ、前者の学習成果が低いということがわかったのです(なお、学習成果とは具体的で測定可能な成果のことを言います)。

 

この理由のひとつとして、授業で学ぶべき内容を生徒に理解させるために、先生が身近な例や面白そうな題材を持ち出すと、彼らの関心がそちらのほうに向いてしまうことが考えられています。例えば、科学の授業で雷がどのように形成されるか取り上げたとき、2018年にルワンダで発生した雷で16人が亡くなった例を紹介したら、雷の形成の話よりもその出来事のほうに気が逸れてしまうという具合です。

 

さらに、学習内容と関係のないものが教科書やノートといった紙に書かれている場合の学習成果は、PCなどのデジタルデバイスの場合よりも悪くなることもわかりました。特に社会科や科学の授業ではその傾向は顕著です。マルチメディア学習では、関連性のない情報を使わなければ勉強が上達するという一貫性の原則(coherence principle)がありますが、今回の研究結果はそれを裏付けることとなりました。

 

しかし、課題も残ります。WSUの研究者たちがメタ分析を行った研究の多くは、わずか6〜12分という短時間授業でした。普通、授業時間はもっと長いので、セダクティブ・ディテールは長い授業のなかでは役に立つのではないかとも考えられます。

 

生徒・学生の関心を集めるような具体例やアイデアを盛り込むことはもちろん重要だ、とWSUの研究者たちも述べています。また、予習を行うなどして事前に授業内容についてある程度理解していれば、セダクティブ・ディテールの影響は低くなるでしょう。さらに楽しいジョークや音楽をかけることで、数学を習うときの緊張感を和らげる効果もあるかもしれません。

 

今回の研究結果について、教育現場にいる先生の間では賛否両論があり、なかには「学習成果が多少低くなっても、生徒の注意を惹きつけることには価値がある」などという意見もあります。興味がないことに長時間集中するのは誰にだって難しいこと。セダクティブ・ディテールがまったくない授業は合理的かもしれませんが、それで向学心が高くなるかどうかは人によるでしょう。

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